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商談29 ゼッケンと恋心

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私服に着替えた俺達は階段を上った。酒の席で旧友を問い詰めるのは少しばかり気が引けるが、あれだけ探し回ったゼッケンがどういう経緯で島津の元へやってきたのか。その真意を問わねばならない。
 さっきまで俺の腹を占拠していたカレーたちはいつしか消え去っていた。総重量20kgの防具を装着して熾烈な戦いを繰り広げていたから、それも当然か。
 俺達は席へ着くなり酒を注文する。俺が頼んだのは『隅田の華』、東京生まれの地酒で日本銘酒百選にも選定されている上物だ。学生時代に先輩から勧められて飲んだのがきっかけで知ったのだが、流水の如く澄み切った味わいは学生ながらに心地良かったことを覚えている。
 ついでに鯨のたれも注文した。鯨という品書きは、岩井の故郷が千葉県の安房地域であることに起因していると思われる。以前にも誕生町で鯨のたれを買ったのだが、どうやらお義母さんにつまみ食いされてしまったらしい。俺は鯨のたれリベンジに燃えているんだ......!
「......で? どうして俺のゼッケンをお前が持っていたんだ?」
 もちろん本題も忘れてはいない。さて、島津はどう答えるか......。
「先週、体育大のOB会があってな。その時、金久保から渡されたんだ。」
 どうやら、島津はとある人物からゼッケンを託されたらしい。金久保がどんな人物かは知らないが、一体どういうことなんだ?
「金久保、お前にベタ惚れだったらしい。想いが募った挙句、お前のゼッケンを盗んだって話だ」
 なるほどそういうことか。後から聞かされた話だが、俺の与り知らぬ所でファンクラブが結成されていたらしい。おそらく、金久保もその一人だったに違いない。しかし、だからといって俺のゼッケンを盗んでいい理由にはならないがな。
「お前、女子部員に人気だったからなぁ? くぅ......羨ましいぜ!!」
 俺のモテっぷりに嫉妬している島津。眼光鋭く近寄り難い見てくれのせいか、この男は今も独身街道を突き進んでいる。上から目線で申し訳ないが、旧友として彼に良縁があることを切に願うばかりだ。
「あぁ、まゆみちゃんはどうしているかなぁ?」
 島津は刑務官になってから女遊びを覚えたらしく、それと思しき名前をよく聞く。だが、悲しいことに女の名前は聞く度に違っている。これがモテない男の悲哀といったところか。
「俺の青春が詰まったエデンホール(・・・・・・)は過去になってしまった......。道場や エデンホールが 夢の跡」
 モテない男の川柳に今一つ心は動かない。......ん? エデンホール......? 夢の跡......!?
「ここはエデンホールってキャバクラだったんだ。あぁ、懐かしき俺の青春......」
 エデンホール、そこは俺と秋子の出逢いの場だ! あぁ、なんてこった!!


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私服に着替えた俺達は階段を上った。酒の席で旧友を問い詰めるのは少しばかり気が引けるが、あれだけ探し回ったゼッケンがどういう経緯で島津の元へやってきたのか。その真意を問わねばならない。
 さっきまで俺の腹を占拠していたカレーたちはいつしか消え去っていた。総重量20kgの防具を装着して熾烈な戦いを繰り広げていたから、それも当然か。
 俺達は席へ着くなり酒を注文する。俺が頼んだのは『隅田の華』、東京生まれの地酒で日本銘酒百選にも選定されている上物だ。学生時代に先輩から勧められて飲んだのがきっかけで知ったのだが、流水の如く澄み切った味わいは学生ながらに心地良かったことを覚えている。
 ついでに鯨のたれも注文した。鯨という品書きは、岩井の故郷が千葉県の安房地域であることに起因していると思われる。以前にも誕生町で鯨のたれを買ったのだが、どうやらお義母さんにつまみ食いされてしまったらしい。俺は鯨のたれリベンジに燃えているんだ......!
「......で? どうして俺のゼッケンをお前が持っていたんだ?」
 もちろん本題も忘れてはいない。さて、島津はどう答えるか......。
「先週、体育大のOB会があってな。その時、金久保から渡されたんだ。」
 どうやら、島津はとある人物からゼッケンを託されたらしい。金久保がどんな人物かは知らないが、一体どういうことなんだ?
「金久保、お前にベタ惚れだったらしい。想いが募った挙句、お前のゼッケンを盗んだって話だ」
 なるほどそういうことか。後から聞かされた話だが、俺の与り知らぬ所でファンクラブが結成されていたらしい。おそらく、金久保もその一人だったに違いない。しかし、だからといって俺のゼッケンを盗んでいい理由にはならないがな。
「お前、女子部員に人気だったからなぁ? くぅ......羨ましいぜ!!」
 俺のモテっぷりに嫉妬している島津。眼光鋭く近寄り難い見てくれのせいか、この男は今も独身街道を突き進んでいる。上から目線で申し訳ないが、旧友として彼に良縁があることを切に願うばかりだ。
「あぁ、まゆみちゃんはどうしているかなぁ?」
 島津は刑務官になってから女遊びを覚えたらしく、それと思しき名前をよく聞く。だが、悲しいことに女の名前は聞く度に違っている。これがモテない男の悲哀といったところか。
「俺の青春が詰まった|エデンホール《・・・・・・》は過去になってしまった......。道場や エデンホールが 夢の跡」
 モテない男の川柳に今一つ心は動かない。......ん? エデンホール......? 夢の跡......!?
「ここはエデンホールってキャバクラだったんだ。あぁ、懐かしき俺の青春......」
 エデンホール、そこは俺と秋子の出逢いの場だ! あぁ、なんてこった!!