私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。
推し活が家族公認になったことで、私は気兼ねなく、アヤ師匠達と会えるようになった。妻が「お友達を家に招待したら?」なんて言い出すものだから、なんと、我が家で食事会が開かれることになってしまった。
「私が、某ルートで手に入れたスタドリのライブ映像があるから、ケンジくんの家で上映会しよう!」
なんてアヤ師匠からメールが来て、もうノリノリだ。
妻も、久しぶりの来客で気合が入っている。ユイは私の友人がどんな人たちなのか、興味津々だ。そして、食事会当日。ピンポーン。「おじゃましまーす!」
「どうぞ。」「これお土産です。」
アヤ師匠が取り出したのは、ワインだ。
「どうも。私のお土産はこれー。」
ミドリさんは、ケーキを買ってきてくれた。
「僕は、これ持ってきたよ。」
マサさんは、フライドチキンだ。「初めまして。どうぞ座ってください。」
妻が忙しく準備しながら促す。
「初めまして。ケンジの娘のユイです。」
ユイが挨拶すると、
「ユイちゃん!初めまして!会いたかったよ。」
ミドリさんがグイグイくる。
「みんな、わざわざありがとう、さあ、どうぞ座って。」
「ケンジくん、お父さんみたいだな。」
マサさんが笑う。自慢じゃないが、私の妻の手料理は、プロ並みだ。
豪華な食事がテーブルに並ぶ。
「うわー。すごい。」
流石のアヤ師匠もビックリだ。
「さあ、どうぞ、召し上がってください。」
妻が促す。
「その前に、乾杯しましょう。」
私がそういうと、アヤ師匠が持ってきたワインを全員のグラスに注ぐ。
もちろんユイはジュースだ。今日の仕切りはアヤ師匠ではなく、私だ。
「では、私たちの出会いと、スタドリの活躍を祝して。」
「マジプリもね。」
ユイがちゃちゃを入れる。
「乾杯!」
「かんぱーい!!」
楽しい宴が始まった。「じゃあ、スタドリのDVDかけるよー。上映会スタート!」
テレビには、釜田のライブハウスで歌うスタドリの映像が映し出される。
みんな画面に夢中になっている。
「麻結さんも飲んで。」
アヤ師匠が妻と話をしている。
「ユイちゃんは、ケンジくんに似なくて良かったねー。」
ミドリさんは、ユイが気に入ったようだ。
「おい!コラっ。くすぐったい!!」
マサさんは、タロウに気に入られたようだ。
私は、そんなみんなを見ながら、スタドリに出会えた喜びを噛み締めていた。
「今日はごちそうさまでした!おじゃましました!」
楽しい宴が終わり、3人とも帰っていった。私も結構呑んでしまった。妻も久しぶりに楽しくお酒が飲めたようだ。
「楽しい人たちだったね。」
ユイも楽しかったようだ。
「ミドリさんとメアド交換しちゃった。」
それはそれで、良いような悪いような・・。
「今度、クラブテッタでライブあるんでしょ?私も行こうかな?」
妻は、何を言っているのだ?
「いや、もう、チケット無いと思うけど。」
「こういうこともあろうかと思って、アヤさんにチケット取ってもらったの。」
い、いつの間に!!
「たまには、一緒に行きましょう?あ・な・た。」
「は、はい。」
「ははは。2人仲良く行ってらっしゃーい!」
もう、笑うしかない・・・。
あっという間にライブ当日。私と妻は、少し早めに樺崎の町に行って、商店街をぶらぶらしたり時間を潰していた。2人で外出するなんて、いつ以来だろうか?
「久しぶりのデートね。」
妻が笑う。
「そうだね。」
クラブテッタが見えてきた。全国ライブハウスツアーの最終日。スタドリの晴れ舞台だ。
「ケンジくん!麻結さん!」
アヤ師匠たちだ。」
「師匠、ミドリさん、マサくん、久しぶり。楽しみだね。」
妻が笑いながら言う。
「私もアヤさんのこと、師匠って呼ぼうかしら?」
「いいよ!」
アヤ師匠も笑う。「さあ、そろそろ入場だね。早い番号だから、前の方で観れそう。」
そう言えば、初めてライブに行ったときは、ライブハウスの作法をアヤ師匠に教えてもらったな。懐かしいな。
クラブテッタは、釜田のライブハウスが何個も入るくらい大きい。その大きさに圧倒されてしまう。私たちは、前方の手すりのある所に陣取った。ライブが始まる。スタドリは、やはり眩しかった。持ち歌とカバーを含めて十数曲。90分ほどでライブは終わった。そしてラスト、アンコールの求めに応じて再登場したスタドリ。
ユウくんが、話し出す。「ありがとう!僕たちスタドリの全国ライブハウスツアーは今日が最終日です。みなさん、本当にありがとうございました!」
「僕たちは、ここで立ち止まりません。もっと歌いたい曲があるし、アルバムも出したい。ライブハウスではなくて、ホールツアーもやりたい。」
会場中から声援が沸き起こる・
「目標は、日本武道館!そして、スタジアムライブです!」
一段と歓声が大きくなった。武道館。スタジアム。とてつもない夢だ。
「僕らの夢に、みんなも一緒についてきてください!いつか、必ず実現させます!」
「そのための第一歩の曲。聴いてください『DREAM STAR』。」最後はデビュー曲でライブが終わった。
スタドリの夢は、まだまだ続く。私の推し活も、まだまだ続く。スタドリが、推しが。輝く限り、私の推し活も終わらないのだ。
<ひとまず、おわり?>