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小学校の神隠し②

ー/ー



 少し考えてから、Yさんは話し始めました。

Yさん
「ちょっと学校の立ち入り許可みたいなものについては、僕のほうから校長先生に話してみます。なんとか、いや絶対に先生が学校に入れるようにお願いしてきますので」

伊沢さん
「よろしくお願いします。私たちのほうは、小学校の周辺とか公園とか子供たちがよく出入りしそうなところを見回りしつつ、犯人を探します」

Yさん
「わかりました」

 それでいったん、僕らはYさんの家を出ました。それからさっそく、小学校のあるところへ移動しました。

「ここみたいですね」

 僕は校門ごしに学校の敷地内を覗いてみました。子供の姿はありません。土曜日ではあっても、普段なら遊びに来る子供が何人かいるものです。しかし状況が状況だからでしょうか、子供の声すら聞こえません。

伊沢さん
「そうやってじろじろ校舎内を見てると不審者みたいだから、やめたほうがいいと思うよ」

「うっ」

 僕は校舎内から目をそらしました。

 スマホでこの地域周辺のマップを出して、それを見ながら子供の集まりそうなところを見て周ることにしました。

「なんか、夫婦岩なんていうのがあるらしいですね。川のところにあるみたいです。小学校付近の川なんか、子供がカニとか捕ろうとして遊びに行く可能性もあると思うんですけど、行ってみますか?」

伊沢さん
「そうだね、行ってみようか」

 どうやらその川は、小学校のすぐ隣を流れているようでした。その川へは階段を降りて行けるようになっていました。

 降りた先に赤い鳥居があって、そのすぐ向こうにしめ縄がかけられている岩が二つありました。一つは僕よりも一回り大きいくらいの岩で、もう一つは僕と同じくらいの大きさの岩でした。

伊沢さん
「あいさつだけしていこう。鳥居の前で一礼してから入って」

 僕は鳥居の前で一礼すると、鳥居の向こう側へ一歩、進みました。

伊沢さん
「二礼二拍手一礼で。自分の名前と、ごあいさつにきましたっていうのを心の中で伝えて。お願い事とかはしないで」

 伊沢さんに言われた通りにしたあと、伊沢さんはすぐにその場を立ち去ったので、僕もそれにならいました。

 小学校の近所にある公園へ向かう道中、僕は彼女に尋ねました。

「神様へのお参りってお願い事はだめなんでしたっけ?」

伊沢さん
「さっきの夫婦岩にいた神様は、けっこうよそ者を警戒するタイプの神様だったから。お願い事なんかすると、なんでよそ者のお前らの頼みを聞かなきゃいけないんだってなっちゃうし、かといって無視してあいさつしないのも無礼だから。とにかく、神様を怒らせるのが一番やばいから」

「そうなんですね」

伊沢さん
「ああいう土着の神様でなく、誰でもウェルカムみたいなかんじの神社だったら、よろしくお願いしますぐらいまでなら許される。お金欲しい、とか願うのはだめ。神様は人間の欲を嫌うから」

「欲が嫌いっていうのは、どういうことですか?」

伊沢さん
「ほら、欲深い人って人のあいだでも嫌われるじゃん。ちょうだいちょうだいばっかで人に何かに与えようとしない人のそばにいると、疲れるしその人のこと嫌いになるでしょ」

「あーいますね、そういう人。僕もちょっとそういう人は苦手です」

伊沢さん
「そう、それと一緒。神様にもちゃんと感情ってものがあるから。なんでも叶えてくれるわけじゃないし、むかつく、とか寂しいとかもちゃんと感じるから」

 あと少しで公園に着く、というところで「そこの二人、ちょっと止まってもらえますか?」と拡声器を使って出したような声で、後ろから言われました。

 なんだろう、と思って振り向くと、パトカーが来ていました。パトカーの中から警察官が一人出てきて、こちらへ歩いてきました。

警察官
「すみません、身分証とかお持ちですか?」

「はい、持ってます」

 僕は運転免許証を出して、警察官に見せました。

警察官
「ああ、なるほど。この土地の方ではないんですか?」

「ええ、ここへは仕事で来ていて」

警察官
「ああ、お仕事ですか。さしつかえなければ、どのようなお仕事なのか教えてもらっていいですか?」

「彼女が霊媒師をやっておりまして、僕はその助手として仕事のお手伝いさせていただいております」

警察官
「霊媒師。はあー、なるほど。霊媒師ねえ。それほんと? なんか怪しいことでもやってるんじゃないの?」

 なんだこいつ、と僕は反感を覚えました。そしてその時に僕は、彼の目の様子に気づきました。それはまさに、目が血走っている、というかんじでした。目の色が真っ黒で、目をかっと見開いているような状態に見えました。

