表示設定
表示設定
目次 目次




つきまとうもの

ー/ー



 この時のご依頼者様は、Cさんという若い男性の方でした。イケメンで、身長も高くて、優しい顔をした人でした。不動産屋で働いているとのことでした。

Cさん
「夜中に突然目が覚めたと思ったら、体が動かなくなってしまって。でも不思議と、目だけは開けられるんですよ。それで目を開けたら、窓の外にべたってはりついている女の人の姿が見えました。

 女の人はその状態のまま、僕をじっと見ていて。でも知っての通り、この部屋は五階にあるので、そんなこと生きている人間には不可能なんです。

 そのことに気づいて、怖くなって目を閉じたかったんですけど、できなくて。結局、朝が来るまでずっとそうしていました。朝が来る頃になって、急に眠気が襲ってきて、目を閉じたらいつのまにか眠ってしまいました。気づいたら朝になっていて、窓の外にはりついていた女の人も消えていました」

「なるほど。他にはどんなことがありましたか?」

Cさん
「それで怖くなって、とりあえず神社に行ってお札を買ってきて、家の中に貼りました。ところがそうしたらちょっと信じられないようなことが起こってしまいまして。これがその時のお札を撮ったやつなんですが」

 彼はスマホの画面に写真をうつしだしました。そこには、ビリビリに引き裂かれた状態のお札がかろうじて壁に貼りついている様子がうつし出されていました。

Cさん
「お札も効かないということになって、どうしたらいいんだろう、と思いながらも、寝ないわけにもいかないので、寝たことは寝たんですが、その夜もまたいきなり目が醒めまして。

 今度は窓じゃなくて、僕の上にその女が乗っているんですよ。で、そいつがすぐそばから僕を見ていて。目を閉じたかったんですけど、その時も金縛りにあっていたので目が閉じられなくて。それでまた結局、朝まで寝られないままでした。

 それでこうして、先生をお呼びしたわけです。先生、これはいったい、なんなんでしょうか?」

伊沢さん
「悪霊ですね」

Cさん
「ああ、やっぱり」

伊沢さん
「問題は、その悪霊がなんでCさんの元へ来たかですが、Cさん、呪術を使いましたよね?」

Cさん
「は?」

伊沢さん
「それでSさんって人を呪いましたよね? その呪いがあなたに返ってきたんです。そして、その返ってきた呪いがよくないものを呼んだ結果、そういう女性の悪霊とかが出てくるようになったわけです」

Cさん
「はあ・・・・・・すごいなあ。やっぱ本物なんだ」

 Cさんは笑いながらいいました。その笑顔はぱっと見、ものすごく愛嬌のあるものだったのですが、それだけによけい恐ろしかったです。

Cさん
「そうなんです、僕は確かにSを呪いました。こんなことしちゃいけないっていうのはわかってました。でも、どうしてもやはり、つらくて、苦しくて。今でもあの娘のことが忘れられないんです、それでつい、呪いをかけてしまって。

 でも、今は本当に後悔していますし、その呪いが返ってきてこうなっていることも自業自得だとわかっています。もう二度と、こんなことはしないつもりです。今は本当に反省してるので」

 Cさんの笑みはいつしか、陰鬱な面持ちへと変わっていきました。本気で後悔しているように見えました。

伊沢さん
「いや、もういいですよ」

Cさん
「いや、これは許されることじゃありません」

伊沢さん
「いや、そうじゃなくて。あの、Sさんの呪いを解いたの私なので、全部知ってるんですよ、あなたのやってきたこと」

 Cさんはその恰好のまま、固まりました。

伊沢さん
「あなたがSさんにしつこくつきまとってたことも知ってますし、あなたがSさんに送った脅迫の手紙も全部読みました。で、反省したっていうのも嘘ですよね。何考えてるのかとかも、全部ばれてますからね」

 Cさんが依頼をよこしてきたのは、Sさんのお祓いから一か月後くらいのことでした。その名前を見たときは、さすがに僕も驚きました。

 伊沢さんは”たぶん神様がそういう引き合わせをしたのかもね。こいつをこらしめてやれって、そういうことかもしれない”と言っていました。

 僕らは仕事のためではなく、彼をこらしめるつもりでここへ来たのです。もっとも、本当にやばい状況だったり、心の底から反省しているようなら助けるつもりだ、と伊沢さんは言っていました。

伊沢さん
「悪いですけど、私にはあなたを助けることはできません。今、この部屋にはその女の人の悪霊だけでなく、他にも数えきれないくらいの霊たちがいます。そいつらがみんな、あなたをあの世へ引きずり込もうとしています。

 でもそれは、人を呪おうとしたあなたへ対する神様の罰だと思います。ほんとに反省したほうがいいと思います。そしたら、神様も許してくれるかもしれませんよ」

 どうやら彼女は、Cさんを助けるつもりがないみたいでした。

 そしてCさんのほうはというと、しばらくのあいだ無表情でじっと彼女を見ていました。やがて、彼は口を開きました。

Cさん
「俺も死んだら、悪霊になれますかね?」

 そう尋ねる彼は笑みを浮かべていました。しかし、冗談で尋ねているようには見えませんでした。

 話はそれで終わって、僕らはその場を立ち去りました。そのあと彼がどうなったか、僕は知りません。

 あとこれは補足ですが、のちに彼女は彼を助けなかった理由について、こう語っています。

伊沢さん
「だって、ああなったのは自業自得だし。人を呪い殺そうとしたやつとかは助けないよ、私は。むしろ、一回地獄見ろって思う。お前の呪った人がどれだけ苦しんだかをちゃんと味わって、反省しろってね」


