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 高校の先輩からこの話を聞いたのは本当だ。だが、私はこの話が本当だとは思えなかった。桜の木に近づくと肉塊が降ってくる幻覚を見る? ありえない。大麻の木じゃああるまいし。

 では、どうして私がこんな話をみんなの前でしたのかって? そんなの決まってる。


 私はキャンパス内――人通りのほとんどない南門から入ってすぐにある、大きな桜の木の下にレジャーシートを敷いて座っていた。傍らには近くの和菓子屋で買った団子と家で水筒に入れてきた玉露。あたりはとても静かだ。時折桜の花びらが舞い散る。私が玉露をすすると、水筒のコップに桜の花びらが1枚降ってきた。濃い緑色の上に淡いピンク色を浮かべて、ゆらゆらと水面を揺らした。

 そう、すべてはこのためだ。絶景の花見スポット、それを貸し切りにするために、桜の木にまつわる怖い話をした。私の語った話は少しづつ人づてに広がっていき、今では誰もこの桜の木に近づこうともしない。計画通りだ。

 私はくつくつと笑う。本当に、馬鹿みたいだ。こんな子供だましの「怖い話」を真に受けちゃって。まぁ、おかげでこれから卒業するまで、この景色をひとり占めできるんだけどね。

 あたたかな春の風が吹いた。心地よい風が、私の髪をなでた。桜の花びらが舞い散る。そして、


――ぼとり。

「えっ!?」


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 高校の先輩からこの話を聞いたのは本当だ。だが、私はこの話が本当だとは思えなかった。桜の木に近づくと肉塊が降ってくる幻覚を見る? ありえない。大麻の木じゃああるまいし。
 では、どうして私がこんな話をみんなの前でしたのかって? そんなの決まってる。
 私はキャンパス内――人通りのほとんどない南門から入ってすぐにある、大きな桜の木の下にレジャーシートを敷いて座っていた。傍らには近くの和菓子屋で買った団子と家で水筒に入れてきた玉露。あたりはとても静かだ。時折桜の花びらが舞い散る。私が玉露をすすると、水筒のコップに桜の花びらが1枚降ってきた。濃い緑色の上に淡いピンク色を浮かべて、ゆらゆらと水面を揺らした。
 そう、すべてはこのためだ。絶景の花見スポット、それを貸し切りにするために、桜の木にまつわる怖い話をした。私の語った話は少しづつ人づてに広がっていき、今では誰もこの桜の木に近づこうともしない。計画通りだ。
 私はくつくつと笑う。本当に、馬鹿みたいだ。こんな子供だましの「怖い話」を真に受けちゃって。まぁ、おかげでこれから卒業するまで、この景色をひとり占めできるんだけどね。
 あたたかな春の風が吹いた。心地よい風が、私の髪をなでた。桜の花びらが舞い散る。そして、
――ぼとり。
「えっ!?」