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それってあなたの妄想ですよね②

ー/ー



 部屋の中は広めの和室になっていました。畳敷きで、中央に机が置いてあります。正面には窓があって、窓の外は真っ暗で何も見えません。

 Hさんが中へ入っていきます。そして左を向いたところで、硬直しました。

Nさん
『どうした?』

 変に思ったのか、彼はそう尋ねました。

Hさん
『いや、あれ。ちょ、カメラ、カメラ。これ映して』

 Nさんが移動して、部屋の左側にあるものをカメラに映し出しました。

 それは壁に描かれた、首のない人間の絵でした。白いワンピースのようなものを着ていること、胸のふくらみのようなものが描かれていることから、それが女性とわかります。

伊沢さん
「止めてください」

 彼女に言われて、Nさんは動画を止めました。

伊沢さん
「ここ、この絵のすぐそばにまったくおんなじ姿のものがいます」

 彼女は絵の右側を指さして言いました。

Nさん
「え⁉」

伊沢さん
「おんなじ恰好で立ってて、首がないのも一緒ですが、大きさだけが違います。二メートル以上ありますね」

Nさん
「ええ? それって、よくないものなんですか?」

伊沢さん
「よくないです。これは、魔物ですね」

Nさん
「魔物ってなんですか?」

伊沢さん
「元は人だったり動物だったりしたものが、心も形も元のものから全然違うものに変わってしまって、人にいたずらとかするようになったものが魔物です」

Nさん
「それは、危険なものなんですか?」

伊沢さん
「危険ですね。あまり近づくべきものではありません」

Nさん
「そうなんですね。あ、動画の続き、流しますね」

Hさん
『いやこれ、すごいですよ。スプレーアートだと思うんですけど、誰がなんのためにこれを描いたのか、謎ですね。いやまあ、すごい、うわっ!』

Nさん
『どうした?』

Hさん
『今、なんかに顔を触られた!』

伊沢さん
「今、魔物がHさんの左頬を触りましたね」

 彼女が解説してくれました。

Nさん
「なんでそんなことを?」

伊沢さん
「Hさんたちが驚く様子を見て、楽しんでるんです」

 それからあとも動画は続きました。しかし特に何も起こらなかった、ということで早回しにしていって、気になるところがあればそこだけ見る、というかたちをとりました。

 動画を見終えたあと、伊沢さんは話し始めました。

伊沢さん
「とりあえず、あれはNさんたちにはついてきてないです。たぶんまだ、あの廃墟にいるんだと思います」

Nさん
「あ、ほんとですか」

伊沢さん
「ただ、この動画に関しては残念ですけど、動画として出したりとかはしないほうがいいです。この動画を見ることで、視聴者のもとへ幽霊とかがいっちゃう場合があるので。この廃墟にいる霊的なものっていうのは、あのさっき言った魔物以外にも、いっぱいいるので」

Nさん
「そうなんですね。映していい部分とかはありますか?」

伊沢さん
「最初と最後のところ、ぐらいですかね」

Nさん
「そうですか。それなら、この動画は使わないことにします」

伊沢さん
「あと、この心霊スポットには二度と行かないでください」

Nさん
「いや、言われなくてもそのつもりです」

伊沢さん
「Nさんだけじゃなくて、Hさんもだめですからね。一度目は見逃されたかもしれないですが、二度目はもうダメです。次行ったら、あれにとり憑かれると思います。そうなったら最悪、死ぬ可能性もあります」

