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小学校の神隠し④

ー/ー



 学校に結界をかけたその翌日でした。また一人、行方不明者が出てしまったのです。ただし被害者は僕らが結界をかけた学校の生徒ではありませんでした。

 被害者は、別の小学校の男子生徒で、最後にその生徒の姿が見られた場所は、Yさんの子供が通う小学校から、十二キロも離れたところでした。

 犯人が我々のいるところでわざわざ子供をさらうわけもなく、我々が捜索していなかったところで、子供を狙ったわけです。

伊沢さん
「たぶんこれで、被害のあったところへ行っても、また別の土地でってなるんだと思う。完全にいたちごっこじゃん」

 僕の部屋にやってきた伊沢さんは頭をかきむしりました。それから伊沢さんは僕のほうを見ました。

伊沢さん
「なんかわかった?」

「いや、なかなかやっぱ霊的なこととかよくわからないので」

伊沢さん
「霊的にわからないことは全部私が教えるから。なんでもいいから推理して」

「そんなこと言われても・・・・・・じゃあ、被害者たちが神様へのいけにえになっているっていう可能性はないですか?」

伊沢さん
「いけにえか」

「たとえば、この四人をいけにえに捧げる代わりに俺の願いを叶えてくれ、みたいなのはできるんですか?」

伊沢さん
「いけにえの儀式はあるし、神様にお願いをする儀式もある。ただその場合、四人もいらない。いけにえが人間の子供だったら、一人いればいいと思う」

「それなら、最初の被害者の子をいけにえして、神様にほかの三人をさらわせるってことはできるんですか?」

伊沢さん
「それは、できると思う。うん、ありえる」

 僕は資料をめくって、一番最初の被害者の顔写真が載っているページを出しました。

「ということは、犯人は一番最初の被害者のR君をいけにえにして、なんらかの理由で子供三人を神様に襲わせた?」

伊沢さん
「ありえるかも。R君のお家ってどこにある?」

「え? 住所は、書いてないですね」

伊沢さん
「いいや。家の場所くらいなら見られるかもしれない」

 僕は彼女に資料を渡しました。彼女は写真に手を当てて、霊視を始めました。

伊沢さん
「居場所がわかった」

「邪魔されなかったんですか?」

伊沢さん
「あっちが邪魔してくるのは、あくまで私があっちのことを見ようとしたときだけだから。それ以外のところを見る分には大丈夫。隠れることはできても、私が探し物をするのは止められない、みたいなそんなかんじ」

 僕は車を出して、伊沢さんの案内に従って道を走っていきました。やがて、それらしい家を伊沢さんが見つけたので、近くに車を停めて、R君の家に行きました。

 家のチャイムを鳴らしてみましたが、誰も出ませんでした。気づいていないだけかと思って、二度三度と鳴らしてみましたが、やはり出ません。

 そんなことをしていると、その家には今誰もいないよ、と女性の声で言われました。

 振り向くと、六十代くらいの女性がこちらを見ていました。

「こんにちは。誰もいないっていうのはどういうことですか?」

隣の家に住む女性
「その家にはもともと三人家族が住んでたんだけど、子供のほうは誘拐されて行方不明になって、両親は家の中で事故に遭って今は入院中。ほんと、ひどいもんだよ」

「それは確かに大変ですね」

隣の家に住む女性
「まあでも、両親のほうは同情できるほどいい人間でもなかったけどね」

「どういう意味ですか?」

隣の家に住む女性
「虐待よ、虐待。子供の泣き声とか父親の怒声とか、ほんとうにひどかったんだから。あまりにひどいから私、児童相談所に通報したこともあるのよ。でも、そんなのなんの意味もなかった。一時的に保護しただけで、すぐに家に帰されちゃって、それでまた泣き声と怒声が聞こえるようになって。児童相談所なんて、ちっとも役に立ちゃしない。

 あれは本当にひどかった。子供なんて、こんな棒切れみたいな腕になるほど痩せちゃって、顔にあざがある日もあって。

 あげく、それで行方不明になったってんでしょ? いくらなんでも子供がかわいそうだわ。警察がうちにも聞き込みに来たんだけど、その時に私言ってやったのよ。”ここの家の父親が間違って子どもを殺しちゃって山に埋めたって言ったとしても、私は驚きません”ってね」

「それはひどいですね、ほんとうに」

 今の話を聞いただけでも、その父親が人でなしであることは明らかでした。

 この時の僕は、父親が息子をいけにえにしたのではないか、と思っていました。そんな父親なら、一切のためらいもなく息子をいけにえに捧げそうな気がしたからです。

隣の家に住む女性
「あと子供が夜に出歩いてても、止めもしないの。ここの家の子供が夜中に一人で遊んでるのに、迎えにもこないで、結局一週間くらいして私があれはちょっとどうなのって言ったら、ようやく連れ帰ったんだから」

「夜中に一人で何してたんですか?」

隣の家に住む女性
「え? なんか、一人で公園中を駆け回ってたわよ。走りながら笑ったり、一人でしゃべったりしてたのがちょっと不気味だったわね。きっと、虐待のストレスで精神がおかしくなっていたんでしょうね。子供って空想の友達を作ったりとかするっていうけど、それじゃないかしら」

