それってあなたの妄想ですよね①
ー/ー 我々は基本的に、心霊スポットへ行くことはありません。霊が多くて危険ですし、そもそも行く理由がないからです。心霊スポットをお清めしてほしい、などといってお金を出すような人もいません。
そんななか、動画配信者の方は心霊スポットへガンガン突入していきますよね。もちろん、真剣な理由とか、好奇心で行く人もいるでしょう。しかしなかには、動画の再生回数目当ての人もいるようです。霊が写っている写真などが撮れれば、ワンチャンバズる可能性もあります。そういった大当たりを狙って、わざわざ行くのでしょう。
このお話に出てくる方も、いわゆる大当たりを狙う動画配信者の一人でした。Nさんという若い男性の方で、ツンツン頭の小柄な男性でした。
Nさん
「この前、〇〇ホテルっていう有名な廃墟の心霊スポットに行ったんですね。相方が一人いて、こっちはHっていう名前なんですけど、二人でそこへ行きました。
で、まあその廃墟では女の霊が出るとか、女の笑い声がするとかそういう女に関係するような噂がとにかく多くて。何か映像なり声なりが撮れればいいなって思って行ってみたんです。
で、これがその時に撮った動画なんですけど、ちょっと見てもらえますか?」
伊沢さん
「わかりました。動画を見せてもらえますか?」
Nさんは持ってきていたパソコンを開くと、とある動画を再生し始めました。
動画が始まってまず見えたのは、暗い中にぼんやりと映る廃墟を背景にして立つ、一人の男性の姿でした。それがHさんでした。
Wさん
『はいどうもー、△△チャンネルのHでーす。本日は、○○ホテルにやってまいりました。ここは、女の霊が出るとか、女の笑い声がするとかそういういわくのある場所なんですけれども、どうなんでしょうかね。ほんとに霊がいるんでしょうか? さっそくそれを検証しに行ってまいろうと思います』
そうした前フリをしたあとで、彼は廃墟へ足を踏み入れていきました。
廃墟の中には、営業していた頃に使っていたのだと思われるものが、そのまま残されていました。
Wさん
『あれ、これカレンダーじゃないですか? 日付は1994年の、7月3日ですね。これが営業停止になった日なのかな』
Hさんはカレンダーから目を離すと、移動を始めました。
廃墟の中、それも心霊スポットともなれば多少なりとも恐怖を感じるのが普通でしょう。にもかかわらず、Hさんは一切怯えた様子もなく、ずんずん進んでいっては、ドアを開けて部屋の中の様子を見る、ということを繰り返していきます。
Nさん
『え、ちょっ、どんどん行くじゃん。どうした? なんかいつももっと、ゆっくりじゃなかった?』
するとそこで、横で一緒に動画を見ているNさんが説明してくれました。
Nさん
「いつもはこんなにどんどん奥へ行ったりしないんですよ。暗いし怖いので、探るように少しずつ行ってたんですけど。なんかわからないんですけど、この日はいつもと違ってどんどん進んじゃっていて。なんかに取り憑かれてたんですかね?」
伊沢さん
「そういうわけではなさそうですが、私には、何かに呼ばれているようにも見えます」
Nさん
「なにかって、なんですか?」
伊沢さん
「それはまだ何とも言えません。続きを見ればわかるかもしれませんが」
僕らが話している間も動画の中でHさんはドアを開けて、中を確認しています。
Nさん
「あっ、ここちょっと音がします」
Nさんが注意を促すように言いました。
Hさん
『いやー、ほんとに汚いですねえ。カビだらけ』
その時かすかに、ばん、とドアが勢いよく開いた時のような音がしました。
Hさん
『あれ、今音がした?』
Nさん
『した。音した』
Hさん
『え、どこどこ? 二階?』
Nさん
『二階だった、ような気がするけど』
Hさん
『ちょっと、二階行ってみようか』
そういった一連の会話のあいだ、Hさんは終始目を輝かせていました。
はや足で移動するHさんを、カメラが追っていきます。
Nさん
『待った、人がいるかもしれないから、気をつけて進んだほうがいい。不審者かもしれないから』
Hさん
『別にいても大丈夫でしょ。俺ら男二人だし』
人がいる危険を恐れていないのか、Hさんは足を止めようとしませんでした。
Nさん
『いや、そういうことじゃなくて。いやなんか、凶器持ってるかもしれないから』
Hさん
『それでも、理由なく襲ってくることはないでしょ』
そんな会話をしているうちに、二階についてしまいました。
Hさん
『人の影は、見当たらないですね』
Nさん
『いやいや、もっとゆっくり行こう、ゆっくり』
Hさん
『おう。あ、あれ。一か所だけドア開いてますね』
カメラを向けると、右に数メートルいった先にある部屋のドアが開いています。Hさんは開いているドアの近くまで行きました。
Hさん
『これじゃないかな、さっきの音の正体。だって、他にああいう音の出るもの、なさそうだもんね』
Hさんは、ドアを一度閉めてから、たたきつけるようにドアを開けました。すると、ばんっと音がしました。
Hさん
『うん、この音だ。間違いない』
Nさん
『間違いないって、なんで誰もいないのに勝手にドアが開くのさ?』
Hさん
『わかんない』
Hさんは、ドアが開いていた部屋の中へと入っていきました。それに続いて、カメラを持ったNさんも中へ入っていきました。
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