大好きな旦那様に、愛の契りを

ー/ー



この想いはリアムだから芽生えた。

種族の壁は二人の間に最初から存在しなかった。

ルーナの愛の告白に、リアムはしばらく黙り込む。

「しっかり捕まってろ」

リアムは背中にルーナをのせると、騎士たちの静止を無視して空へと飛びあがる。

風を切る速さにルーナはワクワクしながらリアムにしがみつく。

父王の前に着地すると、父は真っ青な顔をして飛び出してきた。

「ルーナ! 頭を冷やせ! 戻ってくるんだ!」

「いいえ! 私は戻りません!」

父王の叫びにルーナは腹の底からハツラツとした声で叫ぶ。

「旦那様を愛してるんです! だからこの結婚は私が望んだことなのです!」

「なにを……」

「今は許していただけなくても、私は諦めません! 父上と母上のように心から愛し合う夫婦となってみせます!」

ルーナを含め、7人の姫君を産んだのち亡くなった母。

父の深く悲しむ姿を鮮明に覚えている。

母の身分はもともと男爵令嬢であり、王妃となるには低い身分だったが、その壁を乗り越え愛し合う二人に強く憧れた。

今はそれに負けないほどにリアムと愛し合えると確信を持っていた。

「今まで育ててくださって、愛してくださりありがとうございました!」

「ルーナ……」

「会いに行きます。姫たちに旦那様を紹介させてくださいね」

いつ叶うかはわからない。

一生認めてもらえない可能性もある。

認めてもらえないままに逃げ出すことはずるいのかもしれない。

「帰りましょう、旦那様」

「あぁ」

それでも愛する心は決して恥じるものではないのだから。

悲しくてやりきれない気持ちはあれど、前を向いて生きていたい。

「泣いてもいい」

雪の降りだす灰色の空を飛んでいると、リアムが淡いやさしさで寄り添ってくれる。

「何度だって会いに行こう。家族なのだから」

「旦那様」

「王女を嫁にと願ったのは、オレを魔獣として扱った人間への当てつけだった」

それは人々に恐れられる魔獣・フェンリルとしての嘆き。

心は人と変わりないのに、世界の悪を押しつけられた。

戦争で牙を振るい、多くの血の匂いをこびりつかせる。

魔獣と何ら変わりない現実に、王女を奪い取った後も葛藤は消えなかった。

「ルーナに出会い、そんな幼稚さもどこかへいった。人の営みが、家族という輪が、うらやましかった」

今はその戒めもない。

魔獣としての枷はいらないと、リアムはただの男として生きると決めた。

こんな愛に満ちた行動に、ルーナはリアムに嫁いだ歓びに震えだす。

「私に穴埋めさせてください。もう寂しい想いなんてさせませんから」

「このどうしようもない願い、叶えてくれるか? オレは、ルーナと共に生きたい」

「はいっ! もちろんですわ!」

愛してますとリアムの耳元でささやき、気持ちがあふれ出して耳を食む。

諦めの悪さはルーナの長所だ。

リアムの耳を食むのは癖になりそうだと、ルーナははじめて己のフェチを知るのだった。

***

アイスノ王国にて、人と獣が交わったことで新しい種族が誕生する。

森で暮らす種族であったが、王家との関わりは強く、定期的に交流を深めていた。

国の滅亡を象徴する獣が、人間の妻を前に甘く惚気る姿は国民を驚かせる。

こうしてアイスノ王国に生まれし姫君と巨大な狼は結ばれ、幸せに暮らすのだった。

【完】


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この想いはリアムだから芽生えた。
種族の壁は二人の間に最初から存在しなかった。
ルーナの愛の告白に、リアムはしばらく黙り込む。
「しっかり捕まってろ」
リアムは背中にルーナをのせると、騎士たちの静止を無視して空へと飛びあがる。
風を切る速さにルーナはワクワクしながらリアムにしがみつく。
父王の前に着地すると、父は真っ青な顔をして飛び出してきた。
「ルーナ! 頭を冷やせ! 戻ってくるんだ!」
「いいえ! 私は戻りません!」
父王の叫びにルーナは腹の底からハツラツとした声で叫ぶ。
「旦那様を愛してるんです! だからこの結婚は私が望んだことなのです!」
「なにを……」
「今は許していただけなくても、私は諦めません! 父上と母上のように心から愛し合う夫婦となってみせます!」
ルーナを含め、7人の姫君を産んだのち亡くなった母。
父の深く悲しむ姿を鮮明に覚えている。
母の身分はもともと男爵令嬢であり、王妃となるには低い身分だったが、その壁を乗り越え愛し合う二人に強く憧れた。
今はそれに負けないほどにリアムと愛し合えると確信を持っていた。
「今まで育ててくださって、愛してくださりありがとうございました!」
「ルーナ……」
「会いに行きます。姫たちに旦那様を紹介させてくださいね」
いつ叶うかはわからない。
一生認めてもらえない可能性もある。
認めてもらえないままに逃げ出すことはずるいのかもしれない。
「帰りましょう、旦那様」
「あぁ」
それでも愛する心は決して恥じるものではないのだから。
悲しくてやりきれない気持ちはあれど、前を向いて生きていたい。
「泣いてもいい」
雪の降りだす灰色の空を飛んでいると、リアムが淡いやさしさで寄り添ってくれる。
「何度だって会いに行こう。家族なのだから」
「旦那様」
「王女を嫁にと願ったのは、オレを魔獣として扱った人間への当てつけだった」
それは人々に恐れられる魔獣・フェンリルとしての嘆き。
心は人と変わりないのに、世界の悪を押しつけられた。
戦争で牙を振るい、多くの血の匂いをこびりつかせる。
魔獣と何ら変わりない現実に、王女を奪い取った後も葛藤は消えなかった。
「ルーナに出会い、そんな幼稚さもどこかへいった。人の営みが、家族という輪が、うらやましかった」
今はその戒めもない。
魔獣としての枷はいらないと、リアムはただの男として生きると決めた。
こんな愛に満ちた行動に、ルーナはリアムに嫁いだ歓びに震えだす。
「私に穴埋めさせてください。もう寂しい想いなんてさせませんから」
「このどうしようもない願い、叶えてくれるか? オレは、ルーナと共に生きたい」
「はいっ! もちろんですわ!」
愛してますとリアムの耳元でささやき、気持ちがあふれ出して耳を食む。
諦めの悪さはルーナの長所だ。
リアムの耳を食むのは癖になりそうだと、ルーナははじめて己のフェチを知るのだった。
***
アイスノ王国にて、人と獣が交わったことで新しい種族が誕生する。
森で暮らす種族であったが、王家との関わりは強く、定期的に交流を深めていた。
国の滅亡を象徴する獣が、人間の妻を前に甘く惚気る姿は国民を驚かせる。
こうしてアイスノ王国に生まれし姫君と巨大な狼は結ばれ、幸せに暮らすのだった。
【完】