SHOOT3! 「月下の慟哭!!」
ー/ー「ここは……」
目を覚ましたら、見覚えのない白い天井が広がっていた。あれ……おれは……?
「……痛っで!!!!!!」
両手がものすごく痛ぇ!!……でもその痛みで思いだした。そうだった。俺はあのロン毛との戦いで……
「……ぶっ倒れちまったんだな」
あのあとどうやら病院に運ばれたみたいだ。両手が包帯でぐるぐる巻きにされていた。
「まいったなぁ……じいちゃんになんて説明すりゃいいんだ……あれ?……てか……ん!?」
俺はとんでもないことに気づいて途端に青くなる。
「相棒!! 相棒はどこだ!!!」
俺の相棒・エアロドラゴンの姿が見当たらないんだ!!
「もしかして、まだ店の中に!!? いや誰かが拾って盗んだり!!!?」
最悪の想像が俺の頭をよぎり、どんどん気持ちが落ち着かなくなる。しかし俺がそう騒ぎだしたタイミングで病室のドアが開いた。
「なんじゃ元気そうじゃな? 心配して損したわい」
「だれだ!!? って……じいちゃん!!」
声の主は俺のじいちゃん、神風疾風(かみかぜはやて)だった。
「な、なんだよ? なんでここに?」
「お前が運ばれたと聞いてのう?」
「見舞いに来てくれたってわけか……?」
「まぁそういうことじゃ。しかし見舞いに来たのはわしだけではないぞ? ほれ」
そういうと、じいちゃんは身体を逸らし、後ろからゾロゾロと何人かが入ってきた。
「お前ら!!」
茜や宙斗だけじゃなく、今日知り合ったばかりの将兵衛やゴムゾーのおっさんまでいやがる。
「どうしたんだよ? みんな揃って」
「どうしたじゃないわよ!!! このバカ!!」
開口一番、茜に怒鳴られて俺は肩をすくめた。
「な。なんだよ……。いきなり怒鳴るんじゃねぇよ……」
「茜さんが怒鳴るのも無理ないですよ……。あんな無茶して……運ばれた時ほんとにすごかったんですからね?」
宙斗もすこし怒ってるみてぇだ……。そんなにダメだったかな……?どう二人に声をかけたもんかと迷っていたら将兵衛が口を開いた。
「まぁ仕方あるまい……。二人ともお主のことを心底から心配しておったのよ……」
「そうなのか……?」
「まぁいきなり倒れよったからなお主は……。だが……だが……!!!」
将兵衛は言いながら徐々に顔を真っ赤にし、それから涙を流し始めた。
「お、おい……?」
「……すまぬ!! もとはと言えば拙者の責任……!! そんなに手をボロボロにさせてしまって……!!! 本当にすまぬ!!!!」
そう号泣しながら将兵衛は俺に頭を下げ続ける。
「お、おい!!? べつにお前のせいじゃねぇからよ!! 気にすんなって!!」
「すまぬ!! すまぬ!!!!」 将兵衛は大声で泣きながら頭を下げ続ける……。別にこいつが悪いわけじゃねぇのに……。
「そうよ! 悪いのは勝手に挑んで、勝手に無茶して、勝手に倒れたこいつじゃない!! 将兵衛さんは悪くないわ!!」
横から茜が怒鳴りながら口を挟んできた。いや、確かに茜の言う通りかもしれねぇけど、そう実際に言われるとなんか頭くるな……。俺はなにか言い返してやろうと茜の方に向き直る。
「あのな! なんかもうちょっと言い方ってもんがあるだろうが!あか……ね……?」
しかし茜も将兵衛同様、顔を真っ赤にして目に涙をためていた……。
「言い方なんて知らないわよ!! いい!!? 二度とこんな大けがするような無茶しないで!!!」
そう叫ぶと茜はとなりに立つ将兵衛のようにわんわん泣き出し
「そうですよ!! ぼくはこんな翔ちゃんを見たくて……ショップに誘ったんじゃ……ありません!!!」
そう叫んだ宙斗も泣き出しちまった……。な、なんだこの状況……? どしたらいいんだ!?
「き、君たち……気持ちはわかるけど一応病院なんだから……」
さすがにうるさすぎたのか、ゴムゾーのおっさんが制止する……が……
「「「うわああああん!!!」」」
声が届いていないのか、それとも止めたくても止められないのか……3人とも一切泣き止む気配がない。
「やれやれ……同じ病室に患者さんがいなくてよかった……というべきか……」
おっさんはヒゲをさすりながら苦笑してそう呟くと、俺の方に真剣な表情をして向き直った。
「まぁとはいえ……だ……!……私も君に謝らねばな」
そう言うと突然、頭をがばっと下げた……!
