第11話 大阪南港
ー/ー
フェリーの着く九時半まで、まだ四十分くらいあったけん、ウェイティングラウンジでコーヒーとシュークリームば買うた。プラスチックの蓋ばパカッと開けて、シュークリームの甘か匂いが漂う。(ミキちゃん、楽しそうやろね。でも、私が来てええんやろか?)とモヤモヤしたっちゃ。コーヒーの湯気がカップから立ち上る。私、こういう時、いつも考えんで動いてしまうタイプやもん。
あ~あ、来てしもうた。どげんしよ?「ミキちゃん、迎えに来たばい~」って練習してみた。「うん、ぎこちなかね」と自分で突っ込む。ほんに、ぎこちなか。「いやいや、ミキちゃんたちの予定もわからんのに、こんなん言うて、おじゃま虫やん」と呟いた。「毎回これやもんね。考えんで行動してしまうっちゃ」と苦笑いした。ラウンジの窓から海が見えて、波の音が遠くに聞こえる。
九時半、32分、35分、38分…時計ばっか見よる。あ!来た!ウェイティングラウンジの向こうの通路から、二人が来よる。手ぇつないどらんけん、ちょっと安心した。「そりゃそうよね。バッグとスーツケース持っとるのに、手ぇつなげるわけなかやん」と心の中で納得する。(安心したっちゃけど…ちょっと寂しかね。二人、仲良かやろな)と複雑やった。通路の蛍光灯がチカチカして、二人の影が揺れる。
向こうが私に気づいたみたい。そんで、私、つい「迎えに来たばい、ミキちゃん!」って言うてしもうた!あ!(あっちゃ~、勢いで言ったけど、やっぱおじゃまやろか?)と焦った。コーヒーカップ握る手が汗ばむ。
ミキちゃんが宮部さんに何か耳打ちしよる。「あ~あ、やっぱりおじゃま虫やなか?」と私が呟く。「ママ!びっくりした!どげんしたん?なんでここにおると?」とミキちゃんが目を丸くする。宮部さんはニコッと笑うけど、なんか照れとる。
あんたら、アレやったっちゃろ?二人ともニャンニャンしたっちゃろ?そら当たり前やけど…。
「いや、その、ミキちゃん、宮部さん、あのね、ミキちゃんがこっちで一人かもしれん、って思うて、迎えに…」って私がしどろもどろになった。(なんや、私、お節介すぎやね。ミキちゃんに嫌われたらどげんしよ)とオロオロした。シュークリームのクリームが指に付いて、慌てて拭く。
「ママ、迎えに来てくれてありがとう。宮部さんね、今日は打ち合わせなんやって。それで、五時過ぎに終わるけん、それからご飯食べよ、って言われたっちゃ。やけんね、ママ、今日は二人で大阪観光して、五時過ぎに宮部さんと合流しようや。お店、大丈夫?なんなら、私とこっちで泊まって、明日小倉に帰るっちゅうのは、どげん?」とミキちゃんが言う。
「いや、そげんねえ…でも、私、おじゃまみたいやけん、ちょっと回って、小倉に帰ろうかなと…」と私が言う。(ミキちゃん、気ぃ使ってくれとるけど、私、場違いやろか)と弱気になった。ラウンジの椅子が硬くて、落ち着かん。
「よかって、よかって、ママ。もしお店が大丈夫やったら、私の言うた予定でダメかな?」とミキちゃんがせがむ。「…お店は、今日くらい閉めても大丈夫っちゃけど…」と私が答える。(ミキちゃんの勢いに負けたっちゃ。おおらかに対応せんとね)と笑顔作った。
「じゃあ、そうしよ!ね?宮部さん、それでよか?」
「私は構わないよ」
「じゃ、決まり!宮部さん、さっきの場所で五時過ぎね!」
「あ、ああ…ママさん、じゃあ、夕方に、また」
「バイバイ~」と話が進む。
宮部さんが行ってしもうた。
「なんなん、これ?でも、私、おじゃまやなくて、一緒に楽しめるんやね。ミキちゃんの明るさに救われたっちゃ」とホッとした。
通路の喧騒が遠くに聞こえて、コーヒーが冷めとるのに気づいた。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
