表示設定
表示設定
目次 目次




第四問

ー/ー



 その声は、間違いなく翔琉の声だ。しかし、それは以前聞いた明るく軽快な声ではなく、低く湿った、不気味な響きを持つ声だった。

「問題です。僕がここにいる理由はなんでしょう?」

 私は答えられなかった。ただ震えながら後ずさることしかできない。すると翔琉、いや、その影はさらに続けた。

「問題です。僕をこんな風にしたのは誰でしょう?」

 その問いには明確な答えがあった。しかし、私にはそれを口にすることができなかった。わかっているが、答えに出来ない。翔琉がこうなった原因には、自分自身にも責任があるからだ。

 翔琉との付き合い始めの日々、私には翔琉へ抱く複雑な感情があった。それは愛情だけではなく、どこか依存的で支配的な彼への嫌悪感があった。そしてその嫌悪感から、時折冷たい態度や無意識に傷つける言葉を投げかけてしまうこともあった。

 例えば、ある日の出来事――

「問題です。この服、美羽ちゃん的にはどう?」

 翔琉がお気に入りだと言って買った服について尋ねてきた時、私は疲れていたせいもあってこう答えてしまった。

「ダサいよ、それ」

 冗談半分だった。しかし、その時の翔琉の表情は一瞬だけ曇り、その後無理やり笑顔を作ったような顔になった。それが今でも記憶に焼き付いている。そしてその日から、翔琉が少しずつ変わっていったようにも思えた。

 彼のクイズ好きもエスカレートし、次第に執拗さや異常性を帯びていった。それでも私は「彼が変わった原因」を自分自身だとは認めたくなかった。そして別れ話を切り出すことで、その責任から逃れようとしていた。私自身は一時の感情をぶつけただけなのかもしれないが、翔琉からすると、大きく自分自身を否定され、蔑まされ、プライドをへし折られた気持ちなのかもしれない。
 その反動から、得意なクイズを私に繰り返し出題して、自分の存在を私よりも優位に立たせたかったのだ。
 
 目の前の翔琉――いや、それらしき存在は静かに私へ問い続ける。その声には怒りも悲しみも混じっているようだった。

「問題です。僕が絶望した理由はなんでしょう?」

 私はとうとう涙を流しながら叫んだ。

「私だよ! 私が悪いんでしょ? 私が冷たかったから……私があなたを振ったから……!」

 その言葉に影、翔琉は一瞬動きを止めた。そして低く笑うような声を上げながらこう言った。

「正解」

 その瞬間、部屋全体が真っ赤に染まった。壁や天井からぱちゃぱちゃと水滴が滴り落ち、床には黒い水溜まりが広がっていく。そしてその中から無数の赤黒い手が伸び、私へと迫ってきた。

 無数の赤黒い手から逃れようと必死にもがきながら叫んだ。しかし、私の脚を一本の腕が掴み、身体が固定される。バタバタと手が私の脚から、腹へ徐々に重なる様に覆い被さって、身体が床に広がる黒い水溜りへ引き摺り込む。
 声にならない声で必死に声を上げるが、その声も次第に水音へと飲み込まれていく。
 そして最後に聞こえた声――

「問題です。この先、美羽ちゃんはどこへ行くのでしょう?」

 水音に包まれながら、目の前の光景が現実なのか夢なのかすら分からなくなっていた。水上に見えるのは赤く染まった部屋、体の半分を覆う、底から伸びる無数の手。それらすべてが、私を引きずり込もうとしている。

「やめて……お願い……!」

 ガボガボと泡を吐き出しながら水中で必死に叫ぶが、その声は虚空に吸い込まれるように消えていく。そして再び、あの声が響いた。

「問題です。この先、美羽ちゃんはどこへ行くのでしょう?」

 翔琉。いや、翔琉だったものの声だ。その問いの答えはなんとなしにわかってはいたが、答えたくなかった。しかし、答えないことがさらに恐怖を呼び込むような気がして、葛藤する私は震える声で呟いた。

