203X年 10月17日 金曜日 19:47
「さて今日も飲むか!!」
イェェェェイ フゥゥゥゥゥ 石神さんかっこいい!! ステキ~
俺は高級クラブで悦に浸っていた
それもそのはず…俺が作ったAIが大手企業とタイアップすることが決まったからだ
その契約金はなんと10億!! これに使用料も入って来るからもうウハウハだぜ!!
さらにさらに~公開したAIの有料版の契約数が何と5000万人を超えたんだ!
毎日増えていく預金口座を見るのが楽しくて仕方ないぜ!!
「今夜は俺が出すからジャンジャン飲んでくれ!!」
ははっ俺は勝ち組になったんだ!
金も名誉も女も…好きなだけ手に入れてやる!!
………
うえっぷ…飲みすぎたかな
俺が家に帰ると玄関前に警察が来ていた
警察は俺を見つけると近づいてきた
「石神真さんですね。警視庁の|紫藤《しどう》と申します」
警視庁の紫藤さんは俺に警察手帳を見せながらそう言った
警視庁?そんな人間が俺に何のようだ?
「石神さんに著作権法違反|幇助《ほうじょ》及び名誉棄損幇助の疑いが持たれています。署までご同行願えますか?」
著作権法違反の疑い?それに名誉毀損?どういうことだ?
俺はちゃんと引用されるようにしていたはず…
俺は心当たりが無かったが紫藤さんの圧に負け一緒に署に向かった
…………
「それではいくつか質問させて頂いてもよろしいですか?」
「はい…ですが何が何だかわからなくって」
「ええ、ですのでこれからの質問に嘘偽りなく答えて頂ければ結構です」
俺は質問に答える事にした
「まず最初の確認ですが、クライターというAIを作ったのは貴方で間違いないですね?」
「はい、私が作りました」
「では、そのクライターの引用機能についての質問です。この引用機能が表示することのある論文…こちらは何処から情報を得ているのですか?」
「それは基本的には論文を掲載するサイトからです。新聞記事の場合もありますが」
「なるほど、ではその引用元を使う際に引用元を表示せずAIに書かせることができると言うことを貴方は知っていましたか?」
……知っていた。ああ、俺は知っていたさ
何せこのAIを公開して少し経った頃、SNS上で引用元をAIに表示しないように命令できるって書き込みが話題になったからな
「知っていました…ですがその事に関して私は引用元を記載してほしいとSNSで発信したはずです!」
「はい、それは知っています。知っていましたので確認させて頂きました」
「なっ…」
「では次の質問です。このAIに引用元を外せないようにするようプログラムを書き換える事はできなかったのですか?」
「…できました」
「何故貴方はそれをしなかったのですか?」
それは…
「答えられないのですか?」
「いえ…引用元が記載されなくても実害がないだろうと思っていました」
やろうと思えばできたさ。けど面倒だと思っちまったんだよ!!
「そうですか…では次の質問です。この方をご存じですか?」
そう言って俺の前に出された写真には良くテレビで見る芸能人が写っていた
「はい、テレビで何度か見たことがあります」
「そうですか、では今この方が週刊誌と名誉毀損で争っている事はご存じないですか?」
「…知らなかったです」
週刊誌と芸能人が争うことに何の関係があるんだ?
「実は今回名誉毀損で争われている記事…貴方のAIを使って書かれた記事でして」
「…そりゃそんな使い方をする人もいるかもしれませんが私には関係ないですよねっ」
俺は言葉強く紫藤さんに言ってしまった
「実はその記事を書いた人が、【俺は悪くない!AIが書いたんだ。俺はこの芸能人についての記事を書いてくれって頼んだらこの記事が出てきたんだ!!】と主張しておられまして…そこでお伺いしたいのですが、AIに誹謗中傷を含んだ記事を書かせる事は可能ですか?」
俺は何を言われているのか分からず言葉が出なかった
…少しの間部屋を沈黙が包んだ
「可能か可能じゃないかで言いますと可能です。このAIは条件を細かく指定すればそういった記事も書けます」
「そうですか…では同じ質問になりますがどうしてそう言った事をできなくしなかったのですか?」
「…文章の自由度を上げるためにそう言った制限を入れたく無かったからです」
「そうですか、わかりました」
…再度部屋を沈黙が包んだ
俺の頭の中は色々な出来事で思考が纏まらず、酔いはとっくの昔に冷めていた
「今日はありがとうございました。もしかするとまたお呼びすることがあるかもしれませんがその時はご協力お願い致します」
「…わかりました」
こうして俺は帰路に就いた
そして月日は流れ…裁判所の法廷内で取り乱した俺は一度退席し落ち着くまで休憩となった
法廷内に戻ると裁判官は落ち着いた声で判決内容の理由を述べた
「なお本件についてこのように判断したのは、制作者は著作権法違反や名誉毀損について認識している点もあり、また過去にこうした制限を設けなかった事で起こった事件がある事からこれに対して対処をしていないのは重大な過失と言わざるを得ない。しかし技術自体は価値中立的でありこの行為自体が犯罪行為となりかねないような幇助犯の成立範囲の拡大も妥当ではない」
こうして俺の裁判は終わった
徹底的に戦おうと思ったが弁護士から止められた
これ以上の法の解釈の違いで争っても判断が変わることが無いだろうとの事だった
俺はこの件で決まっていたタイアップ企画が白紙になり、修正版をリリースしたがSNSが発達した情報社会…悪評はすでに広がっており敬遠する人が増えたのと、大手会社が似たようなサービスを展開したため徐々に使用者が減っていた
元居た会社?もちろんこんな社員は雇えないとクビになったよ
あれだけ稼いだ金も違約金と裁判費用、集団訴訟されたその慰謝料の支払いで殆ど消えた
周りの人間?皆居なくなったよ。いやこの技術欲しさに声をかけてきた人はいたけどな
皆俺の金と技術しか見てなかったと知ったんだ…人間不信にもなるさ
こうして俺はほとんど失ってしまった
何でこうなったんだろうな…いやもう遅いか
そんな俺に残ったのは俺が作ったこのAI
自虐的になった俺は今回の事をAIに書かせようとした
そうだな…タイトルは「作者の罪」なんてどうだ?
文才が無いが技術は持ち合わせていた研究者
その研究者がAIを作って1つの物語を書き、その話が大ヒットする
それを自分の才能だと思い、傲慢な研究者は文才が無い人を憐れんでAIを公開する
文才がある人もこのAIを使うようになり次第に研究者の作品は読まれなくなる
そして才能を勘違いしていた研究者は後悔するがもう元には戻れず、自分が書きたかったものは他の人が自分の作ったAIで書く…そんな話
…ピコンッ できた 投稿するか カタカタカタ
ピンッ 良いね1件 コメント1件
投稿してすぐ、コメントと良いねが付いた
コメント だから言ったろ転職しろって
届いたコメントを読んだ時…俺は涙が止まらなくなった
カタカタカタ ははっそうだったな あの時は怒って悪かった ありがとう
俺はコメントに返事をするとパソコンをそっと閉じ、全ての機械の電源を落とした
久々に部屋に訪れた静寂と暗闇が今の俺には心地よかった
「転職すっか」