「君が氷を無理に砕こうとした時点で、無理やりにでも試合を止めるべきだった……すまない……! 翔くん……!!」
「い、いやいやいや!!! だからそれこそ俺が勝手にやったことで……!」「違うんだ……! 店のオーナーとして……いや、大人として君を止めるべきだったのに……! 結局こうさせてしまったのは私の責任だ……!!」
「だ、だからそんな謝らなくたっていいってば! 大体おっさんが悪いわけじゃねぇし……! 悪いのは……そう! あんなルール悪用してるロン毛だろ!?」
「いや、悪いのはそのルールとやらを作った組織じゃな」
今まで黙ってこっちを見てただけだったじいちゃんが、急に口を挟んできて、俺とおっさんはおもわずきょとんとしてそっちの方を見つめる。
「……じいちゃん? 組織って世界なんちゃらとかいうやつか? てか、なんでじいちゃんがそんなの知ってるんだよ?」
じいちゃんは俺の質問を無視して、ゴムゾーのおっさんに話しかけた。
「ワシが離れてる間に、やっぱりそんなことになっちまったか……ゴム坊……」
「疾風さん……。はい、あれからあなたの予想した通りになってしまいました……」
おっさんとじいちゃんはなんか二人にしかわからない話をしてる……てかなんだ?この二人知り合いだったのか……?
「な、なあじいちゃ」
「よし! じゃあそろそろ帰るとするか! 翔! 帰りの支度をしておけ! ゴム坊! 一緒に受付いくからちょっと付き合え!」
突然じいちゃんは大きな声でとんでもないことを告げた!正気かこのじじい!?
「か、帰りの支度!!? 何言ってんだよじいちゃん!!」
まだ全然痛ぇし、腕中包帯だらけだし、さすがに入院だと思っていたから、そんなこと言われて俺の声は思わず裏返っちまった。
「疾風さん!? このケガではいくらなんでもさすがに……!」
さすがゴムゾーのおっさんはまともだ……!そのとおりなんだよじいちゃん!ちゃんと治療させてくれ……!
「何言っとる? この程度家かえって飯食ったら治るわい。なぁ翔?」
いや全然だめだわこのジジイ!なにそんなつばつけときゃ治るみたいな前時代的なこと言ってんだよ!!
「いやいやいや!? さすがに飯食うだけじゃ治ったりしねぇって……常識的に考えろって」
しかしじいちゃんはそんな俺をちらっと見るとニヤリと笑ってこう言った。
「今日の夕飯が焼肉でもか?」
「よし退院だ!!」
「ちょっと翔くん!?」
焼肉なら大丈夫!明日になったら爪も何もかも元通りだ!!多分!!……でも俺が二つ返事でOKを出したから、おっさんはびっくりちまったみてぇだな……?マジかこいつら、みたいな目で俺とじいちゃんを交互にみてやがる。
「というわけじゃ。ほれ! ゴム坊ついてこい!」
「え!? あ……は、はい!」
じいちゃんは振り返ることなくそのまま病室を出て行き、ゴムゾーのおっさんも慌ててその後を付いていった。と思ったら……
「ああ、そうだそうだ! 忘れてた!!」
おっさんが慌てて病室に戻ってきた。
「どしたんだよ? おっさん」
「この子をちゃんと、君に返しておかないとと思ってね……」
「……?」
おっさんは肩にかけたカバンから何かの袋を取りだす。なんだろうと思ってみているとその袋を俺に差し出した。
「ほら、開けてごらん」
「ん? ……あ!相棒」
おれは袋からすぐに相棒を取り出し、手のひらに乗せてその姿を確認する。する。
「スゲー! ピカピカだ!!」
あんなにやられたのにそんなのなかったみたいにピカピカの新品みたいになってやがる!!
