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第2話 フェリーの手配

ー/ー



 しばらく、スリランカの話をしていて、ミキちゃんが目を輝かせて聞いていた。

 あ、そうだ。フェリーの手配だった。私は思い出した。「ママさん、フェリー乗り場ってこの近く?」と聞く。

「フェリー乗り場?新門司港やなかと?ここからやったらタクシーで三十分くらいかかるばい。あんた、フェリーに乗るとね?」
「考えてるんだけど、新幹線で大阪まで行ってホテルに泊まるなら、フェリーで移動すれば、ゆっくりできるし、宿泊の心配もなくていいからね」

「お酒の注文と一緒で、理にかなっとうね」と言う。すると、ミキちゃんが「え~、フェリーやと?うち、一回も乗ったことなかとよ。ええなあ~」と私の顔を見て言った。

 私は、iPadをカバンから取り出して、新門司から大阪までのフェリー便を調べた。大阪の泉大津港まで運行している。九時出港?あらら、今は・・・七時半か。まだ間に合う。到着は明朝九時半。結構かかるもんだな、と思った。十二時間半の船旅だ。
 
 私のiPadを覗き込んでいたミキちゃんが「ええな、ええな~」と言った。

 私は部屋を調べながら「ふ~ん、スイートルームで、大人料金がニ万三千円ぐらい。新幹線とホテル代を考えると、ゆったりできる分安いよね?」と言った。

「ええなぁ~、連れてってほしか~」とミキちゃんが言う。ママが「ミキちゃん、お金もなかくせによー言うわ。エコノミーでも七千円くらいするっちゃないと?」と料金表を覗き込みながら言った。

「ミキちゃん、なんなら、このファースト往復、買ってあげようか?」とミキちゃんに聞いた。ファーストなら一万二千円くらい。往復でも二万四千円。二人で船旅も悪くないだろう。

「おじさんはどげんするん?」と言うので、「私はゆっくりしたいから、スイートルームにするけど・・・」
「え~、そしたら別々の部屋やん?」と言う。
「いや、ミキちゃん、今日会った見知らぬ男女が同じ部屋というわけにもいかないじゃないか?別室だけど、食事とか船の中を散策するのは一緒にできるよ」

 ママも「ミキちゃん、何ば言いよるとね?バカなこと言いなさんな」とミキちゃんをたしなめる。

「うち、おじさんとやったら、同じ部屋でもよかっちゃけどなぁ~。間違いが起こってもよかやん?うち、気にせんばい。おじさんとやったら、喜んで間違いしちゃるもん」とギョッとするようなことを言う。

「ミキちゃんね、キミは私のことを知らないでしょ?もしかしたら、殺人鬼かもしれないし、ど変態かもしれないんだよ?」と言った。

 すると、ミキちゃんは私の顔を覗き込んで「おじさん、殺人鬼なん?ど変態?船の中やん。密室やん?もし殺人鬼やったとしても、今日会うたばっかりの女の子ば殺してどげんすると?船の中で逃げ場なかとよ?ど変態やって、うちかてど変態かもしれんやん?性病だって持っとるかもしれんっちゃけど?」と畳み掛けて言う。

「まったく・・・ミキちゃんは発想がおかしかばい。それもね、うちかてミキちゃんみたいに自由やったら、同じようにねだっちゃうかもね・・・」なんてママまで変なことを言う。

「まあ、そのね、私は船賃なんか気にしないけど、どうにも、ひと回りくらい年の離れた初対面の女の子と一緒に部屋なんて・・・」
「あら?ちょっとしたパパ活でも数万円するっちゃし、パパ活と思ってくれてよかよ?おじさん」
「そんなことを言って・・・知らないよ、ミキちゃん、何が起こっても」
「大丈夫、おじさんに責任はなすりつけんけん。なんなら、スマホのボイスレコーダーに録音してもよかよ。証言するけん。ママも証人やけんね。うちは、おじさんに何されても・・・殺人はやめてよね・・・おじさんに責任ば取らせることはせんよ。けん、一緒に連れてって。ね?お願い」と私のiPadを取り上げて、フェリーのWeb予約のページをさっさと開いた。

「ハイ、どーぞ」とミキちゃんがiPadをカウンターの私の前に置いた。

 勝手に今日の日付を入力して、出発地到着地をタップしている。新門司でしょ・・・大阪南港・・・21:00発・・・09:30着・・・

「スイートね、スイート」と入力、二名、などとサイトを進める。クレカを強引に出さされた。クレカ番号、私の名前、同乗者の名前などを入力してしまう。確認ボタンが出る。「ハイ、おじさん、よかとね?」と彼女が確認ボタンを押してしまった。

