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ポルターガイストの起こる家②

ー/ー



Mさん
「本当ですか? どんな状況で、何が原因だったんですか?」

伊沢さん
「呪詛です」

Mさん
「じゅそ?」

「いわゆる、呪いですね」

Mさん
「呪い! え、なんでですか? それって私が誰かに恨まれてるってことですか?」

伊沢さん
「Mさんのご家族にかけられた呪詛が、悪霊や浮遊霊といった、悪いものを呼び寄せています。そうやって呼び集められたものたちが、ポルターガイストを引き起こしています」

Mさん
「その呪詛とかいうものは、誰がかけたんですか?」

伊沢さん
「それをこれから突き止めなくてはなりません。呪詛には、かけたことがばれてはならない、というきまりがあります。もしばれれば、呪詛は術者にかえっていくからです。逆に言えば、術者を見つけ出すことでおのずと呪詛も解けるわけです」

Mさん
「わからないままだったら解けないんですか?」

伊沢さん
「とにかく、まずは術者を見つけ出さなくてはいけません。思い出してください、あなたの家族を恨んでいるのは誰か」

Mさん
「ええ・・・・・・でも私、人に恨まれるようなことは何も。全然見覚えがないんです。主人を恨んでいる人かしら。でもそうだとすると、私にはちょっとわかりません」

伊沢
「ご主人はどんなお仕事をされているんですか?」

Mさん
「土木関係の会社の経営をしてます。私も社長夫人として、会社に来ては仕事を手伝ったりしています」

伊沢さん
「社員からはどんな評価を受けていますか?」

Mさん
「慕われれていると思います。頼りがいのある性格をしていますし、裏表のない人で、社員みんなを家族のように大切に思っている、素晴らしい人ですから」

伊沢さん
「なるほど。今、会社で働いている人の人数は?」

Mさん
「え? えーっと、五十六人ですね。主人の会社はそこまで大きくありませんので」

伊沢さん
「では、入って来た人の人数は?」

Mさん
「入ってきた人の人数?」

 そこでMさんはいぶかしげな表情を浮かべました。

Mさん
「それはちょっと。そんなもの、いちいち数えていませんもの。ちょっと待ってください、私を恨んでいる人を探すための質問ですよね? この質問にはなんの意味があるんですか?」

伊沢さん
「Mさん、今までに会社を辞めてきた人たちは、どのような理由で辞めていったのですか?」

Mさん
「辞めた人たちのうちの誰かが、私たちの家族に呪いをかけているっていうことですか? いやでも、そんなのありえません。だってそりゃ、遊びじゃないんですから厳しいことやつらいことだっていっぱいあります。それについていけなくて辞めていった人たちも大勢います。でも、だからといって恨むなんて、そんなことありえません!」

伊沢さん
「恨むかどうかを決めるのは術者のほうです。Mさんではありません」

Mさん
「私はそういうことを言ってるんじゃありませんよ。仕事を辞めたのを、会社のせいにするなんてありえないって言いたいんです!」

 この時のMさんは怒っているように見えました。しかしこの時の僕には、なぜ彼女が怒っているのかわかりませんでした。

 術者に怒りを向けるならわかるんです。あるいは伊沢さんが社員をバカにしたということなら、怒っても当然だと思います。しかしMさんの発言を聞く限り、そのどちらでもないようなのです。

伊沢さん
「Mさん、辞めていった人たちであなたに恨みを持っている人に心あたりがあるのではありませんか?」

Mさん
「あなた、本当はわかっているんじゃないの?」

 Mさんはびっくりするほど低い声でそう言いました。その声には、聞いていて思わずぞっとするほどのすごみがありました。

 しかし伊沢さんはそんなMさんの態度を見ても、全然動じていませんでした。

伊沢さん
「なんのことでしょう?」

Mさん
「呪いをかけた犯人のこと、霊視とかでもうわかってるんじゃないの? だからピンポイントでやたら、会社のこととか辞めていった人たちのこととか聞くんじゃないの?」

伊沢さん
「私は何も知りません。あなたが知っているんです」

Mさん
「私だって知らないわよ!」

 この時、僕はいつMさんが伊沢さんに暴行しようとしても止められるよう、身構えていました。しかし結局、Mさんが伊沢さんを殴ったりすることはありませんでした。

伊沢さん
「私の霊視は見たいものを見られるわけではありません。勝手にイメージが頭の中に流れ込んでくるだけなので」

Mさん
「それも嘘なんじゃないの? ねえ、私のことからかってんの?」

伊沢さん
「私は本当のことを言っています」

Mさん
「何が本当でもいいけど、さっさと呪いを解いてくれる? こっちはお金出して、仕事も休んでこうして呼んだんだから。私の苦労を無駄にさせないでもらえますか?」

伊沢さん
「無駄にならないで済むと思いますよ。術者の顔と名前が今、わかりましたので」

 それから彼女は、二人の男の名前を挙げました。

 その名前を聞いた途端、Mさんはびっくりしながらも、どこか戸惑ったような表情で伊沢さんの顔を見ていました。

伊沢さん
「この二人があなたのご家族に呪詛をかけています。そのうちの一人はここを辞めた若い男性で、あなたのご主人からパワハラやモラハラを受けたと思っているようです」