「ふふふ、修理しておいたよ。君同様その子もボロボロになっていたからね」
「うぉぉぉぉありがてぇ!! ……って、ん? なんだろ? こんなんあったっけ?」
相棒の尻のところ、つまりデコピンを当てる位置にジェット機の噴射口みたいな突起が付いていたことだ。突起は正面からみると、噴射口の穴にあたる部分がボコっとくぼんでいる。
「これは?」
「ああ、そのお尻についているパーツは[インパクトスラスター]……。消しバト用のカスタマイズパーツだ。今回の件の迷惑料として受け取ってくれ」
相棒は二つの翼の間にそのなんとかってパーツがついて、めちゃくちゃかっこよくなってやがる!
「まじかよ!! ありがとよおっさん!!」
お礼を言うとおっさんは気恥ずかしそうに頭を掻きながら優しく笑った。
「いやいや……礼を言わなければならないのはこちらの方だ。本当にありがとう……!」
なんかこう改まってお礼を言われると照れるな……。俺は鼻の頭をこすりながらへへっと笑う。
「あ、そういえばさ……このパーツどう使うんだ?」
「あーうん! それはね……」
「お~い!! 早く戻ってこんかぁゴム坊~!! 年寄を待たせるなぁ!!」
「は~い!! ……ごめん!! ちょっと行ってくるね!」
「え!? あ! ちょっと!!」
じいちゃんに呼ばれたおっさんは慌てて部屋を出て行っちまった。どうやらおっさんは相当じいちゃんに弱いみたいだ。しょうがねぇ!宙斗にでもきくか……って
「「「うわああああん!!!」」」
さっきから3人でずっと泣きっぱなしじゃねぇか!!てかよくずっと泣いてられるな!?逆にすげぇよこいつら!!
「あ~もう!! お前らいつまで泣いてんだよ!!? 帰るってよ!! 早く支度しようぜ!! な!!!」
「「「うわああああん!!!!」」」
……結局、それからじいちゃんたちが戻ってくる直前までこいつらはずっと泣き続けていた。
―― 焼肉なんかで治るわけないだろう!と制止する医者のを振り切り病院を出て、3人を家まで送り届け、俺はじいちゃんと二人で帰路についた。まぁようやく二人になったし、今度こそはぐらかさずに話を聞かせてくれるだろう……と俺はさっき気になったことを聞いてみることにした。
「なぁ、じいちゃんとゴムゾーのおっさんて知り合いだったんだな? どういう知り合いなんだ?」
「ん? まぁ昔いろいろとな」
「なんだよそれ……。じゃあなんで消しバトのルールを決めた組織のこととか知ってたんだ?」
「ん? まぁいろいろとな」
「色々ばっかじゃねぇか! さっきから!!」
俺が怒り出すとじいちゃんは小さく笑った。そして
「いつかわかるときがくる……。お前さんの相棒とともに戦っている限りはいつかな」
なんて言いやがった。だからいつかっていつなんだよ……! 全くあの仮面のおっさんといい、じいちゃんといいなんなんだ!
「まぁしかし」
「あん?」
「お前が消しバトを始めたとは知らんかったわい」
「え? あ、そういや話してなかったっけ」
「まぁどっちでもいいがな……。いちいちお前さんがどんな遊びをはじめようが……」
「……て、そうだよ!! 相棒……あのエアロドラゴンはなんなんだ!!? こいつには何か秘密があるのか!? ただの入学祝いじゃなったのかよ!?」 しかし、じいちゃんは俺の質問には答えないでずんずんと前へ進んでいく。気が付いたらもう家の目の前まで来ていた。
「さて!! 焼肉の支度でもしようかの! 飯食ったら早く寝られるように風呂入っとけ!」
そう言ってじいちゃんは玄関の扉の鍵を開ける。
「お、おい!!」
呼び止めてもとまることなく扉を開けてなかに入っていく。しかし、靴を脱いで家に上がるとその場で立ち止まった。
「すべての謎を知りたくば、ただただ強くなれ……相棒とともに……!」
背中越しにそれだけいうと、リビングへと向かった。
「なんだってんだ……くそ……!」
取り残された俺はそう毒づいて自分の部屋へと戻ると、そのまま身体を投げ出してベッドに寝転がった。それから……
「……相棒」
俺はポケットから相棒を取り出し、その姿をじっと見つめる。
―君に劣らず、その子もボロボロになっていたからねぇ
ふと頭の中に病院でのおっさんの言葉がよみがえった。
そうだ……俺のせいで……俺が弱いせいで相棒は……やられちまったんだ……。
「ごめんな……相棒……」
手の平の相棒に向けてそう小さく呟く。そして……
「負けたんだな……俺……。……へ……へへ」
あのロン毛の姿が浮かび、そう口に出した途端、なんだか笑いがこみ上げてきた。でも一方で……涙が勝手に溢れて溢れて、止まらなくなっちまった……。
「……へへへ……なにが……何が俺に任せろだ……!何が俺がぶっ潰すだ!!」
笑いはどんどん怒りへと変わっていく……!!
