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第3話 新門司港第二ターミナルへ

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 タクシーの運転手さんが振り返って私に聞く。「お客さん、新門司港な、ターミナルがいくつかあるっちゃけど、どこ行きね?」と小倉弁で言うので、「大阪の南港行きですけど」と答えた。「ああ、だったら、第二だ」と運転手さんが頷き、車を発進させる。私は内心、「ターミナルが複数あるなんて知らなかった。旅慣れてるつもりでも、こういう細かいところで抜けてるな」と少し苦笑いした。計画的な自分が好きだけど、こういうハプニングも嫌いじゃない。

「運転手さん、第二ターミナルの手前でコンビニありますか?」と聞く。船旅を快適にするには準備が必要だ。
「新門司北一丁目のセブンイレブンがあるけど?」と運転手さんが答える。
「そこも寄って下さい。キャッシュ下ろさないと。ちょっと買い物も」と頼む。私は現金派じゃないけど、船の上では備えが必要だと頭が切り替わる。
「ああ、そやね、フェリーっちゃもんね。わかったっちゃ。出港時間は?」と運転手さんが確認する。
「九時ですが…」
「じゃあ、今、七時五十五分やけ、買い物は急ぎぃよ。時間あんまりなかよ」と少し急かす口調。私は内心、「ギリギリか…でも、このスリル、ちょっと楽しいな」と感じていた。旅の予定が綱渡りになる瞬間って、妙にテンションが上がる。

 右隣のミキちゃんが、運転手に気兼ねしたのか、私に小声で耳打ちしてきた。彼女の吐息が耳に当たって、少しくすぐったい。「おじさん、現金下ろすっち、何なん?うちに気ぃ使いよるんやったら、そげんせんでよかよ。船賃奢ってもろたっちゃけで、もう十分やけ。パパ活しよるんやなかっちゃけね!」と少し拗ねたように言う。ミキちゃんは内心、「おじさん、うちのために無理しよるとか思われたら嫌や。うち、気楽でいたいっちゃ」とちょっと不安だった。私は彼女の純粋さにほっこりした。

「ミキちゃん、違うよ。あのね、フェリーは海の上を航行するから、クレカが使えないらしいんだよ。だから、みんな現金決済。食事もドリンクも現金が必要なんだ。それと、お酒とつまみをコンビニで調達したいんだ。フェリーの売店は商品に限りがあるだろう?」と丁寧に説明する。私はこういう時、ちゃんと納得してもらいたいタイプだ。
「なんや、そげなことやったんか。わかったばい」とミキちゃんが頷く。彼女の表情がパッと明るくなって、内心、「おじさん、ほんと頭ええな。うち、安心したっちゃ」とホッとしていた。

「ミキちゃん、スイーツとかも買っちゃおうね。制限時間、五分で済まそうよ。食事はビュッフェが使えるはずだから、おつまみとお酒。私はまず現金を下ろすからね。遠慮しないで何でも買ってね。船内のレストランは閉まっちゃうだろうから、夕食も買おう」と提案する。私は旅の相棒には楽しんでほしいし、自分も楽しみたい。
「ええね!スイーツ大好きやけん、遠慮せんよ!」とミキちゃんが目を輝かせる。彼女は内心、「おじさん、太っ腹や!船でスイーツ食べれるなんて夢みたいやっちゃ」とウキウキしていた。

 運転手さんが道路右側のセブンイレブンに車をつけた。私は「運転手さん、五分で戻ります」と告げ、タクシーのドアが開くや否や、ミキちゃんと二人でダッシュした。店の蛍光灯が夜の暗さに映えて、私は内心、「時間との勝負だな。こういう緊張感、嫌いじゃない」と少しアドレナリンが出ていた。まずATMで十万円おろす。カードをスロットに差し込むと、現金がザラザラ出てくる感触が頼もしい。それから買い物かごを持って店内をグルッと回った。ミキちゃんは人差し指で陳列棚を指差しては、「これや!これも!」と次々かごに放り込んでいく。彼女の動きは子供みたいに無邪気で、私は「この子、ほんと楽しそうだな」と微笑ましくなる。

