第16話 あんた、お寿司にして正解やったね
ー/ー
げぇ~、小娘になんしよるん!彼も私の肩ば抱いとるやん!
「ほら、直美さん、『あんた』って言うてみぃ」なんちゅうことば言わせるんよ。
「ほんなら、明彦も『おまえ』とか言うてみぃ」
「練習するのか?」
「うん」
「…おまえ…」こいつ、アホちゃう?
「…あんた…」私もアホやん!
「お~、夫婦に見えるばい。大丈夫」
「ははは」と明彦が照れ笑いした。「おっとそうだ」と立ち上がって、冷蔵庫の上のアイスバケットとウイスキー、グラスば持ってきた。
「バーボンとスコッチを買ったんですよ。ワイルドターキー12年とグレンフィディック。これでいいかな?昨日もウィスキーだったしね」ち言う。
私はうんうんと頷いた。そうよねぇ、昨日の晩、小倉のうちの店に彼が来たんやけん。それが今は大阪。夜行バスで後ばつけてね。あ~あ。「まずは、バーボンで。トリプル、ロックでいいよね?」私はまたうんうんと頷いた。
「はい、乾杯」と明彦がグラスば上げる。私とミキちゃんがカチンとグラスば合わせた。あ~、うまか。喉ばバーボンが流れていく。ちょっと落ち着いたばってん、え?彼がなんのためらいもなく、また私の肩ば抱いとる。ボーイさんが来た時だけやなかと?ミキちゃんがニヤニヤして見とる。
ミキちゃんと今日行ったとこの話なんかした。
「国立国際美術館、よかったよ。世界の現代美術がメインで、誰やったっけ?ピカソとかアンディー・ウォーホルの作品があって、直美さんがマチエール?マチエールの話とか、構図の話ば説明してくれたと」ちミキが明彦に言う。
「へぇ~、直美、美術に詳しいの?」ち聞かれた。肩ば抱かれとって、か、顔が近か!
「うん、私、美大出とると」ち言う。
「直美さんは、美大の院卒やけんね、明彦」
「ほぉ、それがまたなんで、バーのママさんを?」
「美大やけん、就職も専門とは関係なかとこしかなかったと。それで、何年か勤めたばってん、上司のセクハラがひどくて辞めたとよ。それで、知り合いがあそこば経営しとったけん、なんとなくバーのママさんになったと。専門は絵画の鑑定やけど、それで就職先もなかしね」ち彼の顔ば…ち、近か!
「そりゃあ、もったいない。アトリエとかでも絵画鑑定はありそうだけどなあ。サザビーズなんかでも募集しているんじゃないですか?美術館でも?」あら、よう知っとるね?
「う~ん、もう、その道にはあんまり興味もなかしね。アラフォーばってん、誰か嫁にもらうてくれんかなぁ?ち思うとると」
「やったら、明彦がもろうたらよかっちゃなかと?直美さん!」こ、小娘!なんちゅうこと言いよると!お前、彼に抱かれたんやろ?それも今朝まで!
「あ、そうしましょうか?直美?」ち、なんちゅうことばこの男も!
「二人とも、何ば言いよるんよ…」顔が赤うなった。
タイミングよく(悪く?)、ドアチャイムが鳴った。お寿司が来たみたいやね。
ボーイさんがテキパキと料理ばテーブルに並べていく。お寿司はまとめてひと皿に並べてある。確かに部屋のテーブルは狭かもんね。
「おまえ、おいしそうだね」ち彼が肩ば抱いて言う。
「あんた、お寿司にして正解やったね。ねぇ、ミキ」おぉ、即興で私もうまいこと言うやん。
「お姉さま、私、お寿司、大好き!」お姉さま?お姉さま?
明彦がボーイさんにチップば握らせた。いやいや、当ホテルでは…ち言いよるばってん、ボーイさんは出ていった。
「キャハハ、『おまえ、直美、おいしそうやね』、『あんた、お寿司にして正解やったね』やて。いやぁ、おもしろか!ボーイさん、夫婦やち信じたばい。ねぇねぇ、ほんとの夫婦になっちゃえばよかやん!」こ、小娘!小娘!小娘!「さぁ、食べよ!」
みんなお腹すいとったみたいやね。あっちゅう間になくなった。空き皿、どうしよう?部屋の外の廊下に出しとこうかしら?「ミキちゃん、お皿、廊下に片付けよ」
「はい、お姉さま」やれやれ。
片付け終わって、またソファに座った。
「さぁ、食欲は満ちたばいね、お姉さま?」ち言う。
「うん、お腹いっぱい」
「やったら、食欲の次は性欲やなかと?」
「ミキちゃん!」ち私も明彦も声ばそろえた。明彦が私の顔ば見た。顔が赤うなっとる。小娘め!
