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【5】

ー/ー



 一人暮らしの部屋に戻って来て、床に鞄を放り出す。

「……おかあさん」
 今になって涙が出て来た。あとから、あとから、止まんない。
 何故この部屋を借りてくれたのか。何故姉ちゃんは一人暮らしじゃないのか。
 俺の思い込みは、全部事実とは逆だった。
 お母さんは、とにかく俺を追い出したかったんだ。一緒に居たくなかったんだ。

 だけど。お父さんに似た俺を愛せなかったとしても、お母さんは俺につらく当たったりはしなかった。
 姉ちゃんと、悪い意味で差を付けられたとも思ってない。いまも思ってない。それは間違いないんだ。
 たとえ『興味がない』からだとしても。

 でも俺は、お母さんが好きなんだよ。……愛して欲しかった。俺も。
 無理ならせめて、憎んでくれた方がよかった。その方がお母さんの中に俺が居る、から。
 お母さんは、俺も、お父さんも、自分の中から消去(デリート)したんだ。感情ごと全部。

 俺の甘かった子ども時代は、今日で終わった。決別(adieu)

 ──これからは、ひとり。

  ~END~



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 一人暮らしの部屋に戻って来て、床に鞄を放り出す。
「……おかあさん」
 今になって涙が出て来た。あとから、あとから、止まんない。
 何故この部屋を借りてくれたのか。何故姉ちゃんは一人暮らしじゃないのか。
 俺の思い込みは、全部事実とは逆だった。
 お母さんは、とにかく俺を追い出したかったんだ。一緒に居たくなかったんだ。
 だけど。お父さんに似た俺を愛せなかったとしても、お母さんは俺につらく当たったりはしなかった。
 姉ちゃんと、悪い意味で差を付けられたとも思ってない。いまも思ってない。それは間違いないんだ。
 たとえ『興味がない』からだとしても。
 でも俺は、お母さんが好きなんだよ。……愛して欲しかった。俺も。
 無理ならせめて、憎んでくれた方がよかった。その方がお母さんの中に俺が居る、から。
 お母さんは、俺も、お父さんも、自分の中から|消去《デリート》したんだ。感情ごと全部。
 俺の甘かった子ども時代は、今日で終わった。|決別《adieu》。
 ──これからは、ひとり。
  ~END~