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正しいがもたらした悲劇は人々の心を最期に変えた

ー/ー



 あれから、証拠を三ヶ月かけて集めた。その他にも筆舌に尽くし難い書評も沢山見つかった。それを含めて、保健所やマスコミなどに働きかけた。保健所は何もしなかったけど、大手マスコミが動いた。

「そんな肉、自分の子供が食べてたら恐ろしい。動いて解決しましょう」

 その記者さんはそう言って、色んな所に仕掛けてくれた。そのお陰で保健所なども動かざるを得なくなり、悪事が全てバレて万事休す。社長も田中さんも、取引相手も冥さんも全員捕まった。会社はどちらも倒産する事になった。

「安いものばかり求める消費者が諸悪の根源じゃ!」

 会見でそんな事を社長は声を荒げて言っていた。だけど、自分の録音がお茶の間で流れていたから、誰も同情せず厳しい目線しか向けられなかった。

 捕まって三人の有罪は確定的。これで、子ども達と学校給食は救われた。だけど、僕は……。




 他の人はなんとか就職が決まったらしい。でも僕だけは見つからない。正義とは言え会社の秘密を漏らすような人は要らないらしい。両親、兄弟、親族一同からも総スカンを喰らった。こんな恥晒しは要らないと勘当された。自分が告発者だとバレたから、みんなの所に取材が行って周囲で騒ぎ立てられ、その苦労を僕にぶつけたと言うわけだ。

 会社の同僚も誰も僕を助けない。友人も学校の恩師もみんな僕を助けない。

「正義の味方ヅラで会社潰した奴は助けない」

 そう言う訳で僕は今無職で家もない。マスコミが押し寄せて迷惑受けたから追い出された。家がないから生活保護も受けられない。アルバイトは内部告発のリスクで断られる。

 町の人も僕を知っているからみんな避ける。居ない者、厄介者として扱う。誰も声を掛けない。自分にありがとうと言ってくれた子ども達でさえも。


 …………………

 ……僕は何の為に告発したんだろう。今まで色んな人を助けた。でも困った時に誰も助けてくれない。それどころか、突き放す。

 確かにみんなが幸せならいいっては思ってたけど、これは流石に受け入れきれない。あの告発で僕は不幸にしかなってない。何もいい事が起きてない。人は離れていく。誰も近寄らない。手を差し出してもくれない。僕が助けてと言っても困ってても知らんぷりか、拒絶する。手を叩かれるだけ。

 じゃあなんだ? 黙ってればよかったの? 黙って腐った肉とか食わされて、それで死んでしまっても良かったの? それでも僕を可哀想な被害者として助けてくれたの?!

 違う……絶対に違う。絶対その時も都合のいい事言って僕を突き放す。"肝心な時に何もしないお前はただの偽善者"って言って僕を責めて拒絶するんだっ!!

 みんなそうだ! みんなみんな助けてもらったのに、僕が苦しくなったら見放す! 火を被りたくないから、僕に都合悪い事を体良く押し付けて自分たちだけぬくぬく過ごす事しかしない! 僕は都合のいいロボットだっただけじゃないか……。壊れたり変になったら捨てられる使い捨ての……。

 ……………………ちょくしょう…ちくしょう!…ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!!!!!!!

 ……やめよう。こんな事。もういい

 身体はもう限界だ。視界は歪むと同時に暗さが覆い始める。冷凍庫のような寒さが暖かさに変わってきた。僕の人生のフィナーレが近づいている。

 最後だけはせめて、自分の生き方が正しかったか、それだけを考えよう。死が近づくのと同時に研ぎ澄まされる思考で考える。考える、考える、考えろ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 答えが出そうにない。助けて、喜んでくれるのも嬉し。いし幸せだった。でも今に悔いがな、い訳でもない。答え、が、出、ない

 だ、め、だ。もう、すぐ、終わる。答えが、わからない、そ、れは嫌だ

 じゃあ、あの時、も、う一回、戻った、ら、こ、くはつ……する……?

 一瞬で答えが出た。やっぱりしちゃう。しないと言う事は絶対にできない。それが自分であるから。それで僕だけが僕を救えるから

 ……じゃあ、僕の生き方は正しかったんだ。よか。った、最後に、生き方を、誇れて…。正しい生き方でよかった……

 もう、ねむろう

 めは、かんたんに、お





――――――――――――――

「A市公園で発見された遺体の男性は、偽装事件の告発者で、外傷がなく、毒物を飲んだ痕跡などもない事から警察は事件性はないものとして捜査しています」

 そのニュースはセンセーショナルに報じられた。羽田洋二と言う一人の男が死んだ事、彼の人柄が大々的に分かると同時に世間は彼に優しくし、彼の死を悼んだ。遺体が発見された公園のベンチの前には絶えず花が手向けられた。世間は皆こう思った。

