商談36 屁の突っ張りはいらない
ー/ー
岩でも引いているかのような鈍い重さ。早いとこ、こいつの正体を俺は知りたい。何てったって、俺の腕が限界に近付いているからだ。それにしても、この重さは何なんだ??
「おぉっと! 危ない......」
そいつを手繰り寄せることに夢中になっていた俺は、危うく足元を掬われるところだった。魚との格闘に夢中になっていて、足を踏み外す釣り人は後を絶たない。特に、大物が潜む釣り場は足場が悪いことも珍しくない。ここは用心、さもなくば海中に身を投げ出されてお陀仏だ。
岩場と言えばイシダイ釣りやメジナ釣りが王道だろう。それらは総じて強い引きで、手に汗握る戦いが楽しめる。しかしそのような感覚はなく、ただひたすら重い何かを引き寄せるだけの苦行。そもそも、こいつが本当に魚かどうかも怪しい。
そんなことを思っていると、僅かだが魚影が見えてきた。そいつは確かに魚だが......気のせいだろうか、ルアーが尾鰭に引っ掛かっていないか?? だとしたら、それは泳ぐ以前の問題だ。これはむしろ、早く引き上げた方が互いの為かも知れない。くどいようだが、もう俺の腕が悲鳴を上げているんだ。
陸に近付いたことを察した魚が、ここに来て抵抗を始めた。いくら動きが鈍いとはいえ、ここで足掻くのは違う気がする。......頼むからここで暴れるのは止めてくれ!!
本来、こういった大物相手にたも網を用意しておくのが通常だ。だが、不幸なことに俺はそんな代物を持ち合わせていない。残念だが、これは俺自身の腕でそいつを引き上げるしかない。頑張れ! 頑張るんだ俺!! 負けないこと・投げ出さないこと・逃げ出さないこと・信じ抜くこと。駄目になりそうなとき、それが一番大事なんだ。
「屁の突っ張りはいらないんだぁぁぁっっっ!!!」
悪足掻きをするそいつに対して俺は憤りを覚えた。その往生際の悪さは、俺が知る日本人的美学に反する。死を覚悟するなら潔く肚を括ることだ。ならばせめて、俺がお前に引導を渡してやろう。
岸まで手繰り寄せたそいつを、俺は力いっぱい引き揚げた。重い! 重すぎる!! 俺の腕はもぎ取られてしまいそうだ!!!
力ずくで引き揚げたそいつを見た俺は、驚きのあまり目が飛び出そうになった。嘴のように長い鼻と、そこに蓄えられた髭。流線型ながらもごつごつとした見た目。こげ茶が色濃い印象の体色。俺はテレビでしか見たことないが......これってどう見てもチョウザメだよなぁ!!?
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「おぉっと! 危ない......」
そいつを手繰り寄せることに夢中になっていた俺は、危うく足元を掬われるところだった。魚との格闘に夢中になっていて、足を踏み外す釣り人は後を絶たない。特に、大物が潜む釣り場は足場が悪いことも珍しくない。ここは用心、さもなくば海中に身を投げ出されてお陀仏だ。
岩場と言えばイシダイ釣りやメジナ釣りが王道だろう。それらは総じて強い引きで、手に汗握る戦いが楽しめる。しかしそのような感覚はなく、ただひたすら重い何かを引き寄せるだけの苦行。そもそも、こいつが本当に魚かどうかも怪しい。
そんなことを思っていると、僅かだが魚影が見えてきた。そいつは確かに魚だが......気のせいだろうか、ルアーが尾鰭に引っ掛かっていないか?? だとしたら、それは泳ぐ以前の問題だ。これはむしろ、早く引き上げた方が互いの為かも知れない。くどいようだが、もう俺の腕が悲鳴を上げているんだ。
陸に近付いたことを察した魚が、ここに来て抵抗を始めた。いくら動きが鈍いとはいえ、ここで足掻くのは違う気がする。......頼むからここで暴れるのは止めてくれ!!
本来、こういった大物相手に|たも網《・・・》を用意しておくのが通常だ。だが、不幸なことに俺はそんな代物を持ち合わせていない。残念だが、これは俺自身の腕でそいつを引き上げるしかない。頑張れ! 頑張るんだ俺!! 負けないこと・投げ出さないこと・逃げ出さないこと・信じ抜くこと。駄目になりそうなとき、それが一番大事なんだ。
「屁の突っ張りはいらないんだぁぁぁっっっ!!!」
悪足掻きをするそいつに対して俺は憤りを覚えた。その往生際の悪さは、俺が知る日本人的美学に反する。死を覚悟するなら潔く肚を括ることだ。ならばせめて、俺がお前に引導を渡してやろう。
岸まで手繰り寄せたそいつを、俺は力いっぱい引き揚げた。重い! 重すぎる!! 俺の腕はもぎ取られてしまいそうだ!!!
力ずくで引き揚げたそいつを見た俺は、驚きのあまり目が飛び出そうになった。嘴のように長い鼻と、そこに蓄えられた髭。流線型ながらもごつごつとした見た目。こげ茶が色濃い印象の体色。俺はテレビでしか見たことないが......これってどう見てもチョウザメだよなぁ!!?