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む ポルターガイストの起こる家①


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 この時のご依頼者様は、Cさんという若い男性の方でした。イケメンで、身長も高くて、優しい顔をした人でした。不動産屋で働いているとのことでした。
Cさん
「夜中に突然目が覚めたと思ったら、体が動かなくなってしまって。でも不思議と、目だけは開けられるんですよ。それで目を開けたら、窓の外にべたってはりついている女の人の姿が見えました。
 女の人はその状態のまま、僕をじっと見ていて。でも知っての通り、この部屋は五階にあるので、そんなこと生きている人間には不可能なんです。
 そのことに気づいて、怖くなって目を閉じたかったんですけど、できなくて。結局、朝が来るまでずっとそうしていました。朝が来る頃になって、急に眠気が襲ってきて、目を閉じたらいつのまにか眠ってしまいました。気づいたら朝になっていて、窓の外にはりついていた女の人も消えていました」
「なるほど。他にはどんなことがありましたか?」
Cさん
「それで怖くなって、とりあえず神社に行ってお札を買ってきて、家の中に貼りました。ところがそうしたらちょっと信じられないようなことが起こってしまいまして。これがその時のお札を撮ったやつなんですが」
 彼はスマホの画面に写真をうつしだしました。そこには、ビリビリに引き裂かれた状態のお札がかろうじて壁に貼りついている様子がうつし出されていました。
Cさん
「お札も効かないということになって、どうしたらいいんだろう、と思いながらも、寝ないわけにもいかないので、寝たことは寝たんですが、その夜もまたいきなり目が醒めまして。
 今度は窓じゃなくて、僕の上にその女が乗っているんですよ。で、そいつがすぐそばから僕を見ていて。目を閉じたかったんですけど、その時も金縛りにあっていたので目が閉じられなくて。それでまた結局、朝まで寝られないままでした。
 それでこうして、先生をお呼びしたわけです。先生、これはいったい、なんなんでしょうか?」
伊沢さん
「悪霊ですね」
Cさん
「ああ、やっぱり」
伊沢さん
「問題は、その悪霊がなんでCさんの元へ来たかですが、Cさん、呪術を使いましたよね?」
Cさん
「は?」
伊沢さん
「それでSさんって人を呪いましたよね? その呪いがあなたに返ってきたんです。そして、その返ってきた呪いがよくないものを呼んだ結果、そういう女性の悪霊とかが出てくるようになったわけです」
Cさん
「はあ・・・・・・すごいなあ。やっぱ本物なんだ」
 Cさんは笑いながらいいました。その笑顔はぱっと見、ものすごく愛嬌のあるものだったのですが、それだけによけい恐ろしかったです。
Cさん
「そうなんです、僕は確かにSを呪いました。こんなことしちゃいけないっていうのはわかってました。でも、どうしてもやはり、つらくて、苦しくて。今でもあの娘のことが忘れられないんです、それでつい、呪いをかけてしまって。
 でも、今は本当に後悔していますし、その呪いが返ってきてこうなっていることも自業自得だとわかっています。もう二度と、こんなことはしないつもりです。今は本当に反省してるので」
 Cさんの笑みはいつしか、陰鬱な面持ちへと変わっていきました。本気で後悔しているように見えました。
伊沢さん
「いや、もういいですよ」
Cさん
「いや、これは許されることじゃありません」
伊沢さん
「いや、そうじゃなくて。あの、Sさんの呪いを解いたの私なので、全部知ってるんですよ、あなたのやってきたこと」
 Cさんはその恰好のまま、固まりました。
伊沢さん
「あなたがSさんにしつこくつきまとってたことも知ってますし、あなたがSさんに送った脅迫の手紙も全部読みました。で、反省したっていうのも嘘ですよね。何考えてるのかとかも、全部ばれてますからね」
 Cさんが依頼をよこしてきたのは、Sさんのお祓いから一か月後くらいのことでした。その名前を見たときは、さすがに僕も驚きました。
 伊沢さんは”たぶん神様がそういう引き合わせをしたのかもね。こいつをこらしめてやれって、そういうことかもしれない”と言っていました。
 僕らは仕事のためではなく、彼をこらしめるつもりでここへ来たのです。もっとも、本当にやばい状況だったり、心の底から反省しているようなら助けるつもりだ、と伊沢さんは言っていました。
伊沢さん
「悪いですけど、私にはあなたを助けることはできません。今、この部屋にはその女の人の悪霊だけでなく、他にも数えきれないくらいの霊たちがいます。そいつらがみんな、あなたをあの世へ引きずり込もうとしています。
 でもそれは、人を呪おうとしたあなたへ対する神様の罰だと思います。ほんとに反省したほうがいいと思います。そしたら、神様も許してくれるかもしれませんよ」
 どうやら彼女は、Cさんを助けるつもりがないみたいでした。
 そしてCさんのほうはというと、しばらくのあいだ無表情でじっと彼女を見ていました。やがて、彼は口を開きました。
Cさん
「俺も死んだら、悪霊になれますかね?」
 そう尋ねる彼は笑みを浮かべていました。しかし、冗談で尋ねているようには見えませんでした。
 話はそれで終わって、僕らはその場を立ち去りました。そのあと彼がどうなったか、僕は知りません。
 あとこれは補足ですが、のちに彼女は彼を助けなかった理由について、こう語っています。
伊沢さん
「だって、ああなったのは自業自得だし。人を呪い殺そうとしたやつとかは助けないよ、私は。むしろ、一回地獄見ろって思う。お前の呪った人がどれだけ苦しんだかをちゃんと味わって、反省しろってね」