トンネルの女②
ー/ーHさん
「Nの車に三人で乗せてもらって、赤トンネルっていう心霊スポットに行ったんです。うわさだと、女が立ってるのを見たと思ったらもう一度見たらいなくなってた、とかトンネル内で交通事故にあった男の霊が見えるとかそういうのがあって。うちの地元だとわりと有名な心霊スポットです。
車でトンネルのところまで行って、いったんトンネルの入り口の手前で停車しました。で、どうするか話し合いました。
そしたらNが、”トンネルの真ん中で止まってエンジンを切ってから、ナオコさんナオコさんここですよって言うと霊が現れるらしい”って言い出して。
そんなのがあるって全然俺らも知らなかったんですけど、おもしろそうだってなってやることにしたんです。
Nは車をトンネルの真ん中まで進めてから止まって、エンジンを切りました。それから四人全員で、”ナオコさんナオコさんここですよ”って言いました。
でも霊も何も出てこなくて、なんだなにも出ないじゃんっていう雰囲気になって、もう出ようかって話になったんです。
ところがNが車を発進させようとしても、エンジンがかからないんです。Nが何回も試すんですけど、全然かからなくて。
それで俺も他の二人もめっちゃ不安になってたんですけど、N一人だけめっちゃ笑ってるんですよ。”やば、全然かかんねえ!”みたいなかんじで。
それで俺もちょっとだけほっとしたんです。でもなんか、だんだんNの様子がおかしくなっていって。げらげら笑いだしたかと思ったら、エンジンかけようとするのもやめちゃって。
そしたら助手席に座ってたTが、”やばい、Nが白目向いてる!”って言い出して。
そしたらNの後ろに座ってたFが、Nの肩をバンバン叩いて”おいしっかりしろ、Nしっかりしろ”ってやり始めて。俺も大声でNの名前を呼んだりしてました。
車の免許を持ってたのはNだけだったんで、Nがこのままだったら誰も車を運転できないし、帰れないから本気で焦ってました。
でもNはずっと笑ってて、俺らも半分パニくってるような状態でずっと叫んでました。そしたらバンって鈍い音がしたんです。なんだろって思ってたら、急にTが悲鳴をあげました。
それで前のほうを見たら、助手席側の窓に女の人がべたって両手をはりつけて、窓越しに俺のほうを見てにこおって笑ってるんですよ。
その女の人を見て、すぐに生きてる人じゃないっていうのはわかりました。その人、目が真っ白で黒目がないんですよ。普通の生きてる人でそんなのありえないじゃないですか。
外に出て逃げる気にもならないし、かといって車も動かないしどうしようって思っていたら、エンジンのかかる音がして、それから車が動き出したんです。
いつの間にか、Nが正気を取り戻して運転し始めてたんです。
それから、車の後ろの窓からのぞいてみたんですけど、さっきいたところには女の人はいませんでした。
でもそのまま車に乗り続けるっていうのは無理だっていう話になって、とりあえず目についたファミレスに寄りました。
ファミレスの中で料理を待ってる間に、”あの女やばかったよな”ってFが言い出したのをきっかけにトンネルの話題になって。そのうちNが、”まじやばかった。気づいたら女がこっち見てるのが見えて慌ててエンジンかけたわ”っていう風に言ったんです。
そこで、あれおかしいなって思ったんです。で、みんなに尋ねたんです。”女の人、ずっと俺のほうを見てなかった?”って。そしたら、みんな違うっていうんです。TはTのほうを見てたって言うし、FはFのほうを見てたっていうんです。だからみんな、女が自分のほうを見てたっていうんですよ。
でもそんなのあるわけないし、どういうことなんだろうって怖くなって。
そしたら怖くなったのか知らないですけど、Tが”Nが変なこと言い出すから”って言い出して。そしたらNが”変なこと?”って言うんで、Fが、ほらトンネルの真ん中で車を停めてとかなんとかって説明して。
そしたらNは”なに言ってるの? 俺そんなこと言ってない”って言いだして。
俺らは確かにNがそう言うのを聞いてるんです。でもNは”違う。いきなり車が走らなくなって、必死にエンジンかけようとしてたら、いきなりTが叫びだして、横見たら女がこっち見てた。あわててエンジンかけようとしたら、ようやく走り出したんだ”って全然違うこと言うんですよ。
じゃあトンネルがどうのっていうのはなんで出てきたんだ、っていうことになって。でもNは”知らない。そんな話聞いたこともない”しか言わないし、もう怖くなって。なんかよくわかんないしとりあえず帰ろうぜ、みたいな雰囲気になったから帰ることにしました。
トンネルであったできごとはここまでなんですけど、トンネルから帰ったあとで、Nが死んだって話を聞きました。
なんでも、住んでるアパートの部屋で首吊って自殺したって言うんですよ。でも、全然自殺する気配なんてありませんでしたし、なにより四人で会う約束をしたばっかりなんですよ。自殺しようっていう人間が人と会う約束なんてするはずないじゃないですか。
それなのに自殺してるから、これってもしかしてあの女のしわざなんじゃないかって気がしてきて。俺も死ぬかもしれないって思って念のためエック〇とかで霊能者をいくつか探しておいて、なんかあったら連絡しようって決めておいたんです。
そしたら昨日のことがあって、慌てていろんな霊能力者に連絡して、その中で唯一電話を返してくれたのが伊沢さんのところだったんで、本当に助かりました。いやほんとう、ありがとうございました」
Hさんはそう言って頭を下げました。
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