「うおおおっ!」と、俺の気合の入った叫び声が山中に鳴り響く!
緊張のためか震える手で、獲物を切りつける俺。
「ふふ、えらい気合入ってるな?」
近くでゲンさんも刃を手に持ち、淡々と獲物を倒している。
「そりゃ、ゲンさんこいつ妹さんのためなら頑張れる奴ですからね!」
近くにいた他の組合のおっさんが笑いながら獲物を倒している。
対し、「違いない」と苦笑するゲンさん。
俺は「なに、笑ってんだよゲンさん!」と、少しムッとした。
「いや」
「そりゃ、なあ?」
他の組合員達とゲンさんは顔を見合わせ、噴き出したように笑いだす。
「ほらほら! 笑ってないで作業していきますよ!」
「お、おお! そうだったな」
ヴィィィン……。
鈍いチェーンソーの振動音と共に数メートルはある巨木がズシンと倒木する。
「しかし、この杉の木。一体何本倒せば、無くなるんですかねえ……」
ゲンさんは「そ、そうだな。なんせ数が多いからな? 妹さんの病を治すには元凶である杉をもっと切り倒さないといけないしな」と、なんか苦笑いしてますが?
「お、おいリキっ。日本の山にどれだけの杉があるか、おめえ知ってんのか?」
「えっ?」
俺の呆けた返事に、森林組合のおっちゃんはあきれ顔で俺を見つめている。
他の組合員の「いや、そもそも切ったとしてもまた、植えるから……」という内容に対し、「ば、ばかっ! こいつには植林作業はさせていないから黙ってろ!」とゲンさんは小声で叱咤してますがっ⁉
「あ、あのゲンさん? 妹の花粉症って、杉を駆逐すれば治るんですよね?」
「あ、ああ。嘘は言っていない……」
よ、良かった、そうだよな。
俺はベッドで涙目になり、咳込んでいる妹を思い出し、再びその原因であるにっくき杉の巨木をひとにらみし、手に持ったチェンソーをその幹にそっとあてがう。
そう、春になるとスギ花粉が大量に舞う。
その前に全ての杉を駆逐しないと……。
でないと、俺の可愛い妹がまた苦しむことになる。
クミ待ってろよ? お兄ちゃんが頑張って元凶を残らず駆逐してやるからなっ!
俺は木々の隙間から見える、少し黄ばんだ青空をキッと睨み、黙々と作業を進めていく。
「しっかし、コイツよく働くよな?」
「ま、まあ単純だからな?」
「いや、アホなだけだろ」
「重度のシスコンかな?」
なんか近くでゲンさんと他作業員がボソボソと話しているのが聞こえるが、きっと気のせいだろう、多分……。
おしまい