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【4】③

ー/ー



「あの……」
『佐原さん。私は来月で四十になるんだ。君とはダブルスコア、いやそれ以上だよね?』
 やはり上坂には伝わっている。亜沙美の想いが。そして、傷つけないように遠回しに断ってくれている、のだろう。
 大人なら、敢えて言葉にはしない行間を読んで引くべきだ。わかっているのにできない。もう十九なのに。

 ──まだ、十九だから。

「ダブルです! 私もあと二か月で二十歳ですから。そうしたらちょうど倍で、その後は倍率は小さくなる一方なんですよ!」
 年齢差は一生涯変わらないけれど。
 まるで聞き分けのない子どものような亜沙美の理屈に、電話の向こうで微かに笑う気配がした。

『……わかった。ただし会うだけだよ。平日は大抵遅いから週末でもいいかな? どこかのカフェででも』
「もちろんです。私は本当にいつでもいいので、支店長のご都合のよろしいときに。あの、もしできたら番号か何か──」
『じゃあ、とりあえずメッセージアプリのIDでいいいかな? 言うよ?』
 プライベートの連絡先が知りたい、と切り出した亜沙美に、上坂はあっさりと教えてくれた。

「ありがとうございます! それでは、ご都合のいい日時をこちらで送ってくださいますか?」
『そうするよ。……え!? ああ、はい。佐原さん、ちょっと仕事が』
「切ってください!」
 メモしたIDを、通話を終えたスマートフォンに登録する。
 これで『何か』が始まるなどと本気で期待するほど夢見てはいない。最初で最後でも構わなかった。

 来月で四十歳。
 つまり誕生日なのだ。何か贈りたい、捨てられてもいいから。

 単なる自己満足に過ぎない行為だとしても、この想いを形にしたかった。
 彼と二人で逢える。

 ──もう、それだけでいい。

  ~END~



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「あの……」
『佐原さん。私は来月で四十になるんだ。君とはダブルスコア、いやそれ以上だよね?』
 やはり上坂には伝わっている。亜沙美の想いが。そして、傷つけないように遠回しに断ってくれている、のだろう。
 大人なら、敢えて言葉にはしない行間を読んで引くべきだ。わかっているのにできない。もう十九なのに。
 ──まだ、十九だから。
「ダブルです! 私もあと二か月で二十歳ですから。そうしたらちょうど倍で、その後は倍率は小さくなる一方なんですよ!」
 年齢差は一生涯変わらないけれど。
 まるで聞き分けのない子どものような亜沙美の理屈に、電話の向こうで微かに笑う気配がした。
『……わかった。ただし会うだけだよ。平日は大抵遅いから週末でもいいかな? どこかのカフェででも』
「もちろんです。私は本当にいつでもいいので、支店長のご都合のよろしいときに。あの、もしできたら番号か何か──」
『じゃあ、とりあえずメッセージアプリのIDでいいいかな? 言うよ?』
 プライベートの連絡先が知りたい、と切り出した亜沙美に、上坂はあっさりと教えてくれた。
「ありがとうございます! それでは、ご都合のいい日時をこちらで送ってくださいますか?」
『そうするよ。……え!? ああ、はい。佐原さん、ちょっと仕事が』
「切ってください!」
 メモしたIDを、通話を終えたスマートフォンに登録する。
 これで『何か』が始まるなどと本気で期待するほど夢見てはいない。最初で最後でも構わなかった。
 来月で四十歳。
 つまり誕生日なのだ。何か贈りたい、捨てられてもいいから。
 単なる自己満足に過ぎない行為だとしても、この想いを形にしたかった。
 彼と二人で逢える。
 ──もう、それだけでいい。
  ~END~