しおりちゃん①
ー/ー このお話に出てくるしおりちゃん、というのはいわゆる人形のことです。子供の頃、お気に入りの人形を友達のようにどこへでも持って行ったことのある方は、少なからずいると思います。ただ、この時の相談はそういったほほえましい思い出とは少し異なる類のものでした。
その時に依頼してくださったのが、Gさんという方で、物静かで上品な雰囲気のある、美しい女性でした。
Gさん
「娘がそのプ〇キュアの人形を好きになるのは別に構わないんです。もともとプ〇キュアが好きでしたし。でもあまりにも執着しすぎているというか、それこそずっと肌身離さず持っているというか。
それだけならいいんですけど、置いて行こうねって言っても、やだって言ったり、持っててあげるからって言ってあずかろうとしたら怒り出したりするので、さすがにちょっと変だなって思って」
僕
「確かにそれは、ちょっと様子が変ですね」
Gさん
「ですよね。あと、なんかちょっと私も信じてはいなかったんですけど、人形が話すんだって言うんです。しおりちゃんっていうのが、娘がその人形につけた名前なんですけど、それも人形がそう呼んでくれって言ったって。
最初はそういう空想なのかなって思ってたんです。でもそのうち、買っておいたはずのお菓子がいつの間にかなくなっていて、あとからお菓子の空き袋が娘の部屋から出てくる、ということがあって。しかもその空き袋が、棚の裏にまるで隠すように押し込まれていて。
こんなことしちゃだめ、って叱ったら”しおりちゃんがやっていいって言ったんだもん”って言うんです。
それだけならまだしも、旅行で出かけたときにあの子が突然、私のことを口減らしのために捨てようとしてるんでしょ、とか言いだしたりして。うちの娘、まだ五歳なんですけど、なんでそんな言葉を知ってるんだろうって思ってしまって。それでだんだん、しおりちゃんが本当にしゃべっているんじゃないか、という気がしてきてしまって」
僕
「それはつまり、お菓子の場所だったり、その、ひどい言葉だったりを、そのしおりちゃんっていう人形が教えているかもしれないと?」
Gさん
「もちろんばかげた想像だとは思います。でも、なんかちょっといろいろありすぎて・・・・・・」
僕
「ばかげた想像なんて、そんなことはないと思います。魂の宿った人形というものを我々もいくつか目にしていますし、実際、うちもそういう人形を預かっています」
Gさん
「そうなんですか? 人形に魂って宿るものなんですか?」
僕
「ええ。とにかく、まずはその人形を見てみないとなんとも言えませんので、一度その人形を見せてもらえますか?」
Gさん
「構いません。でもちょっと、渡してくれるかどうかわからないので、直接見にいったほうがはやいと思います」
それで僕たちは、Gさんの案内に従って、Gさんの娘さんのいる部屋へと行くことになりました。
部屋のドアを開けると、Gさんの娘さんはびくっと体を震わせました。それから彼女はこちらを向きました。
僕
「はじめまして、村山っていいます。お友達のしおりちゃんに会いたいんだけど、どこにいるかな?」
彼女は答えてくれませんでした。ただ黙って、じーっとこちらをにらみつけていました。
するとふいに、伊沢さんが部屋を出て、その部屋のすぐ左隣にある部屋へ行きました。
そしたら、娘さんが急に立ち上がって、駆け出しました。
Gさんの娘さん
「そっち行っちゃだめ!」
伊沢さんが入っていったのは、Gさんたちの寝室と思われる部屋でした。その部屋にあるクローゼットの戸を彼女は開けました。
と、そこで娘さんが伊沢さんの足にむしゃぶりつきました。
Gさんの娘さん
「イヤアアアアアアアア!」
尋常ではない叫び方でした。その異様な反応を見て、僕は少し恐ろしくなってしまいました。
伊沢さんは迷うことなく、服で見えなくなっているある個所に手を突っ込みました。引き出した手には、カラフルな髪色の人形が握られていました。
Gさんの娘
「はなせ! はなせえええええ!」
そこで、娘さんは伊沢さんの足にかみつきました。それを見たGさんは、すぐさま娘さんを引き離しました。
Gさん
「何してるの!」
Gさんが怒っても、娘さんはわめくばかりでした。
伊沢さん
「落ち着いてください」
伊沢さんは、人形からは目を離さずに、そう言いました。
すると、不思議なことに、娘さんがぴたりと騒ぐのをやめました。あまりにもすごい変わりようだったので、あぜんとしてしまいました。
伊沢さんは、人形をベッドの上に置きました。
「この人形がしおりちゃんですね?」
彼女はGさんに尋ねました。
「は、はい」
「これをいますぐ除霊したいのですが、いいですか?」
彼女がそう言った直後、人形を載せたベッドが、大きく揺れだしたのです。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。