「なるほど、いや、ひどすぎますね」

隣の家に住む女性
「でしょ? 今回の事故だってきっと、今までやってきたことの罰を神様が与えたのよ」

「ああ・・・・・・」

 その時、僕の頭にひらめくものがありました。しかしこれはまだ想像の産物であって、伊沢さんに話してみなければ、それが本当に起こるかどうかわからないようなものでした。


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 学校に結界をかけたその翌日でした。また一人、行方不明者が出てしまったのです。ただし被害者は僕らが結界をかけた学校の生徒ではありませんでした。
 被害者は、別の小学校の男子生徒で、最後にその生徒の姿が見られた場所は、Yさんの子供が通う小学校から、十二キロも離れたところでした。
 犯人が我々のいるところでわざわざ子供をさらうわけもなく、我々が捜索していなかったところで、子供を狙ったわけです。
伊沢さん
「たぶんこれで、被害のあったところへ行っても、また別の土地でってなるんだと思う。完全にいたちごっこじゃん」
 僕の部屋にやってきた伊沢さんは頭をかきむしりました。それから伊沢さんは僕のほうを見ました。
伊沢さん
「なんかわかった?」
「いや、なかなかやっぱ霊的なこととかよくわからないので」
伊沢さん
「霊的にわからないことは全部私が教えるから。なんでもいいから推理して」
「そんなこと言われても・・・・・・じゃあ、被害者たちが神様へのいけにえになっているっていう可能性はないですか?」
伊沢さん
「いけにえか」
「たとえば、この四人をいけにえに捧げる代わりに俺の願いを叶えてくれ、みたいなのはできるんですか?」
伊沢さん
「いけにえの儀式はあるし、神様にお願いをする儀式もある。ただその場合、四人もいらない。いけにえが人間の子供だったら、一人いればいいと思う」
「それなら、最初の被害者の子をいけにえして、神様にほかの三人をさらわせるってことはできるんですか?」
伊沢さん
「それは、できると思う。うん、ありえる」
 僕は資料をめくって、一番最初の被害者の顔写真が載っているページを出しました。
「ということは、犯人は一番最初の被害者のR君をいけにえにして、なんらかの理由で子供三人を神様に襲わせた?」
伊沢さん
「ありえるかも。R君のお家ってどこにある?」
「え? 住所は、書いてないですね」
伊沢さん
「いいや。家の場所くらいなら見られるかもしれない」
 僕は彼女に資料を渡しました。彼女は写真に手を当てて、霊視を始めました。
伊沢さん
「居場所がわかった」
「邪魔されなかったんですか?」
伊沢さん
「あっちが邪魔してくるのは、あくまで私があっちのことを見ようとしたときだけだから。それ以外のところを見る分には大丈夫。隠れることはできても、私が探し物をするのは止められない、みたいなそんなかんじ」
 僕は車を出して、伊沢さんの案内に従って道を走っていきました。やがて、それらしい家を伊沢さんが見つけたので、近くに車を停めて、R君の家に行きました。
 家のチャイムを鳴らしてみましたが、誰も出ませんでした。気づいていないだけかと思って、二度三度と鳴らしてみましたが、やはり出ません。
 そんなことをしていると、その家には今誰もいないよ、と女性の声で言われました。
 振り向くと、六十代くらいの女性がこちらを見ていました。
「こんにちは。誰もいないっていうのはどういうことですか?」
隣の家に住む女性
「その家にはもともと三人家族が住んでたんだけど、子供のほうは誘拐されて行方不明になって、両親は家の中で事故に遭って今は入院中。ほんと、ひどいもんだよ」
「それは確かに大変ですね」
隣の家に住む女性
「まあでも、両親のほうは同情できるほどいい人間でもなかったけどね」
「どういう意味ですか?」
隣の家に住む女性
「虐待よ、虐待。子供の泣き声とか父親の怒声とか、ほんとうにひどかったんだから。あまりにひどいから私、児童相談所に通報したこともあるのよ。でも、そんなのなんの意味もなかった。一時的に保護しただけで、すぐに家に帰されちゃって、それでまた泣き声と怒声が聞こえるようになって。児童相談所なんて、ちっとも役に立ちゃしない。
 あれは本当にひどかった。子供なんて、こんな棒切れみたいな腕になるほど痩せちゃって、顔にあざがある日もあって。
 あげく、それで行方不明になったってんでしょ? いくらなんでも子供がかわいそうだわ。警察がうちにも聞き込みに来たんだけど、その時に私言ってやったのよ。”ここの家の父親が間違って子どもを殺しちゃって山に埋めたって言ったとしても、私は驚きません”ってね」
「それはひどいですね、ほんとうに」
 今の話を聞いただけでも、その父親が人でなしであることは明らかでした。
 この時の僕は、父親が息子をいけにえにしたのではないか、と思っていました。そんな父親なら、一切のためらいもなく息子をいけにえに捧げそうな気がしたからです。
隣の家に住む女性
「あと子供が夜に出歩いてても、止めもしないの。ここの家の子供が夜中に一人で遊んでるのに、迎えにもこないで、結局一週間くらいして私があれはちょっとどうなのって言ったら、ようやく連れ帰ったんだから」
「夜中に一人で何してたんですか?」
隣の家に住む女性
「え? なんか、一人で公園中を駆け回ってたわよ。走りながら笑ったり、一人でしゃべったりしてたのがちょっと不気味だったわね。きっと、虐待のストレスで精神がおかしくなっていたんでしょうね。子供って空想の友達を作ったりとかするっていうけど、それじゃないかしら」
「なるほど、いや、ひどすぎますね」
隣の家に住む女性
「でしょ? 今回の事故だってきっと、今までやってきたことの罰を神様が与えたのよ」
「ああ・・・・・・」
 その時、僕の頭にひらめくものがありました。しかしこれはまだ想像の産物であって、伊沢さんに話してみなければ、それが本当に起こるかどうかわからないようなものでした。