──私を好きだってしつこかった男が、私の誘導で邪魔な今野を殺してくれた。
きっかけは大学の友達に誘われた飲み会。別の大学だし、その場限りの筈だったのよ。
そいつが私を好きになって、纏わりついて来るようになっただけ。
「面識がある」ってわかったとしても特に困らないけどね。だって私はただの一言も「今野を殺して」なんて口にしてないんだから。もちろん文字にも。
「俺に任せて! 琴ちゃんを苦しめる奴なんて許せない! 来週の月曜に
やるから、琴ちゃんはその日は一人にならないようにね!」
「中学時代に私をイジメてた男が、『くだらないことで土下座させられた』とか言ってたって聞いたの。私はこんなにつらいのに……」
何度断っても振り払っても諦めない男に、じゃあ「強制的に」離れてもらおうじゃない、ってだけだった。
どうせすぐに捕まるだろうと思ってたのに、まさかここまですべてが上手くいくなんてね。心配する必要もなかったわ。
「これで私と付き合える!」って舞い上がってうちに来たところにあの修羅場で、思わず私を庇おうとしたんだろうね。もう死んだから訊けないけど。
この先間違いなく私の足手纏いになった筈のあの男も、やっぱり邪魔だったあのババアが殺してくれた。
何も知らないまま、息子の敵取ったんだよ、お前。よかったじゃない。
これでもう、私を苛む重たい雲は消えたのよ。
雲の切れ間から差し込む光を見上げて、大きく深呼吸する。こういうのも「
天使の梯子」っていうのかしら。
本当に綺麗よね。まるで今の私の心を表してるみたい。
ああ、なんて清々しいんだろう!
~END~