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翌朝、常盤は行きつけの花屋にて、桜の好きだったひまわりと線香を買って、あの墓地に戻った。
頭上は朗らかな上天気だった。
まるで、昨日の惨事が嘘のようだな、と常盤は思う。夜の間に憎んでいた相手が消えて、滞っていた日々の続きが始まったような気がした。
「あの廃屋、常世に続く噂あり、馬鹿にしていた男が消えた。あいつの最期を詠むなら、こんな感じかな」
花筒に新しい向日葵を生けながら、常盤は呟き、笑う。木戸が行方不明になったことも、友を貶めたことも、常盤は露ほども気にしていない。
因果応報という言葉があるように、人がよい行いをすればよいことがあるように、悪い行いをすれば悪い報いがあると信じているからだ。
常盤が鼻歌混じりに線香を供え、手を合わせているところでポケットが振動した。スマホを取り出して確認すると、画面には千景の名前が表示されている。
『復讐は上手くいったかい? よければ私にも、彼の最期の短歌を聞かせてくれないか』
返事を打つ常盤の後ろで、向日葵がさやさやと風に歌っていた。
(終)