フェリーの着く九時半まで、まだ四十分くらいあったけん、ウェイティングラウンジでコーヒーとシュークリームば買うた。プラスチックの蓋ばパカッと開けて、シュークリームの甘か匂いが漂う。(ミキちゃん、楽しそうやろね。でも、私が来てええんやろか?)とモヤモヤしたっちゃ。コーヒーの湯気がカップから立ち上る。私、こういう時、いつも考えんで動いてしまうタイプやもん。
あ~あ、来てしもうた。どげんしよ?「ミキちゃん、迎えに来たばい~」って練習してみた。「うん、ぎこちなかね」と自分で突っ込む。ほんに、ぎこちなか。「いやいや、ミキちゃんたちの予定もわからんのに、こんなん言うて、おじゃま虫やん」と呟いた。「毎回これやもんね。考えんで行動してしまうっちゃ」と苦笑いした。ラウンジの窓から海が見えて、波の音が遠くに聞こえる。
九時半、32分、35分、38分…時計ばっか見よる。あ!来た!ウェイティングラウンジの向こうの通路から、二人が来よる。手ぇつないどらんけん、ちょっと安心した。「そりゃそうよね。バッグとスーツケース持っとるのに、手ぇつなげるわけなかやん」と心の中で納得する。(安心したっちゃけど…ちょっと寂しかね。二人、仲良かやろな)と複雑やった。通路の蛍光灯がチカチカして、二人の影が揺れる。
向こうが私に気づいたみたい。そんで、私、つい「迎えに来たばい、ミキちゃん!」って言うてしもうた!あ!(あっちゃ~、勢いで言ったけど、やっぱおじゃまやろか?)と焦った。コーヒーカップ握る手が汗ばむ。
ミキちゃんが宮部さんに何か耳打ちしよる。「あ~あ、やっぱりおじゃま虫やなか?」と私が呟く。「ママ!びっくりした!どげんしたん?なんでここにおると?」とミキちゃんが目を丸くする。宮部さんはニコッと笑うけど、なんか照れとる。
あんたら、アレやったっちゃろ?二人ともニャンニャンしたっちゃろ?そら当たり前やけど…。
「いや、その、ミキちゃん、宮部さん、あのね、ミキちゃんがこっちで一人かもしれん、って思うて、迎えに…」って私がしどろもどろになった。(なんや、私、お節介すぎやね。ミキちゃんに嫌われたらどげんしよ)とオロオロした。シュークリームのクリームが指に付いて、慌てて拭く。
「ママ、迎えに来てくれてありがとう。宮部さんね、今日は打ち合わせなんやって。それで、五時過ぎに終わるけん、それからご飯食べよ、って言われたっちゃ。やけんね、ママ、今日は二人で大阪観光して、五時過ぎに宮部さんと合流しようや。お店、大丈夫?なんなら、私とこっちで泊まって、明日小倉に帰るっちゅうのは、どげん?」とミキちゃんが言う。
「いや、そげんねえ…でも、私、おじゃまみたいやけん、ちょっと回って、小倉に帰ろうかなと…」と私が言う。(ミキちゃん、気ぃ使ってくれとるけど、私、場違いやろか)と弱気になった。ラウンジの椅子が硬くて、落ち着かん。
「よかって、よかって、ママ。もしお店が大丈夫やったら、私の言うた予定でダメかな?」とミキちゃんがせがむ。「…お店は、今日くらい閉めても大丈夫っちゃけど…」と私が答える。(ミキちゃんの勢いに負けたっちゃ。おおらかに対応せんとね)と笑顔作った。
「じゃあ、そうしよ!ね?宮部さん、それでよか?」
「私は構わないよ」
「じゃ、決まり!宮部さん、さっきの場所で五時過ぎね!」
「あ、ああ…ママさん、じゃあ、夕方に、また」
「バイバイ~」と話が進む。
宮部さんが行ってしもうた。
「なんなん、これ?でも、私、おじゃまやなくて、一緒に楽しめるんやね。ミキちゃんの明るさに救われたっちゃ」とホッとした。
通路の喧騒が遠くに聞こえて、コーヒーが冷めとるのに気づいた。