Nさん
「そうなんですか。わかりました、Hにも伝えておきます」

伊沢さん
「私からは以上ですけど、そちらからは何か、質問はありますか?」

Nさん
「あ! あの、さっきまでの一連のやりとりとか、解説を改めて動画にしてみたいんですけど、動画に出演してもらうことはできますか?」

伊沢さん
「すみません、そういうのはやらないって決めてるので」

Nさん
「そうですか、残念ですね」

 彼女に出演を断られたことを残念がりつつも、彼は事務所をあとにしました。

 しかしことはそれだけでは終わりませんでした。後日、僕は彼らのチャンネルを見て、とんでもないものを見つけたのです。

「伊沢さん、これなんですけど、やばくないですか?」

伊沢さん
「なに、どうしたの?」

 僕が彼女に見せたのは、△△チャンネルのホーム画面でした。彼らは、出してはいけないと言ったはずの動画を出していたのです。

 それだけではありません。新たに一本、Hさん一人で○○廃墟にもう一度行ってみた、という趣旨の動画まで出していたのです。

伊沢さん
「やりやがった、あいつら」

 彼女はすぐさま、Nさんへ電話をかけました。


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 部屋の中は広めの和室になっていました。畳敷きで、中央に机が置いてあります。正面には窓があって、窓の外は真っ暗で何も見えません。
 Hさんが中へ入っていきます。そして左を向いたところで、硬直しました。
Nさん
『どうした?』
 変に思ったのか、彼はそう尋ねました。
Hさん
『いや、あれ。ちょ、カメラ、カメラ。これ映して』
 Nさんが移動して、部屋の左側にあるものをカメラに映し出しました。
 それは壁に描かれた、首のない人間の絵でした。白いワンピースのようなものを着ていること、胸のふくらみのようなものが描かれていることから、それが女性とわかります。
伊沢さん
「止めてください」
 彼女に言われて、Nさんは動画を止めました。
伊沢さん
「ここ、この絵のすぐそばにまったくおんなじ姿のものがいます」
 彼女は絵の右側を指さして言いました。
Nさん
「え⁉」
伊沢さん
「おんなじ恰好で立ってて、首がないのも一緒ですが、大きさだけが違います。二メートル以上ありますね」
Nさん
「ええ? それって、よくないものなんですか?」
伊沢さん
「よくないです。これは、魔物ですね」
Nさん
「魔物ってなんですか?」
伊沢さん
「元は人だったり動物だったりしたものが、心も形も元のものから全然違うものに変わってしまって、人にいたずらとかするようになったものが魔物です」
Nさん
「それは、危険なものなんですか?」
伊沢さん
「危険ですね。あまり近づくべきものではありません」
Nさん
「そうなんですね。あ、動画の続き、流しますね」
Hさん
『いやこれ、すごいですよ。スプレーアートだと思うんですけど、誰がなんのためにこれを描いたのか、謎ですね。いやまあ、すごい、うわっ!』
Nさん
『どうした?』
Hさん
『今、なんかに顔を触られた!』
伊沢さん
「今、魔物がHさんの左頬を触りましたね」
 彼女が解説してくれました。
Nさん
「なんでそんなことを?」
伊沢さん
「Hさんたちが驚く様子を見て、楽しんでるんです」
 それからあとも動画は続きました。しかし特に何も起こらなかった、ということで早回しにしていって、気になるところがあればそこだけ見る、というかたちをとりました。
 動画を見終えたあと、伊沢さんは話し始めました。
伊沢さん
「とりあえず、あれはNさんたちにはついてきてないです。たぶんまだ、あの廃墟にいるんだと思います」
Nさん
「あ、ほんとですか」
伊沢さん
「ただ、この動画に関しては残念ですけど、動画として出したりとかはしないほうがいいです。この動画を見ることで、視聴者のもとへ幽霊とかがいっちゃう場合があるので。この廃墟にいる霊的なものっていうのは、あのさっき言った魔物以外にも、いっぱいいるので」
Nさん
「そうなんですね。映していい部分とかはありますか?」
伊沢さん
「最初と最後のところ、ぐらいですかね」
Nさん
「そうですか。それなら、この動画は使わないことにします」
伊沢さん
「あと、この心霊スポットには二度と行かないでください」
Nさん
「いや、言われなくてもそのつもりです」
伊沢さん
「Nさんだけじゃなくて、Hさんもだめですからね。一度目は見逃されたかもしれないですが、二度目はもうダメです。次行ったら、あれにとり憑かれると思います。そうなったら最悪、死ぬ可能性もあります」
Nさん
「そうなんですか。わかりました、Hにも伝えておきます」
伊沢さん
「私からは以上ですけど、そちらからは何か、質問はありますか?」
Nさん
「あ! あの、さっきまでの一連のやりとりとか、解説を改めて動画にしてみたいんですけど、動画に出演してもらうことはできますか?」
伊沢さん
「すみません、そういうのはやらないって決めてるので」
Nさん
「そうですか、残念ですね」
 彼女に出演を断られたことを残念がりつつも、彼は事務所をあとにしました。
 しかしことはそれだけでは終わりませんでした。後日、僕は彼らのチャンネルを見て、とんでもないものを見つけたのです。
「伊沢さん、これなんですけど、やばくないですか?」
伊沢さん
「なに、どうしたの?」
 僕が彼女に見せたのは、△△チャンネルのホーム画面でした。彼らは、出してはいけないと言ったはずの動画を出していたのです。
 それだけではありません。新たに一本、Hさん一人で○○廃墟にもう一度行ってみた、という趣旨の動画まで出していたのです。
伊沢さん
「やりやがった、あいつら」
 彼女はすぐさま、Nさんへ電話をかけました。