「くそ!!!!! くそ!!!!!!! くそぉ!!!!!!!!!!!!」
俺は泣き叫んだ……!悔しくて悔しくて! 相棒に申し訳なくって!! 信じてくれたみんなにも申し訳なくって!!! でもなによりも!!!!
情 け な い 自 分 自 身 が 本 当 に 許 せ な く て!!!!!!!
「うあああああああああああああああああああああ!!!!」
____
それから翔は一週間近く学校を休むことになる。手の痛みの激しさからろくにものを持ったりにぎったりなどができなかったからだ。
そう!あたりまえだが焼肉を食べた程度では手の治療につながりなどはしなかったのである!
……ただ、その期間に人知れずとんでもない事件が起きていた、というのを読者諸兄には語らねばならない……。
これから語られる話は、翔が学校に再び登校するその前日の夜、翔たちの住む町のとある路地裏で起きた出来事である……。
ドゴーン!!というすさまじい音とともに夜の街の静寂が打ち破られた。
「うわああああああ!!」
おそらく直前までバトルをしていたのだろう……。衝撃のあまり吹き飛ばされ、地に伏せる一人の少年……。
いや、よく見れば一人だけではない……!!その背後には同じように倒れている少年たちの姿があった!その数はおそらく50を下らないだろう……。
「こ、こんなに強いなんて……ば、ばけもの……」
少年たちの誰かがそう呟く。
無数に倒れる少年たちの前には消しバト用の長方形のバトルステージが立っている。そのことからバトルの結果、皆何者かに敗れこうなったのだろう。
しかし、相当な衝撃に耐え続けたのかそのステージもすでに少年達同様ボロボロだった。
「くくく……弱い……弱すぎるのう……! まるで消しカスじゃあ……」
そんな様を見下ろしながら路地裏に差し込む月光を背に、カランコロンと下駄の音を響かせながら、ゆっくりと近づく大きな男の影が一つ……。男の身体はとてつもなく大きい。その威容を一言で形容するのであれば……「山」だ。それほどの巨体で、それほどの迫力をもっていた。
男はその声に失望の色を乗せて、目の前で死屍累々と倒れる少年たちに向けて怒鳴った。
「全く失望させてくれるな!! この町のバトラーは皆この程度なのか!?」
「あ……うう……」
少年の一人がなにかを言い返そうとするが、ダメージの大きさからか声がろくに出ない。
「まぁいい……。では約束どおり……頂こうかのう……!」
男はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、屈みこみ、少年たちの懐から何かを奪い取っていく。一体何だろうか……?
「あ、や……やめ……」
路地裏に差し込む月明かりがそれを映す。それは少年たちにとって命よりも大事な相棒の姿だった。
「か、かえ……せ……」
少年たちは声を絞りだそうとするがそれもむなしく、男は歯牙にもかけていないようだ。
「ふん! 敗者が勝者に何かを言う権利などありはせんわ」
そう吐き捨てると、男は少年達からあらかた奪いとった戦利品を背負ったカバンに放り込むと少年たちに背を向けて、月明かりの方へ歩き出す。
「準備運動にもならんかったが……本当にいるのかのう? あの氷咲響也に認めさせたバトラーというのは……! ……まあよい。見つからんのならこの町からも根こそぎバトラーを狩ってやるのみよ! この不動山弁慶と……我輩のミョウオウがな!!」
バトルステージから巨大な物体を拾い上げるながら男はそう叫ぶ。その瞬間、役目を終えたバトルステージは粉々に砕け散った。
「べ、べんけい……? あの四天王……の……!」
いまだ地に伏したままの少年の一人がその名を聞いて驚愕する。同時に深い後悔に襲われた。かなうはずのない相手からの勝負を受け、相棒を失った己への後悔に……。
「く……そ……。」
絶望の中、少年達は意識を失った。
そんな敗者のことなど振り返ることもなく、男は羽織った学ランを風になびかせ、大きな下駄の音を響かせながら夜の闇へと消えていく。その右手に消しゴム……と呼ぶにはあまりにも巨大な物体「ミョウオウ」を携えて……。
みんなのリアクション
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