一人暮らしの部屋に戻って来て、床に鞄を放り出す。
「……おかあさん」
今になって涙が出て来た。あとから、あとから、止まんない。
何故この部屋を借りてくれたのか。何故姉ちゃんは一人暮らしじゃないのか。
俺の思い込みは、全部事実とは逆だった。
お母さんは、とにかく俺を追い出したかったんだ。一緒に居たくなかったんだ。
だけど。お父さんに似た俺を愛せなかったとしても、お母さんは俺につらく当たったりはしなかった。
姉ちゃんと、悪い意味で差を付けられたとも思ってない。いまも思ってない。それは間違いないんだ。
たとえ『興味がない』からだとしても。
でも俺は、お母さんが好きなんだよ。……愛して欲しかった。俺も。
無理ならせめて、憎んでくれた方がよかった。その方がお母さんの中に俺が居る、から。
お母さんは、俺も、お父さんも、自分の中から
消去したんだ。感情ごと全部。
俺の甘かった子ども時代は、今日で終わった。
決別。
──これからは、ひとり。
~END~