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後編

ー/ー




 そして、迎えた春。
 翔さんが復帰すると言った、約束の春だ。
 レース本番を前日に控えた早朝。
 俺は翔さんに呼び出され、指定された待ち合わせ場所へと向かった。
 休日の朝ということもあり、人通りのない市街地。
 その中から1人、こちらに向かって走ってくる——女の子。

「おはよう!」

 近づいてきた彼女は、競技用のユニフォームを着た翔さんだった。
「お、おざます」
「挨拶から噛んでるじゃん」
 朝から元気そうに、翔さんは笑う。仕方ないだろう、と内心思う。
 真冬の厚着からは気づかなかった、翔さんの女性的なライン。それが際立つユニフォーム姿を見せられたら……正直、動揺する。
 ましてや、最初に会ってからしばらくは、翔さんを兄貴分のように思っていたんだから。

「キミも元気そうで何より」
「翔さんこそ……復帰できてよかったです」
「それは他でもない、キミのおかげだよ。冬の間に頑張る姿をずっと見せてくれたから、僕もここまで来れた。ここからは、僕が頑張るところを見せる番だ」

 恥ずかしげもなく、真っ直ぐな言葉をぶつけてくる翔さん。
 そんな彼女がまぶしくて、俺は——

 俺は?

 今、翔さんにどんな感情を抱いた?
「はい、そういうわけで今日は荷物持ちとタイム計測係よろしく!」
 一瞬で駆け抜けていった気持ちの正体がわからぬまま、翔さんから持っていたスポーツバッグを押しつけられる。
「よし、身軽になったことだし、走って公園行くよ! 遅かったら置いてくからね!」
「ちょっ、俺は重くなったんですが⁉︎」

 荷物を抱え、慌てて翔さんを追いかけていく。
 前を走る翔さんのランニングフォーム。
 それは躍動感にあふれて、楽しそうで——美しかった。

スプリング・ランニング 挿絵
<終>


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 そして、迎えた春。
 翔さんが復帰すると言った、約束の春だ。
 レース本番を前日に控えた早朝。
 俺は翔さんに呼び出され、指定された待ち合わせ場所へと向かった。
 休日の朝ということもあり、人通りのない市街地。
 その中から1人、こちらに向かって走ってくる——女の子。
「おはよう!」
 近づいてきた彼女は、競技用のユニフォームを着た翔さんだった。
「お、おざます」
「挨拶から噛んでるじゃん」
 朝から元気そうに、翔さんは笑う。仕方ないだろう、と内心思う。
 真冬の厚着からは気づかなかった、翔さんの女性的なライン。それが際立つユニフォーム姿を見せられたら……正直、動揺する。
 ましてや、最初に会ってからしばらくは、翔さんを兄貴分のように思っていたんだから。
「キミも元気そうで何より」
「翔さんこそ……復帰できてよかったです」
「それは他でもない、キミのおかげだよ。冬の間に頑張る姿をずっと見せてくれたから、僕もここまで来れた。ここからは、僕が頑張るところを見せる番だ」
 恥ずかしげもなく、真っ直ぐな言葉をぶつけてくる翔さん。
 そんな彼女がまぶしくて、俺は——
 俺は?
 今、翔さんにどんな感情を抱いた?
「はい、そういうわけで今日は荷物持ちとタイム計測係よろしく!」
 一瞬で駆け抜けていった気持ちの正体がわからぬまま、翔さんから持っていたスポーツバッグを押しつけられる。
「よし、身軽になったことだし、走って公園行くよ! 遅かったら置いてくからね!」
「ちょっ、俺は重くなったんですが⁉︎」
 荷物を抱え、慌てて翔さんを追いかけていく。
 前を走る翔さんのランニングフォーム。
 それは躍動感にあふれて、楽しそうで——美しかった。
<終>