 私は酒の棚でビール、酎ハイ、ワイン、スコッチ、日本酒を迷わず選んだ。旅先での酒は必需品だ。さらに氷とカマンベールチーズも見つけて追加。夕食はどうしよう?寿司の二十貫パック、稲荷寿司の八貫入りパック、鰻のパックをかごに放り込む。私は内心、「男の買い物なんてこんなもんだ。効率重視でいこう」と満足していた。ミキちゃんが私を見て、「おじさん、終わったばい!」と声をかけてくる。彼女のかごにはスイーツが山盛りで、私は「さすがだな」と感心した。二人の買い物かごをキャッシャーに並べる。

 キャッシャーの女の子が商品をリーダーで次々と読み取っていく。まず私の籠:酒、氷、チーズ、寿司パック。次にミキちゃんのかご:きのこの山、ティラミス、カカオ90%チョコ、唐揚げ、おにぎり…そして、0.01mm時間遅延コンドーム、十個入り…。私は内心、「え、マジか?」と一瞬固まった。
「ミキちゃん、あのさ…」と声をかけると、彼女は平然と「おじさん、気にせんでよか。もしものためやけん。なかやったら困るやろ?それに、お互いの性病予防たい」とまたギョッとすることを言う。ミキちゃんは内心、「おじさん、びっくりしたやろ?うち、ちゃんと現実的やけん!」と少し得意げだった。私は「この子の発想、どこまで飛んでるんだ」と呆れつつ、笑いが込み上げてきた。

 店員さんが私たちのやり取りを聞いてニコッとしている。私は内心、「あ~あ、この子にどう思われてるんだろう。しょうもないおじさんとパパ活女子のコンビに見えるのかな」と少し恥ずかしくなる。でも、時間がない。仕方ない。私は「まあ、どう思われてもいいか」と開き直った。会計を済ませ、タクシーに戻る。きっちり五分だ。「すごかね。きっちり五分たい」と運転手さんが感心する。タクシーは左車線に戻り、第二ターミナルへ向かう。私は内心、「間に合った。計画通りだ」と少し誇らしかった。

 二人でハァハァ言いながら受付に着く。「あの、iPadで予約してるんですけど」と予約画面を見せると、「もう乗船して結構です、お急ぎ下さい」と言われた。メインのビルとコンコースの通路が長い。三百メートルはあるだろうか。ミキちゃんが「おじさん、荷物、任せて!」と私のスーツケースをガラガラ引っ張って駆けていく。私は内心、「ミキちゃん、馬力あるな。この子の体力、侮れない」と感心した。乗船口は四階。息を切らしながら追いかける。

 船内の受付でiPadの予約票を見せる。「ハイ、宮部様ですね」と受付の女の子が言う。私もミキちゃんもハァハァ言って言葉にならない。私は内心、「こんなに慌てるなんて久しぶりだ。でも、ちょっと楽しい」と感じていた。「お部屋は七階になります。階段かエレベーターをご利用下さい」と言われ、カードキーを二枚渡される。見回すと、最上階までの吹き抜けに螺旋階段があって、エレベーターの乗り口が正面にあった。

「ダメだ、ミキちゃん、エレベーターにしよう。息が続かないよ」と私が言うと、「賛成たい。うちもスーツケースとボストンバッグば引きずって、階段ば二階分も上がる元気なかばい。部屋にたどり着く前に心肺停止してしまうっちゃ」とミキちゃんが笑う。彼女は内心、「おじさんと一緒やけん、疲れても楽しいっちゃ」と少し息を整えながらニヤッとした。二人でエレベーターに乗り込む。私は「この子と一緒なら、何かあっても大丈夫そうだな」と安心感を覚えた。

 七階に着くと、階段の左右に男女の大浴場があった。ドリンクの自動販売機も見える。私たちのスイートルームはエレベーター横から艦首に伸びる廊下の左右にあった。部屋番号は003室。私はスーツケースを引きずりながら部屋にたどり着く。ドアノブの上に平たいスロットがあって、これがカードキーの挿入口だと分かった。私は内心、「こういう設備、合理的で好きだな」と満足しながらカードを差し込む。LEDライトがグリーンに変わり、ガチャッとドアロックがリリースされた。私は「やっと落ち着ける」とホッとしつつ、ミキちゃんとの船旅に少しワクワクしていた。


