商談32 馬の歩道......?
ー/ー
俺が次に目覚めた時には、鬱蒼とした雑木林が生い茂る山林にいた。周囲は深い霧がかかっていて景色も霞んでいる。おかしいなぁ......俺はさっきまで沼袋にいたはずだが??
『カァーッ、カァーッ』
樹上でカラスが物寂しげに鳴いている。雑木林の割に生命は感じられず、さながらあの世と言っても過言ではない。
そういえば、秋子は以前『カラスは神の使いと言われていて、あの世とこの世を行き来している』と言っていた。だとしたら、あのカラスはきっと死神か何かなんだろうな。カラスが嫌われ者になるのも納得がいく。
「ほはえはん、はひほひほはい?」
俺が物思いに耽っていると、なにやら爺さんが話しかけてきた。爺さんは歯がないのか、発音が聞き取りづらく何を言ってるのか分かりにくい。何となく『旅の人かい?』と言っているような気はする。
「いいや? 爺さん、ここは一体どこなんだ?」
俺は沼袋で島津と杯を酌み交わしていたところまでは覚えている。だが、そこから先の記憶がない。だとしたら、俺はどうしてここにいるのか皆目見当がつかない。とりあえず、ここがどこか分かればいいと思った。
「ほほは? ほほはふはほほほう」
え? 何だって? さっきから、爺さんの言葉が同じようにしか聞こえなくて理解に難儀している。俺はもう一度じいさんに聞き返す。爺さん、できれば入れ歯を入れて欲しい。
「ふはほほほう! ふ! は! ほ! ほ! ほ! お!」
爺さん、聞こえないんじゃなくて発音が分かりにくいんだ。だが、これ以上は変に聞き返しても爺さんに失礼かもしれない。何となくだが『うまのほどう』と言っているような気がする。けど、馬の歩道にしてはやけに道幅が広いな? それに、馬が歩いているようにも思えない。
「ほほはほひほふひ。ほはへはんほへはへほ――」
ああもう! 頼むから歯を入れてくれ! 言葉が理解できなくてイライラする!! 申し訳ないが、これ以上は爺さんの長話に付き合っていられない。俺は爺さんの言葉を遮って先を急いだ。俺も当てがあるわけではないが、ここにいてはいけない気がする。それだけは分かる。
「ほほひへは、ほはへはんははへははひひへひふは?」
爺さんは意味深な表情で俺を見つめていたが、知ったことではない。気のせいかもしれないが、ガキの頃見た遺影の爺さんの顔に似ていたような気もする。いや、単に他人の空似かな......?
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『カァーッ、カァーッ』
樹上でカラスが物寂しげに鳴いている。雑木林の割に生命は感じられず、さながらあの世と言っても過言ではない。
そういえば、秋子は以前『カラスは神の使いと言われていて、あの世とこの世を行き来している』と言っていた。だとしたら、あのカラスはきっと死神か何かなんだろうな。カラスが嫌われ者になるのも納得がいく。
「ほはえはん、はひほひほはい?」
俺が物思いに耽っていると、なにやら爺さんが話しかけてきた。爺さんは歯がないのか、発音が聞き取りづらく何を言ってるのか分かりにくい。何となく『旅の人かい?』と言っているような気はする。
「いいや? 爺さん、ここは一体どこなんだ?」
俺は沼袋で島津と杯を酌み交わしていたところまでは覚えている。だが、そこから先の記憶がない。だとしたら、俺はどうしてここにいるのか皆目見当がつかない。とりあえず、ここがどこか分かればいいと思った。
「ほほは? ほほはふはほほほう」
え? 何だって? さっきから、爺さんの言葉が同じようにしか聞こえなくて理解に難儀している。俺はもう一度じいさんに聞き返す。爺さん、できれば入れ歯を入れて欲しい。
「ふはほほほう! ふ! は! ほ! ほ! ほ! お!」
爺さん、聞こえないんじゃなくて発音が分かりにくいんだ。だが、これ以上は変に聞き返しても爺さんに失礼かもしれない。何となくだが『うまのほどう』と言っているような気がする。けど、馬の歩道にしてはやけに道幅が広いな? それに、馬が歩いているようにも思えない。
「ほほはほひほふひ。ほはへはんほへはへほ――」
ああもう! 頼むから歯を入れてくれ! 言葉が理解できなくてイライラする!! 申し訳ないが、これ以上は爺さんの長話に付き合っていられない。俺は爺さんの言葉を遮って先を急いだ。俺も当てがあるわけではないが、ここにいてはいけない気がする。それだけは分かる。
「ほほひへは、ほはへはんははへははひひへひふは?」
爺さんは意味深な表情で俺を見つめていたが、知ったことではない。気のせいかもしれないが、ガキの頃見た遺影の爺さんの顔に似ていたような気もする。いや、単に他人の空似かな......?