「おじさん、いくよぉっ!」
俺と牛郎は今、牧場の片隅でサッカーのPK戦を繰り広げている。彼の話によると、先日開催されたワールドカップの日独戦に感化されてサッカーをしてみたくなったとのこと。
試合結果は日本の惜敗。予選敗退となってしまったが、それでも少年達にとって彼らはスーパースターとして映っていたに違いない。実を言うと、元スーパースターなら牛郎の眼前にいるんだ。
「えいっ!!」
先攻は牛郎、俺はゴールキーパーと立ちはだかる。そして、牛郎は勢いよくボールを蹴り出す。さてさて……これはおそらく右上のゴールポスト狙いだな?
「バコンッ!」
俺はボールの軌道を先読みし、パンチングで跳ね返す。甥っ子よ、まだまだ甘いな。
「おじさん、すごいやぁ!!」
牛郎は俺の鮮やかなプレーに感心する。そりゃそうだ、なんたって俺は……だが、この話は本領を発揮するまで伏せておこう。
ーー
「さぁおじさん、どこからでもどうぞ!」
次は俺の攻撃回。何を隠そう、高校時代の俺は栃木県屈指のエースストライカーだったんだ!
「よぉし、行くぞぉっ!」
地元の仲間達と矢切中央イレブンを結成した俺は、『打倒・新作学院!』を掲げて下剋上を目指した。当時の俺達はダークホースとして県内で名を馳せた。
だが決勝戦、俺達は新作学院とのPK戦で惜しくも敗れる。哀しきかな、俺達の高校生活はここで終わってしまった。
前置きは長くなったが……甥っ子よ、伝説のシュートを受けてみよ!!!
ボールの軌道は牛郎の頭上スレスレを描くように。クロスバーに当たるか当たらないか、ゴールキーパーとしては判断を迷うところを狙う。よしよし、この軌道なら……!!
「プスッ!」
軌道に間違いはなかった。だが、あろうことかボールは牛郎の左角に刺さった。これはオレの想定が甘かったとしか言いようがない。
「あぁ〜あ、ボールが駄目になっちゃった」
牛郎はどことなく切ない表情。このPK戦は無効試合、幻の一戦となってしまった。