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 タクシーの運転手さんが振り返って私に聞く。「お客さん、新門司港な、ターミナルがいくつかあるっちゃけど、どこ行きね?」と小倉弁で言うので、「大阪の南港行きですけど」と答えた。「ああ、だったら、第二だ」と運転手さんが頷き、車を発進させる。私は内心、「ターミナルが複数あるなんて知らなかった。旅慣れてるつもりでも、こういう細かいところで抜けてるな」と少し苦笑いした。計画的な自分が好きだけど、こういうハプニングも嫌いじゃない。
「運転手さん、第二ターミナルの手前でコンビニありますか?」と聞く。船旅を快適にするには準備が必要だ。
「新門司北一丁目のセブンイレブンがあるけど?」と運転手さんが答える。
「そこも寄って下さい。キャッシュ下ろさないと。ちょっと買い物も」と頼む。私は現金派じゃないけど、船の上では備えが必要だと頭が切り替わる。
「ああ、そやね、フェリーっちゃもんね。わかったっちゃ。出港時間は?」と運転手さんが確認する。
「九時ですが…」
「じゃあ、今、七時五十五分やけ、買い物は急ぎぃよ。時間あんまりなかよ」と少し急かす口調。私は内心、「ギリギリか…でも、このスリル、ちょっと楽しいな」と感じていた。旅の予定が綱渡りになる瞬間って、妙にテンションが上がる。
 右隣のミキちゃんが、運転手に気兼ねしたのか、私に小声で耳打ちしてきた。彼女の吐息が耳に当たって、少しくすぐったい。「おじさん、現金下ろすっち、何なん?うちに気ぃ使いよるんやったら、そげんせんでよかよ。船賃奢ってもろたっちゃけで、もう十分やけ。パパ活しよるんやなかっちゃけね!」と少し拗ねたように言う。ミキちゃんは内心、「おじさん、うちのために無理しよるとか思われたら嫌や。うち、気楽でいたいっちゃ」とちょっと不安だった。私は彼女の純粋さにほっこりした。
「ミキちゃん、違うよ。あのね、フェリーは海の上を航行するから、クレカが使えないらしいんだよ。だから、みんな現金決済。食事もドリンクも現金が必要なんだ。それと、お酒とつまみをコンビニで調達したいんだ。フェリーの売店は商品に限りがあるだろう?」と丁寧に説明する。私はこういう時、ちゃんと納得してもらいたいタイプだ。
「なんや、そげなことやったんか。わかったばい」とミキちゃんが頷く。彼女の表情がパッと明るくなって、内心、「おじさん、ほんと頭ええな。うち、安心したっちゃ」とホッとしていた。
「ミキちゃん、スイーツとかも買っちゃおうね。制限時間、五分で済まそうよ。食事はビュッフェが使えるはずだから、おつまみとお酒。私はまず現金を下ろすからね。遠慮しないで何でも買ってね。船内のレストランは閉まっちゃうだろうから、夕食も買おう」と提案する。私は旅の相棒には楽しんでほしいし、自分も楽しみたい。
「ええね!スイーツ大好きやけん、遠慮せんよ!」とミキちゃんが目を輝かせる。彼女は内心、「おじさん、太っ腹や!船でスイーツ食べれるなんて夢みたいやっちゃ」とウキウキしていた。
 運転手さんが道路右側のセブンイレブンに車をつけた。私は「運転手さん、五分で戻ります」と告げ、タクシーのドアが開くや否や、ミキちゃんと二人でダッシュした。店の蛍光灯が夜の暗さに映えて、私は内心、「時間との勝負だな。こういう緊張感、嫌いじゃない」と少しアドレナリンが出ていた。まずATMで十万円おろす。カードをスロットに差し込むと、現金がザラザラ出てくる感触が頼もしい。それから買い物かごを持って店内をグルッと回った。ミキちゃんは人差し指で陳列棚を指差しては、「これや!これも!」と次々かごに放り込んでいく。彼女の動きは子供みたいに無邪気で、私は「この子、ほんと楽しそうだな」と微笑ましくなる。
