ポテトフライを皮切りに、俺は屋台巡りを始めた。ビール片手に焼きそば、唐揚げと鮎の塩焼き。それから、チョコバナナも忘れないようにと。
幼少時代の無念を晴らすかのように、俺はそれらを貪っていた。だが、屋台特有のジャンキーさでさえも、俺の心を満たすことはできないようだ。
「射的……いっちょやってみるか!」
それならばと、俺は娯楽系の屋台にも手を出す。当然ながら、射的などの屋台も未経験だ。
俺は猟師のごとく低姿勢でかがみ、銃身を標的へ向けて構える。狙うは大物、特大ぬいぐるみだ。さて、実力はいかほどか……。
「おぉ!? 一発で命中とはすげぇや!!」
俺の放った弾丸は、見事に標的へ命中! 俺、もしかして射的の才能もあったりして……!? これには、年甲斐もなく浮かれてしまう。
ちなみに、このぬいぐるみはゆなが大好きな『赤丸』という猫又をモチーフにした妖怪だ。
今、子供達の間では『妖怪タブレット』とかいうスマホゲームが流行っているらしく、赤丸は当該作品の主要キャラクターなんだとか。
妖怪と言えば、秋子はこんな事を言っていた。
『人間は、何かと都合が悪いことを妖怪のせいにしたがる。それって、要するに責任逃れだよね?』
今となっては医学的にメカニズムが解明されたハンガーノックも、かつてはヒダル神という妖怪の仕業だと考えられていた。
このように、日本文化には特定の事象に関わる妖怪が散見される。なるほど、秋子が責任逃れと言いたくなるのも一理あるな。
もしかしたら、俺の満たされぬ心も妖怪の仕業かもしれないなぁ……いや、そんなわけないか。
それはさておき、このぬいぐるみはゆなへのお土産にしよう。きっと喜んでくれるぞ!
俺はその後も金魚すくいやスーパーボールすくいなど、ありとあらゆる娯楽系の屋台を遊び尽くした。けれど、どれもこれも今の俺には赤子の手を捻るように容易い。
どうやら、今の俺に当時の感覚を追体験することは叶わぬ夢のようだ。
哀愁を覚えていた俺だが、何か大事な用事を忘れているような気がする。はて、何だったろうか?
『ブーッ! ブーッ!』
俺の懐にしまっていたスマホが着信を知らせている。着信……あっ、しまった!
『冬樹、まだ着かないか?』
着信は叔父さんからだった。割と呑気な口調だが、少々待たせすぎたかもしれない。
『叔父さん、もうすぐ着くから!!』
俺は電話を切り、一目散に叔父さんの待つイベントルームへ向かった。