 この人は頭がおかしくなりかけているのかもしれない、と思った僕は、彼を刺激しない方向で話を進めることにしました。

 それからしばらくのあいだ、警察官から質問攻めにされました。こちらは何ひとつやましいことはありませんから、一つ一つの質問に正直に答えました。

 結局、職質が終わるまでに十分くらいかかりました。職質が終わると、警察官は感謝の言葉を述べて、僕らを解放してくれました。

 ところが、僕らが公園へ入っていったあとも、警察官は先ほどいたところに残っていて、僕らを見ていました。

「めっちゃ見られてますね」

伊沢さん
「あの人、操られてる」

「操られてる?」

伊沢さん
「目が真っ黒だったでしょ? それって、何かに取り憑かれている人の特徴だから」

「確かに、目が真っ黒になっているようには見えました。でも、誰があの警官を操っていたんですか?」

伊沢さん
「おそらく、今回の事件の犯人。私たちが来た目的に気づいて、こっちの邪魔をしにきたんだと思う。もっとも、あんな小細工なんてたいした意味もないけど」


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 少し考えてから、Yさんは話し始めました。
Yさん
「ちょっと学校の立ち入り許可みたいなものについては、僕のほうから校長先生に話してみます。なんとか、いや絶対に先生が学校に入れるようにお願いしてきますので」
伊沢さん
「よろしくお願いします。私たちのほうは、小学校の周辺とか公園とか子供たちがよく出入りしそうなところを見回りしつつ、犯人を探します」
Yさん
「わかりました」
 それでいったん、僕らはYさんの家を出ました。それからさっそく、小学校のあるところへ移動しました。
「ここみたいですね」
 僕は校門ごしに学校の敷地内を覗いてみました。子供の姿はありません。土曜日ではあっても、普段なら遊びに来る子供が何人かいるものです。しかし状況が状況だからでしょうか、子供の声すら聞こえません。
伊沢さん
「そうやってじろじろ校舎内を見てると不審者みたいだから、やめたほうがいいと思うよ」
「うっ」
 僕は校舎内から目をそらしました。
 スマホでこの地域周辺のマップを出して、それを見ながら子供の集まりそうなところを見て周ることにしました。
「なんか、夫婦岩なんていうのがあるらしいですね。川のところにあるみたいです。小学校付近の川なんか、子供がカニとか捕ろうとして遊びに行く可能性もあると思うんですけど、行ってみますか?」
伊沢さん
「そうだね、行ってみようか」
 どうやらその川は、小学校のすぐ隣を流れているようでした。その川へは階段を降りて行けるようになっていました。
 降りた先に赤い鳥居があって、そのすぐ向こうにしめ縄がかけられている岩が二つありました。一つは僕よりも一回り大きいくらいの岩で、もう一つは僕と同じくらいの大きさの岩でした。
伊沢さん
「あいさつだけしていこう。鳥居の前で一礼してから入って」
 僕は鳥居の前で一礼すると、鳥居の向こう側へ一歩、進みました。
伊沢さん
「二礼二拍手一礼で。自分の名前と、ごあいさつにきましたっていうのを心の中で伝えて。お願い事とかはしないで」
 伊沢さんに言われた通りにしたあと、伊沢さんはすぐにその場を立ち去ったので、僕もそれにならいました。
 小学校の近所にある公園へ向かう道中、僕は彼女に尋ねました。
「神様へのお参りってお願い事はだめなんでしたっけ?」
伊沢さん
「さっきの夫婦岩にいた神様は、けっこうよそ者を警戒するタイプの神様だったから。お願い事なんかすると、なんでよそ者のお前らの頼みを聞かなきゃいけないんだってなっちゃうし、かといって無視してあいさつしないのも無礼だから。とにかく、神様を怒らせるのが一番やばいから」
「そうなんですね」
伊沢さん
「ああいう土着の神様でなく、誰でもウェルカムみたいなかんじの神社だったら、よろしくお願いしますぐらいまでなら許される。お金欲しい、とか願うのはだめ。神様は人間の欲を嫌うから」
「欲が嫌いっていうのは、どういうことですか?」
伊沢さん
「ほら、欲深い人って人のあいだでも嫌われるじゃん。ちょうだいちょうだいばっかで人に何かに与えようとしない人のそばにいると、疲れるしその人のこと嫌いになるでしょ」
「あーいますね、そういう人。僕もちょっとそういう人は苦手です」
伊沢さん
「そう、それと一緒。神様にもちゃんと感情ってものがあるから。なんでも叶えてくれるわけじゃないし、むかつく、とか寂しいとかもちゃんと感じるから」
 あと少しで公園に着く、というところで「そこの二人、ちょっと止まってもらえますか?」と拡声器を使って出したような声で、後ろから言われました。
 なんだろう、と思って振り向くと、パトカーが来ていました。パトカーの中から警察官が一人出てきて、こちらへ歩いてきました。
警察官
「すみません、身分証とかお持ちですか?」
「はい、持ってます」
 僕は運転免許証を出して、警察官に見せました。
警察官
「ああ、なるほど。この土地の方ではないんですか?」
「ええ、ここへは仕事で来ていて」
警察官
「ああ、お仕事ですか。さしつかえなければ、どのようなお仕事なのか教えてもらっていいですか?」
「彼女が霊媒師をやっておりまして、僕はその助手として仕事のお手伝いさせていただいております」
警察官
「霊媒師。はあー、なるほど。霊媒師ねえ。それほんと? なんか怪しいことでもやってるんじゃないの?」
 なんだこいつ、と僕は反感を覚えました。そしてその時に僕は、彼の目の様子に気づきました。それはまさに、目が血走っている、というかんじでした。目の色が真っ黒で、目をかっと見開いているような状態に見えました。
 この人は頭がおかしくなりかけているのかもしれない、と思った僕は、彼を刺激しない方向で話を進めることにしました。
 それからしばらくのあいだ、警察官から質問攻めにされました。こちらは何ひとつやましいことはありませんから、一つ一つの質問に正直に答えました。
 結局、職質が終わるまでに十分くらいかかりました。職質が終わると、警察官は感謝の言葉を述べて、僕らを解放してくれました。
 ところが、僕らが公園へ入っていったあとも、警察官は先ほどいたところに残っていて、僕らを見ていました。
「めっちゃ見られてますね」
伊沢さん
「あの人、操られてる」
「操られてる?」
伊沢さん
「目が真っ黒だったでしょ? それって、何かに取り憑かれている人の特徴だから」
「確かに、目が真っ黒になっているようには見えました。でも、誰があの警官を操っていたんですか?」
伊沢さん
「おそらく、今回の事件の犯人。私たちが来た目的に気づいて、こっちの邪魔をしにきたんだと思う。もっとも、あんな小細工なんてたいした意味もないけど」