Mさん
「パワハラってそんな。うちの主人はそんなことしません。てか、今の若い人って根性がないからすぐ被害者ヅラしますよね。せっかくうちで面倒みてあげたのに、その恩を呪いで返すほうがよっぽどひどいことじゃないですか?」

伊沢さん
「私にはなんとも言えません。ただご主人は呪詛の影響を受けていないようです。代わりに、ご主人に向けられた分の呪いがすべて、Mさんやお子さんがたに来ています」

Mさん
「どうしてですか? なぜ主人は平気なんですか?」

伊沢さん
「心の強い人は呪詛をはじき返すんです。ご主人は自分は正しいことをしていると信じているから、心を強く保てているんです。でもあなたは違いますよね。○○さんという女性の社員があなたの夫のセクハラのせいで辞めたことに対して、罪悪感を持っていますから。だから呪詛に体を蝕まれているんです。ちなみに、呪詛をかけているもう一人のほうの△△さんというのは、○○さんの彼氏だった人です。彼女はもうすでに自殺していて、自殺の原因になったあなたのご主人を恨んでいます」

 Mさんは呆然としていました。突然、身の回りにいた人の名前やその人たちにまつわるできごとを言い当てられて、かつひどいできごとを聞かされて困惑しているようでした。

伊沢さん
「呪詛を解くことはできます。呪詛だけじゃなくて、呪詛の影響でこの家に溜まってしまった悪いものも取り除いて、二度とMさんたち家族が呪詛にかからないようにすることもできます。ただ、一つだけMさんたちにしかできないことがあって、呪詛をかけてきたお二人に謝ってほしいんです。他の人たちは過去を乗り越えて前に進めているからいいんです。でもその二人だけは今も恨みを忘れられていない状態で、謝らない限り何度でも呪詛をかけてきてしまいます」

