「光太! 起きて!」
「う、ん……。ああ、由貴。あ、そうだ! ミュウは?」
いきなり揺り起こされて、俺は目を擦りながらゆっくり起き上がる。
「こっち来て、早く!」
引きずられるように寝室に連れ込まれ、彼女の視線の先に目をやる。
ベッドの上には、昨夜ミュウが着ていた由貴のピンクのTシャツがくしゃくしゃに丸まって乗っている、だけだった。中身は……?
「昨日脱がせた服もないの。あと、これ」
そしてさらに指差されたのは、作業テーブルの上の俺のノートPCだ。
確かに閉めた筈の蓋が開けられてる。
メモアプリが立ち上がってるのは、俺が使って終了させてなかったからだけど。
《こうた。ゆきおねえさんに、ほんとうのきもちいえたね。これがおんがえし。》
ディスプレイに並ぶ平仮名。
──光太。由貴お姉さんに、本当の気持ち言えたね。これが恩返し。
一瞬判読に困る平仮名の羅列を目でなぞると、少しの間を置いて脳内で意味のある文章に変換される。
「え……、! ゆ、由貴! 写真、昨日の写真を──」
しどろもどろの俺の言葉の真意が伝わったらしく、由貴がさっと顔色を変えて取り出したスマホを操作してる。
その時俺はようやく、ベッドの向こうの窓が少し開いてるのに気づいたんだ。
待つ気なんかなく彼女の後ろに回り込んで、ディスプレイに表示された画像を息を呑んで見つめる。
二人とも声も出なかった。
見事に「化ける」もんだな。機械まで騙せるのか?
──ミュウ。そういえば、英語で猫の鳴き声って「
Mew」だったよな……。
クッションの上にはこっちを、……カメラのレンズを見てる、丸い目をした茶虎の仔猫がいた。
~END~