 本当に義の人だったと。優しくていい人だったのだと。

 それと同時に、こうも思った。

 何故正しい事をしたのに悲惨な最期になったのか。お金も名誉も全て奪われ、周りに拒絶され、哀しい最期を迎えなければならなかったのか。

 優しくて善良な人が何故苦しまないといけなかったのか。

 二度と彼のような、羽田洋二のような人が馬鹿を見て死なない世の中に変えねばならないと。


 羽田洋二の心は人の心を変えていった。羽田洋二の生き方は正しく美しかった。


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 あれから、証拠を三ヶ月かけて集めた。その他にも筆舌に尽くし難い書評も沢山見つかった。それを含めて、保健所やマスコミなどに働きかけた。保健所は何もしなかったけど、大手マスコミが動いた。
「そんな肉、自分の子供が食べてたら恐ろしい。動いて解決しましょう」
 その記者さんはそう言って、色んな所に仕掛けてくれた。そのお陰で保健所なども動かざるを得なくなり、悪事が全てバレて万事休す。社長も田中さんも、取引相手も冥さんも全員捕まった。会社はどちらも倒産する事になった。
「安いものばかり求める消費者が諸悪の根源じゃ!」
 会見でそんな事を社長は声を荒げて言っていた。だけど、自分の録音がお茶の間で流れていたから、誰も同情せず厳しい目線しか向けられなかった。
 捕まって三人の有罪は確定的。これで、子ども達と学校給食は救われた。だけど、僕は……。
 他の人はなんとか就職が決まったらしい。でも僕だけは見つからない。正義とは言え会社の秘密を漏らすような人は要らないらしい。両親、兄弟、親族一同からも総スカンを喰らった。こんな恥晒しは要らないと勘当された。自分が告発者だとバレたから、みんなの所に取材が行って周囲で騒ぎ立てられ、その苦労を僕にぶつけたと言うわけだ。
 会社の同僚も誰も僕を助けない。友人も学校の恩師もみんな僕を助けない。
「正義の味方ヅラで会社潰した奴は助けない」
 そう言う訳で僕は今無職で家もない。マスコミが押し寄せて迷惑受けたから追い出された。家がないから生活保護も受けられない。アルバイトは内部告発のリスクで断られる。
 町の人も僕を知っているからみんな避ける。居ない者、厄介者として扱う。誰も声を掛けない。自分にありがとうと言ってくれた子ども達でさえも。
 …………………
 ……僕は何の為に告発したんだろう。今まで色んな人を助けた。でも困った時に誰も助けてくれない。それどころか、突き放す。
 確かにみんなが幸せならいいっては思ってたけど、これは流石に受け入れきれない。あの告発で僕は不幸にしかなってない。何もいい事が起きてない。人は離れていく。誰も近寄らない。手を差し出してもくれない。僕が助けてと言っても困ってても知らんぷりか、拒絶する。手を叩かれるだけ。
 じゃあなんだ? 黙ってればよかったの? 黙って腐った肉とか食わされて、それで死んでしまっても良かったの? それでも僕を可哀想な被害者として助けてくれたの?!
 違う……絶対に違う。絶対その時も都合のいい事言って僕を突き放す。"肝心な時に何もしないお前はただの偽善者"って言って僕を責めて拒絶するんだっ!!
 みんなそうだ! みんなみんな助けてもらったのに、僕が苦しくなったら見放す! 火を被りたくないから、僕に都合悪い事を体良く押し付けて自分たちだけぬくぬく過ごす事しかしない! 僕は都合のいいロボットだっただけじゃないか……。壊れたり変になったら捨てられる使い捨ての……。
 ……………………ちょくしょう…ちくしょう!…ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!!!!!!!
 ……やめよう。こんな事。もういい
 身体はもう限界だ。視界は歪むと同時に暗さが覆い始める。冷凍庫のような寒さが暖かさに変わってきた。僕の人生のフィナーレが近づいている。
 最後だけはせめて、自分の生き方が正しかったか、それだけを考えよう。死が近づくのと同時に研ぎ澄まされる思考で考える。考える、考える、考えろ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 答えが出そうにない。助けて、喜んでくれるのも嬉し。いし幸せだった。でも今に悔いがな、い訳でもない。答え、が、出、ない
 だ、め、だ。もう、すぐ、終わる。答えが、わからない、そ、れは嫌だ
 じゃあ、あの時、も、う一回、戻った、ら、こ、くはつ……する……?
 一瞬で答えが出た。やっぱりしちゃう。しないと言う事は絶対にできない。それが自分であるから。それで僕だけが僕を救えるから
 ……じゃあ、僕の生き方は正しかったんだ。よか。った、最後に、生き方を、誇れて…。正しい生き方でよかった……
 もう、ねむろう
 めは、かんたんに、お
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「A市公園で発見された遺体の男性は、偽装事件の告発者で、外傷がなく、毒物を飲んだ痕跡などもない事から警察は事件性はないものとして捜査しています」
 そのニュースはセンセーショナルに報じられた。羽田洋二と言う一人の男が死んだ事、彼の人柄が大々的に分かると同時に世間は彼に優しくし、彼の死を悼んだ。遺体が発見された公園のベンチの前には絶えず花が手向けられた。世間は皆こう思った。
 本当に義の人だったと。優しくていい人だったのだと。
 それと同時に、こうも思った。
 何故正しい事をしたのに悲惨な最期になったのか。お金も名誉も全て奪われ、周りに拒絶され、哀しい最期を迎えなければならなかったのか。
 優しくて善良な人が何故苦しまないといけなかったのか。
 二度と彼のような、羽田洋二のような人が馬鹿を見て死なない世の中に変えねばならないと。
 羽田洋二の心は人の心を変えていった。羽田洋二の生き方は正しく美しかった。