 私とママが同時に「あ~あ、やっちゃった」と言う。ママが「ミキちゃん、私は何が起こっても知らんけんね」と宣言する。「このおじさんなら大丈夫っちゃ。心配せんでよかよ。ママ、証人やけんね」と言う。

「だけど、ミキちゃん、着替えとかどうするのさ?」と私が聞くと「うち、宿無しのプータローやけん。この近くの漫画喫茶に住んどるとよ。けん、いつも持ち物は持っとるっちゃ」と私が置いたスーツケースの横のボストンバッグを指差した。「やれやれ、都合よくできているものだな・・・」と私はため息をついた。

「おじさん、もう八時近かよ。ここば出らんと九時の出港に間に合わんばい」と言って「ママ、お勘定」と勝手に言う。「おじさん、タクシー呼ぶけんね。三十分かかるっちゃけん、はよはよ」

 仕方がない。私は観念した。私はママに名刺を渡した。

「ママさん、これが私の名刺。おかしなものじゃないけどね。何かあったら、スリランカのこのスマホの番号でも・・・ええっと、日本のスマホ番号は・・・」と名刺に日本のスマホ番号を書き入れた。

「今、かけてみて下さい」とママに電話をかけさせた。私のスマホが鳴った。「これでいい。間違いがないように注意するけど・・・保証しませんよ」と言うと、ママが「なんでこんなことになるっちゃろうか・・・まあ、しゃあなか。こうなった以上は楽しんできんしゃい。このバカ娘、煮るなり焼くなりしてもよかばい。あ~あ、こういう手がありなら、うちかてスイートルームに泊まりたかばい。このバカ娘!」とミキちゃんの頭をポカリと殴った。

「ママ、痛かよ。さって、タクシー、すぐ来るっちゃ。おじさん、行こうや。ママ、大阪から連絡するけんね。このおじさんが殺人鬼で殺されんかったらね」と言って、私のスーツケースをガラガラ引いて店を出てしまった。

「仕方ない。ママさん、行ってきますよ。まいったね」
「ご迷惑やろうばってん、よろしく頼むばい。悪か子やなかけん、それは安心しとって。行ってらっしゃい。気ばつけて」

 一階に降りるともうタクシーが来ていて、ミキちゃんのボストンバックと私のスーツケースを運転手がトランクにしまっているところだった。リアシートに座っているミキちゃんが「おじさん、乗って乗って。新門司港まで三十分やってさ。乗り遅れるばい」と言う。

 やれやれだ。どうなるのだろうか?


