叔父から電話が来たのも数年ぶりだった。叔父の長話には磨きが掛かっていたし、尚更気が重くなった。人間、歳を重ねると本質が顕著になるものだ。せめて、オレは家族に愛される人物でありたい。
「ここかぁ、おじさんの待ち合わせ場所」
そこは酒蔵を改装した居酒屋。元々酒屋だったはずだが、俺が見ない間に居酒屋になっていたようだ。
ちなみに、店名は『酒呑童子』というらしい。酒は呑んでも呑まれるな、そんな警告が看板からひしひしと伝わってくる。
さて、いよいよ叔父さんとの面会か。今一度、気を引き締めていこう。源頼光の気位で俺は暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませ!」
外観の重々しい引き戸に反し、店内は縁日のような賑わいを見せている。照明の赤提灯や枝垂れのインテリアが、実にいい仕事をしている。店員さんの法被姿もお祭り気分を引き立ててくれている。
「へいらっしゃい! ポテトフライ、揚げたてだよっ!!」
店内には、縁日を思わせる屋台が所狭しと並んでいる。ポテトフライにじゃがバター、それに鮎の塩焼き……どれも縁日で見かける食べ物ばかりじゃないか。
そういえば、親父は俺をよく縁日へ連れて行ってくれた。と言っても、単に親父の縁日好きに付き合わされただけで、俺はせいぜいわたあめくらいしか買ってもらえなかった。
『冬樹、お前にはまだ早い』
親父の口癖だった。当の本人はビール片手に焼き鳥や唐揚げ、ポテトフライにじゃがバターなどなど。とにかく屋台の隅々まで悉く食べ歩いていた。今になって思えば、父親の片隅にも置けない言動だったな。
「旦那、そんなにポテトフライが気になんのか?」
俺は少年時代を懐古し、心がざわついていた。あの時食べたかったポテトフライ。親父に駄々をこねてまで欲したそれが、今俺の目の前にある。あの時の切なさが、腹の奥底にある俺の欲望を呼び覚ますーー!!
「……あーーーっ!!!」
俺は思わず咆哮してしまった。周囲の人々は一斉にこちらへ振り向き、屋台の店主も困惑から目が点になっている。いかんいかん、いつもの癖が出てしまった。
「……おほん。すみません、ポテトフライの大を1つ下さい」
気を取り直して、俺はポテトフライを購入。おっと、店員さんから手首に付けてもらったコイツを忘れるところだった。 リストバンドを専用機器にタッチし、商品を受け取る。どうやら、帰りにレジでリストバンドのデータを照会して会計するシステムらしい。
懐かしの雰囲気とは裏腹に、会計システムはえらく現代的なものだ。