Mさん
「でも、呪詛が二度とかからないようにしてくれるんですよね?」

伊沢さん
「それはできます。しかし恨みをもったまま生き続けるというのは彼らにとってもよくないですし、Mさんのことだけでなく、彼らの人生をよくするためにも」

Mさん
「私らを呪ったバカどものことなんて知らねえよ! 呪い返しでもなんでもして、さっさと殺せよ!」

 彼女は大きな声で、そう怒鳴りました。


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Mさん
「本当ですか? どんな状況で、何が原因だったんですか?」
伊沢さん
「呪詛です」
Mさん
「じゅそ?」
「いわゆる、呪いですね」
Mさん
「呪い! え、なんでですか? それって私が誰かに恨まれてるってことですか?」
伊沢さん
「Mさんのご家族にかけられた呪詛が、悪霊や浮遊霊といった、悪いものを呼び寄せています。そうやって呼び集められたものたちが、ポルターガイストを引き起こしています」
Mさん
「その呪詛とかいうものは、誰がかけたんですか?」
伊沢さん
「それをこれから突き止めなくてはなりません。呪詛には、かけたことがばれてはならない、というきまりがあります。もしばれれば、呪詛は術者にかえっていくからです。逆に言えば、術者を見つけ出すことでおのずと呪詛も解けるわけです」
Mさん
「わからないままだったら解けないんですか?」
伊沢さん
「とにかく、まずは術者を見つけ出さなくてはいけません。思い出してください、あなたの家族を恨んでいるのは誰か」
Mさん
「ええ・・・・・・でも私、人に恨まれるようなことは何も。全然見覚えがないんです。主人を恨んでいる人かしら。でもそうだとすると、私にはちょっとわかりません」
伊沢
「ご主人はどんなお仕事をされているんですか?」
Mさん
「土木関係の会社の経営をしてます。私も社長夫人として、会社に来ては仕事を手伝ったりしています」
伊沢さん
「社員からはどんな評価を受けていますか?」
Mさん
「慕われれていると思います。頼りがいのある性格をしていますし、裏表のない人で、社員みんなを家族のように大切に思っている、素晴らしい人ですから」
伊沢さん
「なるほど。今、会社で働いている人の人数は?」
Mさん
「え? えーっと、五十六人ですね。主人の会社はそこまで大きくありませんので」
伊沢さん
「では、入って来た人の人数は?」
Mさん
「入ってきた人の人数?」
 そこでMさんはいぶかしげな表情を浮かべました。
Mさん
「それはちょっと。そんなもの、いちいち数えていませんもの。ちょっと待ってください、私を恨んでいる人を探すための質問ですよね? この質問にはなんの意味があるんですか?」
伊沢さん
「Mさん、今までに会社を辞めてきた人たちは、どのような理由で辞めていったのですか?」
Mさん
「辞めた人たちのうちの誰かが、私たちの家族に呪いをかけているっていうことですか? いやでも、そんなのありえません。だってそりゃ、遊びじゃないんですから厳しいことやつらいことだっていっぱいあります。それについていけなくて辞めていった人たちも大勢います。でも、だからといって恨むなんて、そんなことありえません!」
伊沢さん
「恨むかどうかを決めるのは術者のほうです。Mさんではありません」
Mさん
「私はそういうことを言ってるんじゃありませんよ。仕事を辞めたのを、会社のせいにするなんてありえないって言いたいんです!」
 この時のMさんは怒っているように見えました。しかしこの時の僕には、なぜ彼女が怒っているのかわかりませんでした。
 術者に怒りを向けるならわかるんです。あるいは伊沢さんが社員をバカにしたということなら、怒っても当然だと思います。しかしMさんの発言を聞く限り、そのどちらでもないようなのです。
伊沢さん
「Mさん、辞めていった人たちであなたに恨みを持っている人に心あたりがあるのではありませんか?」
Mさん
「あなた、本当はわかっているんじゃないの?」
 Mさんはびっくりするほど低い声でそう言いました。その声には、聞いていて思わずぞっとするほどのすごみがありました。
 しかし伊沢さんはそんなMさんの態度を見ても、全然動じていませんでした。
伊沢さん
「なんのことでしょう?」
Mさん
「呪いをかけた犯人のこと、霊視とかでもうわかってるんじゃないの? だからピンポイントでやたら、会社のこととか辞めていった人たちのこととか聞くんじゃないの?」
伊沢さん
「私は何も知りません。あなたが知っているんです」
Mさん
「私だって知らないわよ!」
 この時、僕はいつMさんが伊沢さんに暴行しようとしても止められるよう、身構えていました。しかし結局、Mさんが伊沢さんを殴ったりすることはありませんでした。
伊沢さん
「私の霊視は見たいものを見られるわけではありません。勝手にイメージが頭の中に流れ込んでくるだけなので」
Mさん
「それも嘘なんじゃないの? ねえ、私のことからかってんの?」
伊沢さん
「私は本当のことを言っています」
Mさん
「何が本当でもいいけど、さっさと呪いを解いてくれる? こっちはお金出して、仕事も休んでこうして呼んだんだから。私の苦労を無駄にさせないでもらえますか?」
伊沢さん
「無駄にならないで済むと思いますよ。術者の顔と名前が今、わかりましたので」
 それから彼女は、二人の男の名前を挙げました。
 その名前を聞いた途端、Mさんはびっくりしながらも、どこか戸惑ったような表情で伊沢さんの顔を見ていました。
伊沢さん
「この二人があなたのご家族に呪詛をかけています。そのうちの一人はここを辞めた若い男性で、あなたのご主人からパワハラやモラハラを受けたと思っているようです」
Mさん
「パワハラってそんな。うちの主人はそんなことしません。てか、今の若い人って根性がないからすぐ被害者ヅラしますよね。せっかくうちで面倒みてあげたのに、その恩を呪いで返すほうがよっぽどひどいことじゃないですか?」
伊沢さん
「私にはなんとも言えません。ただご主人は呪詛の影響を受けていないようです。代わりに、ご主人に向けられた分の呪いがすべて、Mさんやお子さんがたに来ています」
Mさん
「どうしてですか? なぜ主人は平気なんですか?」
伊沢さん
「心の強い人は呪詛をはじき返すんです。ご主人は自分は正しいことをしていると信じているから、心を強く保てているんです。でもあなたは違いますよね。○○さんという女性の社員があなたの夫のセクハラのせいで辞めたことに対して、罪悪感を持っていますから。だから呪詛に体を蝕まれているんです。ちなみに、呪詛をかけているもう一人のほうの△△さんというのは、○○さんの彼氏だった人です。彼女はもうすでに自殺していて、自殺の原因になったあなたのご主人を恨んでいます」
 Mさんは呆然としていました。突然、身の回りにいた人の名前やその人たちにまつわるできごとを言い当てられて、かつひどいできごとを聞かされて困惑しているようでした。
伊沢さん
「呪詛を解くことはできます。呪詛だけじゃなくて、呪詛の影響でこの家に溜まってしまった悪いものも取り除いて、二度とMさんたち家族が呪詛にかからないようにすることもできます。ただ、一つだけMさんたちにしかできないことがあって、呪詛をかけてきたお二人に謝ってほしいんです。他の人たちは過去を乗り越えて前に進めているからいいんです。でもその二人だけは今も恨みを忘れられていない状態で、謝らない限り何度でも呪詛をかけてきてしまいます」
Mさん
「でも、呪詛が二度とかからないようにしてくれるんですよね?」
伊沢さん
「それはできます。しかし恨みをもったまま生き続けるというのは彼らにとってもよくないですし、Mさんのことだけでなく、彼らの人生をよくするためにも」
Mさん
「私らを呪ったバカどものことなんて知らねえよ! 呪い返しでもなんでもして、さっさと殺せよ!」
 彼女は大きな声で、そう怒鳴りました。