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3頭目 甥っ子は小学生

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「おじさーん、ただいまぁ!」
 あれから数年後、ミノタウルスもとい牛郎は小学生になった。退院日に謎の言葉を発して歩いたものの、それ以降は立ち上がることすらなく普通の乳児として育った。牛頭は相変わらずだけど。
「おじさん、牛乳もらうね!」
 そうそう、牛郎は乳製品が大好きだ。特に牛乳が大のお気に入りで、生産者である俺としては嬉しい限り。
「牛郎、あんまり飲みすぎるなよ?」
 牛郎が牛乳をグビグビ飲むのは心地良いものだが、ある程度は制御をかけておいた方が良いだろう。確か、牛乳の飲み過ぎはビタミンの吸収を阻害するらしいからなぁ。
「おじさんの牛乳、とっても美味しい!」
 よせよせ、そんなに褒めたら伯父さんは調子乗っちゃうぞ? だが、こういう言葉をもらえると生産者として、俄然やる気になれるってもんだ!
「次はココアを入れて味変っと!」
 牛郎は純真無垢に見えるが、こう見えて悲しい境遇を持っていたりする。
 それは、牛郎が3歳頃の話だったと思う。母親であるみのりが、突如失踪したのである。
 みのりが失踪する直前に『永遠の命を探しに行く』という意味慎重な言葉を残していたことは、今でも鮮明に記憶している。だが、その真意は俺も分かりかねるところだ。
「……おじさん、どうかしたの?」
 俺が物思いに耽っているのを不思議に思ったのか、牛郎はこちらをじっと見つめている。
「いいや、何でもない」
 俺はとりあえず笑って誤魔化した。まぁ、みのりはそのうち帰ってくるだろう。牛郎のためにも、今はそう信じたい。
「もしかしておじさん、馬面な事を悩んでいるんだね? 大丈夫、馬面でもお嫁さんはきっと来てくれるから!」
 確かに俺は馬面を長年悩んでいるが、牛顔のお前が言うな! と言うより、それと俺が独身な事を同列に扱うな!! まったく、ガキのくせに生意気な事を言うなぁ。
「おじさん、早くお嫁さんが欲しいなぁ! ヒヒーン!!」
 こう言う時は決まって、馬面をネタに適当なボケをかましておく。正直、皮肉を言えるくらいの心の余裕はあるようなので、今のところ牛郎に心配はないと思っている。
「おじさん、面白ーいっ! アハハ!!」
 それに、俺は牛郎の純真な笑顔に癒されている節もある。そう言う意味で、俺にとって牛郎は息子同然に可愛く思えてくるんだ。
「おじさん、人参あげるね!」
 そんな事を思っていた矢先、牛郎は無垢な笑顔で生の人参を俺の眼前に差し出してきた。すまない、前言撤回。


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「おじさーん、ただいまぁ!」 あれから数年後、ミノタウルスもとい牛郎は小学生になった。退院日に謎の言葉を発して歩いたものの、それ以降は立ち上がることすらなく普通の乳児として育った。牛頭は相変わらずだけど。
「おじさん、牛乳もらうね!」
 そうそう、牛郎は乳製品が大好きだ。特に牛乳が大のお気に入りで、生産者である俺としては嬉しい限り。
「牛郎、あんまり飲みすぎるなよ?」
 牛郎が牛乳をグビグビ飲むのは心地良いものだが、ある程度は制御をかけておいた方が良いだろう。確か、牛乳の飲み過ぎはビタミンの吸収を阻害するらしいからなぁ。
「おじさんの牛乳、とっても美味しい!」
 よせよせ、そんなに褒めたら伯父さんは調子乗っちゃうぞ? だが、こういう言葉をもらえると生産者として、俄然やる気になれるってもんだ!
「次はココアを入れて味変っと!」
 牛郎は純真無垢に見えるが、こう見えて悲しい境遇を持っていたりする。
 それは、牛郎が3歳頃の話だったと思う。母親であるみのりが、突如失踪したのである。
 みのりが失踪する直前に『永遠の命を探しに行く』という意味慎重な言葉を残していたことは、今でも鮮明に記憶している。だが、その真意は俺も分かりかねるところだ。
「……おじさん、どうかしたの?」
 俺が物思いに耽っているのを不思議に思ったのか、牛郎はこちらをじっと見つめている。
「いいや、何でもない」
 俺はとりあえず笑って誤魔化した。まぁ、みのりはそのうち帰ってくるだろう。牛郎のためにも、今はそう信じたい。
「もしかしておじさん、馬面な事を悩んでいるんだね? 大丈夫、馬面でもお嫁さんはきっと来てくれるから!」
 確かに俺は馬面を長年悩んでいるが、牛顔のお前が言うな! と言うより、それと俺が独身な事を同列に扱うな!! まったく、ガキのくせに生意気な事を言うなぁ。
「おじさん、早くお嫁さんが欲しいなぁ! ヒヒーン!!」
 こう言う時は決まって、馬面をネタに適当なボケをかましておく。正直、皮肉を言えるくらいの心の余裕はあるようなので、今のところ牛郎に心配はないと思っている。
「おじさん、面白ーいっ! アハハ!!」
 それに、俺は牛郎の純真な笑顔に癒されている節もある。そう言う意味で、俺にとって牛郎は息子同然に可愛く思えてくるんだ。
「おじさん、人参あげるね!」
 そんな事を思っていた矢先、牛郎は無垢な笑顔で生の人参を俺の眼前に差し出してきた。すまない、前言撤回。