 私は酒の棚でビール、酎ハイ、ワイン、スコッチ、日本酒を迷わず選んだ。旅先での酒は必需品だ。さらに氷とカマンベールチーズも見つけて追加。夕食はどうしよう?寿司の二十貫パック、稲荷寿司の八貫入りパック、鰻のパックをかごに放り込む。私は内心、「男の買い物なんてこんなもんだ。効率重視でいこう」と満足していた。ミキちゃんが私を見て、「おじさん、終わったばい!」と声をかけてくる。彼女のかごにはスイーツが山盛りで、私は「さすがだな」と感心した。二人の買い物かごをキャッシャーに並べる。
 キャッシャーの女の子が商品をリーダーで次々と読み取っていく。まず私の籠:酒、氷、チーズ、寿司パック。次にミキちゃんのかご:きのこの山、ティラミス、カカオ90%チョコ、唐揚げ、おにぎり…そして、0.01mm時間遅延コンドーム、十個入り…。私は内心、「え、マジか?」と一瞬固まった。
「ミキちゃん、あのさ…」と声をかけると、彼女は平然と「おじさん、気にせんでよか。もしものためやけん。なかやったら困るやろ?それに、お互いの性病予防たい」とまたギョッとすることを言う。ミキちゃんは内心、「おじさん、びっくりしたやろ?うち、ちゃんと現実的やけん!」と少し得意げだった。私は「この子の発想、どこまで飛んでるんだ」と呆れつつ、笑いが込み上げてきた。
 店員さんが私たちのやり取りを聞いてニコッとしている。私は内心、「あ~あ、この子にどう思われてるんだろう。しょうもないおじさんとパパ活女子のコンビに見えるのかな」と少し恥ずかしくなる。でも、時間がない。仕方ない。私は「まあ、どう思われてもいいか」と開き直った。会計を済ませ、タクシーに戻る。きっちり五分だ。「すごかね。きっちり五分たい」と運転手さんが感心する。タクシーは左車線に戻り、第二ターミナルへ向かう。私は内心、「間に合った。計画通りだ」と少し誇らしかった。
 二人でハァハァ言いながら受付に着く。「あの、iPadで予約してるんですけど」と予約画面を見せると、「もう乗船して結構です、お急ぎ下さい」と言われた。メインのビルとコンコースの通路が長い。三百メートルはあるだろうか。ミキちゃんが「おじさん、荷物、任せて!」と私のスーツケースをガラガラ引っ張って駆けていく。私は内心、「ミキちゃん、馬力あるな。この子の体力、侮れない」と感心した。乗船口は四階。息を切らしながら追いかける。
 船内の受付でiPadの予約票を見せる。「ハイ、宮部様ですね」と受付の女の子が言う。私もミキちゃんもハァハァ言って言葉にならない。私は内心、「こんなに慌てるなんて久しぶりだ。でも、ちょっと楽しい」と感じていた。「お部屋は七階になります。階段かエレベーターをご利用下さい」と言われ、カードキーを二枚渡される。見回すと、最上階までの吹き抜けに螺旋階段があって、エレベーターの乗り口が正面にあった。
「ダメだ、ミキちゃん、エレベーターにしよう。息が続かないよ」と私が言うと、「賛成たい。うちもスーツケースとボストンバッグば引きずって、階段ば二階分も上がる元気なかばい。部屋にたどり着く前に心肺停止してしまうっちゃ」とミキちゃんが笑う。彼女は内心、「おじさんと一緒やけん、疲れても楽しいっちゃ」と少し息を整えながらニヤッとした。二人でエレベーターに乗り込む。私は「この子と一緒なら、何かあっても大丈夫そうだな」と安心感を覚えた。
 七階に着くと、階段の左右に男女の大浴場があった。ドリンクの自動販売機も見える。私たちのスイートルームはエレベーター横から艦首に伸びる廊下の左右にあった。部屋番号は003室。私はスーツケースを引きずりながら部屋にたどり着く。ドアノブの上に平たいスロットがあって、これがカードキーの挿入口だと分かった。私は内心、「こういう設備、合理的で好きだな」と満足しながらカードを差し込む。LEDライトがグリーンに変わり、ガチャッとドアロックがリリースされた。私は「やっと落ち着ける」とホッとしつつ、ミキちゃんとの船旅に少しワクワクしていた。