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 しばらく、スリランカの話をしていて、ミキちゃんが目を輝かせて聞いていた。
 あ、そうだ。フェリーの手配だった。私は思い出した。「ママさん、フェリー乗り場ってこの近く?」と聞く。
「フェリー乗り場?新門司港やなかと?ここからやったらタクシーで三十分くらいかかるばい。あんた、フェリーに乗るとね?」
「考えてるんだけど、新幹線で大阪まで行ってホテルに泊まるなら、フェリーで移動すれば、ゆっくりできるし、宿泊の心配もなくていいからね」
「お酒の注文と一緒で、理にかなっとうね」と言う。すると、ミキちゃんが「え~、フェリーやと?うち、一回も乗ったことなかとよ。ええなあ~」と私の顔を見て言った。
 私は、iPadをカバンから取り出して、新門司から大阪までのフェリー便を調べた。大阪の泉大津港まで運行している。九時出港?あらら、今は・・・七時半か。まだ間に合う。到着は明朝九時半。結構かかるもんだな、と思った。十二時間半の船旅だ。
 私のiPadを覗き込んでいたミキちゃんが「ええな、ええな~」と言った。
 私は部屋を調べながら「ふ~ん、スイートルームで、大人料金がニ万三千円ぐらい。新幹線とホテル代を考えると、ゆったりできる分安いよね?」と言った。
「ええなぁ~、連れてってほしか~」とミキちゃんが言う。ママが「ミキちゃん、お金もなかくせによー言うわ。エコノミーでも七千円くらいするっちゃないと?」と料金表を覗き込みながら言った。
「ミキちゃん、なんなら、このファースト往復、買ってあげようか?」とミキちゃんに聞いた。ファーストなら一万二千円くらい。往復でも二万四千円。二人で船旅も悪くないだろう。
「おじさんはどげんするん?」と言うので、「私はゆっくりしたいから、スイートルームにするけど・・・」
「え~、そしたら別々の部屋やん?」と言う。
「いや、ミキちゃん、今日会った見知らぬ男女が同じ部屋というわけにもいかないじゃないか?別室だけど、食事とか船の中を散策するのは一緒にできるよ」
 ママも「ミキちゃん、何ば言いよるとね?バカなこと言いなさんな」とミキちゃんをたしなめる。
「うち、おじさんとやったら、同じ部屋でもよかっちゃけどなぁ~。間違いが起こってもよかやん?うち、気にせんばい。おじさんとやったら、喜んで間違いしちゃるもん」とギョッとするようなことを言う。
「ミキちゃんね、キミは私のことを知らないでしょ?もしかしたら、殺人鬼かもしれないし、ど変態かもしれないんだよ?」と言った。
 すると、ミキちゃんは私の顔を覗き込んで「おじさん、殺人鬼なん?ど変態?船の中やん。密室やん?もし殺人鬼やったとしても、今日会うたばっかりの女の子ば殺してどげんすると?船の中で逃げ場なかとよ?ど変態やって、うちかてど変態かもしれんやん?性病だって持っとるかもしれんっちゃけど?」と畳み掛けて言う。
「まったく・・・ミキちゃんは発想がおかしかばい。それもね、うちかてミキちゃんみたいに自由やったら、同じようにねだっちゃうかもね・・・」なんてママまで変なことを言う。
「まあ、そのね、私は船賃なんか気にしないけど、どうにも、ひと回りくらい年の離れた初対面の女の子と一緒に部屋なんて・・・」
「あら?ちょっとしたパパ活でも数万円するっちゃし、パパ活と思ってくれてよかよ?おじさん」
「そんなことを言って・・・知らないよ、ミキちゃん、何が起こっても」
「大丈夫、おじさんに責任はなすりつけんけん。なんなら、スマホのボイスレコーダーに録音してもよかよ。証言するけん。ママも証人やけんね。うちは、おじさんに何されても・・・殺人はやめてよね・・・おじさんに責任ば取らせることはせんよ。けん、一緒に連れてって。ね?お願い」と私のiPadを取り上げて、フェリーのWeb予約のページをさっさと開いた。
「ハイ、どーぞ」とミキちゃんがiPadをカウンターの私の前に置いた。
 勝手に今日の日付を入力して、出発地到着地をタップしている。新門司でしょ・・・大阪南港・・・21:00発・・・09:30着・・・
「スイートね、スイート」と入力、二名、などとサイトを進める。クレカを強引に出さされた。クレカ番号、私の名前、同乗者の名前などを入力してしまう。確認ボタンが出る。「ハイ、おじさん、よかとね?」と彼女が確認ボタンを押してしまった。
 私とママが同時に「あ~あ、やっちゃった」と言う。ママが「ミキちゃん、私は何が起こっても知らんけんね」と宣言する。「このおじさんなら大丈夫っちゃ。心配せんでよかよ。ママ、証人やけんね」と言う。
「だけど、ミキちゃん、着替えとかどうするのさ?」と私が聞くと「うち、宿無しのプータローやけん。この近くの漫画喫茶に住んどるとよ。けん、いつも持ち物は持っとるっちゃ」と私が置いたスーツケースの横のボストンバッグを指差した。「やれやれ、都合よくできているものだな・・・」と私はため息をついた。
「おじさん、もう八時近かよ。ここば出らんと九時の出港に間に合わんばい」と言って「ママ、お勘定」と勝手に言う。「おじさん、タクシー呼ぶけんね。三十分かかるっちゃけん、はよはよ」
 仕方がない。私は観念した。私はママに名刺を渡した。
「ママさん、これが私の名刺。おかしなものじゃないけどね。何かあったら、スリランカのこのスマホの番号でも・・・ええっと、日本のスマホ番号は・・・」と名刺に日本のスマホ番号を書き入れた。
「今、かけてみて下さい」とママに電話をかけさせた。私のスマホが鳴った。「これでいい。間違いがないように注意するけど・・・保証しませんよ」と言うと、ママが「なんでこんなことになるっちゃろうか・・・まあ、しゃあなか。こうなった以上は楽しんできんしゃい。このバカ娘、煮るなり焼くなり《《抱くなり》》してもよかばい。あ~あ、こういう手がありなら、うちかてスイートルームに泊まりたかばい。このバカ娘!」とミキちゃんの頭をポカリと殴った。
「ママ、痛かよ。さって、タクシー、すぐ来るっちゃ。おじさん、行こうや。ママ、大阪から連絡するけんね。このおじさんが殺人鬼で殺されんかったらね」と言って、私のスーツケースをガラガラ引いて店を出てしまった。
「仕方ない。ママさん、行ってきますよ。まいったね」
「ご迷惑やろうばってん、よろしく頼むばい。悪か子やなかけん、それは安心しとって。行ってらっしゃい。気ばつけて」
 一階に降りるともうタクシーが来ていて、ミキちゃんのボストンバックと私のスーツケースを運転手がトランクにしまっているところだった。リアシートに座っているミキちゃんが「おじさん、乗って乗って。新門司港まで三十分やってさ。乗り遅れるばい」と言う。
 やれやれだ。どうなるのだろうか?