商談34 珍獣の道
ー/ー
俺は枝豆をつまみながら馬の歩道を進んでいく。しかしながら、それは名ばかりで肝心の馬は1頭たりとも見かけない。本当にここは馬の歩道なのだろうか?
『ワオーーーン!!』
茂みの奥から遠吠えが聞こえる。今時は保健所の監視が厳しいから、野犬を見かけることは基本的に珍しい。そういえば、近年の動物愛護法改正によって犬猫は子供の頃に首元にマイクロチップを仕込まれるそうだ。人間のマイナンバーもそうだが、何もかもが国家に管理される社会というのは実に息苦しい。
茂みの隙間から僅かに野犬の姿が垣間見える。一見するとイヌに見えなくもないが......心なしか牙は大きいし、何より目つきがキツイ。何だか野性味に溢れた野犬だなぁ。
そんなことを思っていると、いつしか潮風が吹いていることに気付いた。きっと海が近いのだろう。俺は心の赴くままに潮風の吹く方へ歩みを進めた。
『アオッ! アオッ!』
そこは断崖絶壁の磯辺。声の主は対岸にいるアザラシだろうか? かつてアザラシは東京の護摩川に出没したことがある。愛くるしい見た目からそいつは人気を博して『ゴマちゃん』と命名され、特別住民票を交付されたほどだ。しかし、ゴマちゃんは忽然と姿を消していつしか住民たちにも忘れ去られた。そういう意味で、人間は実に身勝手な生き物だと俺は思う。
けれど、アザラシにしてはやけに細身なんだよなぁ?? 対岸にはウミウもいるようだが、そいつも何だか見た目が変な気がする。ずんぐりむっくり体型だし、言うなればペンギンもどきと言い表した方がいいかもしれない。馬の歩道、何だか変な生き物ばかりだなぁ??
そうか! これだけ珍しい生き物がたくさんいる場所だ、きっと変わった魚が食いつくかもしれない!! そう思った俺は、岸壁の僅かな足場を頼りに岸辺へ降りることにした。
ここは磯だけあって波が激しい。だが、俺の革靴はトレッキングシューズと同等のグリップ力を誇っている。この程度の岩場では滑ることもないだろう。
俺はいつも通りにタックルを取り出し、釣りの態勢を整える。今回のルアーは秋子が俺の誕生日に買ってくれた『ぬまふくろうルアー』だ。秋子が言うには『24時間冬樹を見守る』ルアーだそうだ。秋子は俺の浮気を疑っているのだろうが、俺は一途だから心配ない。大丈夫だ。
正直言うと、ぬまふくろうルアーはあまりに奇抜で魚から警戒されやすい。何でかって? ルアーの表面は緑色にきらめくコーティングが施されているんだ。これじゃあまともな魚は怪しんで食いつくはずもない。こういうルアーはここが使いどころだ。
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『ワオーーーン!!』
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そんなことを思っていると、いつしか潮風が吹いていることに気付いた。きっと海が近いのだろう。俺は心の赴くままに潮風の吹く方へ歩みを進めた。
『アオッ! アオッ!』
そこは断崖絶壁の磯辺。声の主は対岸にいるアザラシだろうか? かつてアザラシは東京の護摩川に出没したことがある。愛くるしい見た目からそいつは人気を博して『ゴマちゃん』と命名され、特別住民票を交付されたほどだ。しかし、ゴマちゃんは忽然と姿を消していつしか住民たちにも忘れ去られた。そういう意味で、人間は実に身勝手な生き物だと俺は思う。
けれど、アザラシにしてはやけに細身なんだよなぁ?? 対岸にはウミウもいるようだが、そいつも何だか見た目が変な気がする。ずんぐりむっくり体型だし、言うなればペンギンもどきと言い表した方がいいかもしれない。馬の歩道、何だか変な生き物ばかりだなぁ??
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俺はいつも通りにタックルを取り出し、釣りの態勢を整える。今回のルアーは秋子が俺の誕生日に買ってくれた『ぬまふくろうルアー』だ。秋子が言うには『24時間冬樹を見守る』ルアーだそうだ。秋子は俺の浮気を疑っているのだろうが、俺は一途だから心配ない。大丈夫だ。
正直言うと、ぬまふくろうルアーはあまりに奇抜で魚から警戒されやすい。何でかって? ルアーの表面は緑色にきらめくコーティングが施されているんだ。これじゃあまともな魚は怪しんで食いつくはずもない。こういうルアーはここが使いどころだ。