「そうね、じゃあ煎茶。乃愛はお水と麦茶どっち?」
「ココアは?」
「金平糖とココアは合わないでしょー」
二人の会話を背中で聞きながら、急須と茶葉を取り出した。
卓哉も志乃も、結構『お茶』が好きなのだ。どちらもコーヒーが苦手という共通点もある。
好きとはいえ本格的とは程遠いので、結局「煎茶と紅茶」程度の話ではあるのだが。それでも、日本茶用の急須と紅茶用のティーポットは常にキッチンの棚にある。
急須と湯呑み、乃愛用には結局水を入れたコップ。
加えて金平糖を入れる小皿を載せたトレイを、妻と娘が待つダイニングテーブルに置く。
「あー、ありがとうパパ。……じゃあ一個ずつ、ね」
志乃が、慎重な手つきで開けたパッケージから金平糖を三つ小皿に出した。
いったい何が始まるのだ。そこまで大層なことなのか、たかが土産の小さな菓子に。
確かにそう思いつつも、背後にキラキラしたエフェクトが見えそうな二人の姿に、卓哉は思わず涙ぐみそうになって慌てて表情を引き締めた。
三十代も半ばを過ぎた今にして実感する。気ままな独身だった十年前には想像もつかなかった、小さな幸せ。
──小さい、けれど何よりも大切な、家族三人の平和なひととき。
~END~