商談25 緊迫
ー/ー
主審は号令を掛け、審判は合議を始める。おそらく、島津の打突直後の行動が主審の目についたに違いない。
「取消し!」
......やっぱりな? 島津の行動が、審判にはガッツポーズと見なされたらしい。これじゃあ、学生時代の再現じゃないか。とはいえ、これで俺は命拾いした。勝負はまだこれからだ!
「始め!」
そして勝負は仕切り直し。上段は片手技を主軸に置くため、中段に比べて比較的遠間からの打突が可能である。だが、裏を返せばそれは近間だと打つ手がなくなることを意味する。中段対上段では、如何に打突する際の間合いを確保できるか。それが勝負を左右するといっても過言ではない。
しかし、島津は上段の俺を恐れることなく勇猛果敢に間を詰めてくる。こういう戦法は俺の苦手とするところだ。やがて互いに間が詰まり、鍔迫り合いへと移行する。
「どうした? 動きが硬いぞ、入間」
面越しに島津は俺を挑発してくる。俺を動揺させて油断を誘うつもりだろうが、そうはいかない。鹿児島の火竜は動じないのだ。俺の心が動じないと分かっている島津は、次の一手を繰り出す!
『メェェェーーーンッッッ!!!』
島津はすかさず引き面に打って出る。俺も即座に同じく引き面で応戦する。これは両者相打ち、打突は打ち消し合う。島津は片手突きのみならず、引き技もなかなかに一打が重い。ここで相打ちにしないと、有効打突になりかねない。鍔迫り合いでも油断は禁物だ。
引き技の打突によって間合いが切れる。そこから間を詰めるべく、各々構えを整えて歩み寄る。島津はあっという間に間合いを詰めてくる。ならばここは、間が詰まる前に一撃お見舞いするか......!
「メェェェーーーンッ!!」
俺の面打ちに若干気後れした島津は、咄嗟に俺の竹刀をいなして返し面で応酬する。しかし、島津の返し面は間合いが接近し不発。中段にとって、上段との対戦は一歩踏み込み過ぎるだけでも命取りになる。間合いを推し量る戦いは、こういうところが恐い。
序盤こそ手数を多く出していたものの、やがて互いの腹の内を探ることに注力していくようになり手数は減っていく。
「合議!」
主審から再び号令が掛かる。これはおそらく時間空費だろう。読んで字の如く、勝負を展開せずに時間を浪費することによる反則行為である。
「時間空費、反則1回!」
案の定、時間空費による両反則だ。反則は2回受けると相手に1本が与えられてしまう。ここは今一度、気を引き締めていかねば。
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主審は号令を掛け、審判は合議を始める。おそらく、島津の打突直後の行動が主審の目についたに違いない。
「取消し!」
......やっぱりな? 島津の行動が、審判にはガッツポーズと見なされたらしい。これじゃあ、学生時代の再現じゃないか。とはいえ、これで俺は命拾いした。勝負はまだこれからだ!
「始め!」
そして勝負は仕切り直し。上段は片手技を主軸に置くため、中段に比べて比較的遠間からの打突が可能である。だが、裏を返せばそれは近間だと打つ手がなくなることを意味する。中段対上段では、如何に打突する際の間合いを確保できるか。それが勝負を左右するといっても過言ではない。
しかし、島津は上段の俺を恐れることなく勇猛果敢に間を詰めてくる。こういう戦法は俺の苦手とするところだ。やがて互いに間が詰まり、|鍔《つば》迫り合いへと移行する。
「どうした? 動きが硬いぞ、入間」
面越しに島津は俺を挑発してくる。俺を動揺させて油断を誘うつもりだろうが、そうはいかない。鹿児島の火竜は動じないのだ。俺の心が動じないと分かっている島津は、次の一手を繰り出す!
『メェェェーーーンッッッ!!!』
島津はすかさず引き面に打って出る。俺も即座に同じく引き面で応戦する。これは両者相打ち、打突は打ち消し合う。島津は片手突きのみならず、引き技もなかなかに一打が重い。ここで相打ちにしないと、有効打突になりかねない。鍔迫り合いでも油断は禁物だ。
引き技の打突によって間合いが切れる。そこから間を詰めるべく、各々構えを整えて歩み寄る。島津はあっという間に間合いを詰めてくる。ならばここは、間が詰まる前に一撃お見舞いするか......!
「メェェェーーーンッ!!」
俺の面打ちに若干気後れした島津は、咄嗟に俺の竹刀をいなして返し面で応酬する。しかし、島津の返し面は間合いが接近し不発。中段にとって、上段との対戦は一歩踏み込み過ぎるだけでも命取りになる。間合いを推し量る戦いは、こういうところが恐い。
序盤こそ手数を多く出していたものの、やがて互いの腹の内を探ることに注力していくようになり手数は減っていく。
「合議!」
主審から再び号令が掛かる。これはおそらく|時間空費《・・・・》だろう。読んで字の如く、勝負を展開せずに時間を浪費することによる反則行為である。
「時間空費、反則1回!」
案の定、時間空費による両反則だ。反則は2回受けると相手に1本が与えられてしまう。ここは今一度、気を引き締めていかねば。