「じゅんちゃん、……あのお見合い相手役は従兄なの。本当は三沢じゃなくて
我妻だけど」
心葉がゆっくりと話し出した。
「マ、母の姉の息子でね、小さいころから妹みたいに可愛がってくれてた。私が仲良くなりたい人がいるってつい零しちゃったら、協力するからって。この作戦も二人で、っていうかほとんど彼が考えたのよ。じゅんちゃんは大学で劇団入ってたから」
どの程度の劇団なのか知らないけど、見事な演技だったよ。完璧に「嫌味な男」になりきってたもんな。
素顔はあんなに優しそうなのに。
「でもさ、ココの家ってお金持ちでいい家なんだろ? 今回のは嘘でも、勝手に恋愛とか結婚とか無理なんじゃないの? ああ、それとも学生時代だけのお遊びだからどうでもいいのか」
投げやりな俺の言葉に、彼女が俯き加減だった顔を上げた。
「ううん、本当にうちはすごい家柄でもなんでもないのよ。父と母も恋愛結婚で、私にも好きにしていいって言ってくれてるわ。姉もお見合いなんかじゃなくて、同僚の普通の人と婚約してるし」
ただ俺と一緒にいたかった、って心葉は口にするけどさ。
「ココ、最初から間違ってる」
これ、言っちゃってもいいのか?
一瞬悩んだけど、結局俺は口を開いた。
「……俺は『尾崎さん』のこと、一年のころからちょっといいなって思ってた。その俺の気持ちをココは踏み躙ったんだ。金で」
「俊樹くん……」
俺の突然の『告白』に、心葉は目を見開いて静かに涙を溢れさせた。
「あの二十万は返す。俺、ココとデートしてたんだ。バイトじゃなくて。だから金もらうのはおかしいだろ?」
「そんなの──」
涙を拭うこともせずに言い掛けた彼女を制する。
「でなきゃ俺、もうココといられない。つまらないかもしれないけど、俺にも心が、……プライドがあるんだよ。金はなくても」
心葉には、それこそ理解できないことかもしれない。
だけど、これだけは譲れないんだ、俺も
「……一緒に、いてくれるの? 私、俊樹くんにひどいことした、のに?」
「まず、その『いてくれる』とか『もらう』ってのからやめよう。俺はココと対等の立場で付き合いたい。──逆に、それができないなら無理なんだ」
「ごめん、なさい。私、本当に何もわかってなくて、できなくて、本当に」
謝って欲しいわけじゃない。俺はホントに心葉と一緒にいたいと思ってる。
好きなんだよ、君が。
単に「なんとなく感じいい子」程度だったのが、二人で過ごすうちにとても大切な存在になってた。
きっと心葉は、今まで「自分には金しかない」って
呪縛掛けられてたんだ。
だから
俺にも「金の力」使わなきゃ振り向いてもらえないと思った? 騙してまで。
そう。見合いだけじゃなくて、心葉の親は娘を道具に使うような人たちじゃないんだろ?
──全部、噓だった。
それってすごく哀しいよ、心葉。
「ココ、だから一番はじめからやり直そう。──俺、バイト再開するから今までみたいにずっと一緒にはいられないけど、なるべく時間作るようにする」
「俊樹くん、本当に私でいいの…?」
「違うね。俺はココがいい」
俺の『恋人』が自分の良さに、魅力にも気づくように。後ろ向いて悪いことばっか数えてないで、並んで前見て歩こうよ。
まだ春なんだから、もっと明るい服着て笑顔で。
二人で、手をつないでさ。
~END~