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げぇ~、小娘になんしよるん!彼も私の肩ば抱いとるやん!
「ほら、直美さん、『あんた』って言うてみぃ」なんちゅうことば言わせるんよ。
「ほんなら、明彦も『おまえ』とか言うてみぃ」
「練習するのか?」
「うん」
「…おまえ…」こいつ、アホちゃう?
「…あんた…」私もアホやん!
「お~、夫婦に見えるばい。大丈夫」
「ははは」と明彦が照れ笑いした。「おっとそうだ」と立ち上がって、冷蔵庫の上のアイスバケットとウイスキー、グラスば持ってきた。
「バーボンとスコッチを買ったんですよ。ワイルドターキー12年とグレンフィディック。これでいいかな?昨日もウィスキーだったしね」ち言う。
私はうんうんと頷いた。そうよねぇ、昨日の晩、小倉のうちの店に彼が来たんやけん。それが今は大阪。夜行バスで後ばつけてね。あ~あ。「まずは、バーボンで。トリプル、ロックでいいよね?」私はまたうんうんと頷いた。
「はい、乾杯」と明彦がグラスば上げる。私とミキちゃんがカチンとグラスば合わせた。あ~、うまか。喉ばバーボンが流れていく。ちょっと落ち着いたばってん、え?彼がなんのためらいもなく、また私の肩ば抱いとる。ボーイさんが来た時だけやなかと?ミキちゃんがニヤニヤして見とる。
ミキちゃんと今日行ったとこの話なんかした。
「国立国際美術館、よかったよ。世界の現代美術がメインで、誰やったっけ?ピカソとかアンディー・ウォーホルの作品があって、直美さんがマチエール?マチエールの話とか、構図の話ば説明してくれたと」ちミキが明彦に言う。
「へぇ~、直美、美術に詳しいの?」ち聞かれた。肩ば抱かれとって、か、顔が近か!
「うん、私、美大出とると」ち言う。
「直美さんは、美大の院卒やけんね、明彦」
「ほぉ、それがまたなんで、バーのママさんを?」
「美大やけん、就職も専門とは関係なかとこしかなかったと。それで、何年か勤めたばってん、上司のセクハラがひどくて辞めたとよ。それで、知り合いがあそこば経営しとったけん、なんとなくバーのママさんになったと。専門は絵画の鑑定やけど、それで就職先もなかしね」ち彼の顔ば…ち、近か!
「そりゃあ、もったいない。アトリエとかでも絵画鑑定はありそうだけどなあ。サザビーズなんかでも募集しているんじゃないですか?美術館でも?」あら、よう知っとるね?
「う~ん、もう、その道にはあんまり興味もなかしね。アラフォーばってん、誰か嫁にもらうてくれんかなぁ?ち思うとると」
「やったら、明彦がもろうたらよかっちゃなかと?直美さん!」こ、小娘!なんちゅうこと言いよると!お前、彼に抱かれたんやろ?それも今朝まで!
「あ、そうしましょうか?直美?」ち、なんちゅうことばこの男も!
「二人とも、何ば言いよるんよ…」顔が赤うなった。
タイミングよく(悪く?)、ドアチャイムが鳴った。お寿司が来たみたいやね。
ボーイさんがテキパキと料理ばテーブルに並べていく。お寿司はまとめてひと皿に並べてある。確かに部屋のテーブルは狭かもんね。
「おまえ、おいしそうだね」ち彼が肩ば抱いて言う。
「あんた、お寿司にして正解やったね。ねぇ、ミキ」おぉ、即興で私もうまいこと言うやん。
「お姉さま、私、お寿司、大好き!」お姉さま?お姉さま?
明彦がボーイさんにチップば握らせた。いやいや、当ホテルでは…ち言いよるばってん、ボーイさんは出ていった。
「キャハハ、『おまえ、直美、おいしそうやね』、『あんた、お寿司にして正解やったね』やて。いやぁ、おもしろか!ボーイさん、夫婦やち信じたばい。ねぇねぇ、ほんとの夫婦になっちゃえばよかやん!」こ、小娘!小娘!小娘!「さぁ、食べよ!」
みんなお腹すいとったみたいやね。あっちゅう間になくなった。空き皿、どうしよう?部屋の外の廊下に出しとこうかしら?「ミキちゃん、お皿、廊下に片付けよ」
「はい、お姉さま」やれやれ。
片付け終わって、またソファに座った。
「さぁ、食欲は満ちたばいね、お姉さま?」ち言う。
「うん、お腹いっぱい」
「やったら、食欲の次は性欲やなかと?」
「ミキちゃん!」ち私も明彦も声ばそろえた。明彦が私の顔ば見た。顔が赤うなっとる。小娘め!