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ー/ー 三日前、自宅の風呂場で千紗は手首を切った。
学校には風邪で通しているが、夜中、救急車のサイレンに起こされた俺はそれを知っている。大騒ぎしたものの、たいした傷ではなかった。しかし家に戻ってきた千紗は、虚ろな瞳のまま。起きているのか寝ているのか分からない状態だった。
憂鬱だったテスト期間が終わった。結果は散々だろうが、とりあえず解放された。追試が確定するまでの、つかの間の休息だ。
俺は自室に寝ころがり、ぼんやりと天井を見ていた。撮りためていたビデオを見るつもりだったのだが、どうにも気分が乗らなかった。
「将行!」
窓の外から声がした。
俺は弾かれたように飛び起き、力任せにガラス戸を開け放つ。
そこに、千紗がいた。
通りに面した門から俺を見上げ、大きく手を振っていた。綺麗に切りそろえられた黒髪が、肩口で飛び跳ねるように踊っていた。
玄関に向かって走りながら、俺は千紗にかける言葉を考える。
よう? おかえり? 一緒に追試、受けようぜ……?
扉を開き、心なしか緊張した面持ちの千紗を目にした瞬間、急に目頭が熱くなった。
しまった、と思ったときには遅かった。
目を丸くした千紗が、こちらを見つめている。
「……神様の飴――――」
千紗が小さく呟いた。
「――――見つけた……」
そう言ってから、千紗は俺の顔の赤さに気づいたのか、取り繕うように慌てて続けた。
「俺様の飴、だっけ……?」
おどけた言葉とは裏腹に、声が震えていた。千紗の瞳からもまた、神様の飴がぽろりぽろりとこぼれ落ちていた。
「おうよ! 俺様の飴だ! 神様の飴なんぞより、よっぽど高価だぞ!」
そっぽを向きながら俺は言った。
右の耳たぶに届いた息遣いから、千紗の破顔が伝わってくる。
俺は乱暴に顔を拭うと、千紗の元へと駆けていった。
眩しい陽の光に、地に落ちた雨粒たちは蒸発し、澄み渡った青空へと還っていく――。
~了~
学校には風邪で通しているが、夜中、救急車のサイレンに起こされた俺はそれを知っている。大騒ぎしたものの、たいした傷ではなかった。しかし家に戻ってきた千紗は、虚ろな瞳のまま。起きているのか寝ているのか分からない状態だった。
憂鬱だったテスト期間が終わった。結果は散々だろうが、とりあえず解放された。追試が確定するまでの、つかの間の休息だ。
俺は自室に寝ころがり、ぼんやりと天井を見ていた。撮りためていたビデオを見るつもりだったのだが、どうにも気分が乗らなかった。
「将行!」
窓の外から声がした。
俺は弾かれたように飛び起き、力任せにガラス戸を開け放つ。
そこに、千紗がいた。
通りに面した門から俺を見上げ、大きく手を振っていた。綺麗に切りそろえられた黒髪が、肩口で飛び跳ねるように踊っていた。
玄関に向かって走りながら、俺は千紗にかける言葉を考える。
よう? おかえり? 一緒に追試、受けようぜ……?
扉を開き、心なしか緊張した面持ちの千紗を目にした瞬間、急に目頭が熱くなった。
しまった、と思ったときには遅かった。
目を丸くした千紗が、こちらを見つめている。
「……神様の飴――――」
千紗が小さく呟いた。
「――――見つけた……」
そう言ってから、千紗は俺の顔の赤さに気づいたのか、取り繕うように慌てて続けた。
「俺様の飴、だっけ……?」
おどけた言葉とは裏腹に、声が震えていた。千紗の瞳からもまた、神様の飴がぽろりぽろりとこぼれ落ちていた。
「おうよ! 俺様の飴だ! 神様の飴なんぞより、よっぽど高価だぞ!」
そっぽを向きながら俺は言った。
右の耳たぶに届いた息遣いから、千紗の破顔が伝わってくる。
俺は乱暴に顔を拭うと、千紗の元へと駆けていった。
眩しい陽の光に、地に落ちた雨粒たちは蒸発し、澄み渡った青空へと還っていく――。
~了~
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