「待て待てーっ!」
放課後、牛郎は宿題そっちのけで愛犬・ポコ太郎と追いかけっこをしている。ポコ太郎もまんざらじゃないようで、嬉々として走り回っている。
「牛郎、後でちゃんと宿題やるんだぞ!」
牛郎は話半分に返事をし、ポコ太郎との追いかけっこに夢中。俺だって、好き好んで小言は言いたくないんだけどな。
「「……!!?」」
某の気配を察したのか、2人は同じ方向に目をやる。いったいどうしたって言うんだ??
「コケッ! コケッ!」
どこから迷い込んだのか、1羽の鶏が2人の目線の先で佇んでいる。どうでもいいけど、大層筋肉質な鶏だなぁ??
「猪突猛進!!」
牛郎は鶏目掛けて突進していく。というより、お前は牛なんだけどな?
「ワンワンッ!!」
牛郎に先を越されまいと、ポコ太郎も躍起になって走る。お前、足が短いと定評のコーギーとは思えない俊敏さだな。
「コケーコッコッコ!!」
鶏は2人の気配を察知したのか、踵を返して逃げていく。締まりのいい脚、こいつもなかなかに俊敏と見た。
「待てーいっ!!」
牛郎の目が血走っている。その表情、もはや闘牛そのものだ。
「グルルゥー!!」
一方のポコ太郎も同じように目が血走り、加えて唸り声まで上げている。牧羊犬というよりは、狩猟犬の表情だ。
「コッコッコ!!」
鶏の行く先をよく見ると、そいつの目の前には柵が広がっていた。おそらく、やつは柵を飛び越えて逃げるつもりだ。
「コケッーコッコッコ!!!」
案の定、鶏はバサバサと羽ばたいて柵の向こう側へ。さて、ここからは突進した2人が柵をどうやって回避するのだろうか?
形はどうであれ、結果的にチキンレースとなった格好だ。……チキン、もう逃げたけど。
「ワンワンッ!!」
ポコ太郎、柵の直前で腰を捻り急旋回。カーレーサーも顔負け、鮮やかなドリフトを決めた。
「うおぉぉぉっっっーーー!!!」
牛郎、お前はどうするつもりなんだ!? 引き返すなら今のうちだそ!!
「ブルズ・ウルトラーっ!!!」
牛郎、それを言うならPlus ultraだ。いや、そうじゃなくてだな……さらに向こうへってどういう意味だ!?
『バキバキッ!!!』
Plus Ultraの精神で、あろうことか牛郎は柵を突き破った……物理的に。そこの柵、先月修理したばかりなんだけどな。
「コケッーコッコッコ!」
落陽の向こうで、鶏の声が聞こえる。そういえば、鶏は日本古来の伝承で太陽神と言われていたな。
鶏、夕日、太陽のルフラン……何を言っているんだ俺。