「……いや、いやだ……」

 その瞬間、部屋全体が揺れるように歪んだ。そして目の前の翔琉の影が、ゆっくりと笑みを浮かべた。

「ヒント。自殺した僕が今から行くところ」

 その言葉とともに、私の身体は勢いよく引き摺り込まれて完全に飲み込まれた。視界が暗転し、耳には遠くから聞こえる波音だけが残った。

 次に目を覚ました時、自分がどこにいるのか分からなかった。見渡す限り真っ暗で、湿った空気が肌にまとわりついている。足元には冷たい水が広がり、どこか遠くで誰かのすすり泣きが聞こえるような気がした。

「ここ……は……?」

 呟いた声も、自分自身の耳には届かないような感覚だった。その時、不意に足元から何か硬いものを踏んだ感触がした。恐る恐る拾い上げると、それはスマホだった。画面にはメッセージが表示されている。

「問題です。この場所はどこでしょう?」

その問いに私は答えられなかった。ただ震えながらスマホを握りしめるしかできない。そして次の瞬間、画面が切り替わり、新たなメッセージが表示された。

「ヒント:ここは僕が堕ちた場所です」

そのメッセージを見た瞬間、全身に寒気を覚えた。「堕ちた場所」という言葉。やはり、そこは翔琉が自ら命を絶った事で行き着く場所を指しているのだろうか。

 震えながら指さきを唇にあてて考え込む私の耳に、不意にまたあの声が響いた。

「問題です。僕が堕ちた理由はなんでしょう?」

 振り返るとそこには、びしょ濡れで不気味な笑みを浮かべた彼が立っていた。その姿は以前よりもさらに異様だった。肌は青白く、水滴が滴り落ちる音だけでなく、その体から漂う腐臭まで感じられる。

「答えてよ、美羽ちゃん。」

 彼は一歩ずつゆっくりと近づいてくる。足を前に出すたびにびちゃりと音を立てながら。その声には以前のような軽快さも、優しさもない。ただ冷たい執念だけが滲んでいた。

「答えられないなら、一緒に考えようか?」

 そう言いながら翔琉はふやけている様なぶよぶよの手を伸ばした。その手には何か黒い液体がまとわりついているように見える。それが私へ触れる寸前のこと。

 私の頭の中に過去の日々がフラッシュバックするように浮かび上がった。翔琉との出会い、楽しかった日々、そして次第に歪んでいった関係性。その中で、私自身も気づいてしまったこと――

 私もまた翔琉を利用していたという事実だった。最初はただ頼れる存在として付き合っていた。しかし次第に翔琉への愛情よりも、「自分を好いてくれる人」という安心感だけを求めてしまっていた。そしてその結果として、翔琉を傷つける言葉や態度を繰り返してしまったこと。それこそが彼を追い詰めた原因だという答えに辿り着いた。

「私……私が悪かった……」

  私は涙ながらに呟いた。その言葉に翔琉は静かに微笑んだ。

「正解。」

 その時、周囲から水音とともに無数の手が伸びてきた。それらは更に地中深くへと、私の身体を引きずり込もうとするようだった。しかし、その中で一際大きな手だけが肩に触れた。それは冷たいけれど、不思議と優しさも感じられる手だった。

 再び、いつの間にか手に持っていたスマホから通知音が鳴る。画面にはメッセージが表示されている。

「問題です。この物語の結末はどうなるでしょう?」

 私はその問いに答えられなかった。ただ涙を流しながらスマホを握りしめていた。そして次第に視界全体が真っ暗になっていく中で、声が聞こえた。

「また会おうね、美羽ちゃん」

 それだけを心に残して、私は意識を失った。

 翌朝、二日酔いにも似た重たさを感じながら目覚めた。昨夜の出来事は夢か、それとも現実だったのか、わからないまま頭はぼんやりとしていて、自分でも何が本当なのか分からなくなっていた。
 沙織はキッチンで朝食を作っているようだった。その香ばしい匂いに少しだけ安堵しながら、私はテレビをつけた。
 
「速報です。昨夜未明、生田翔琉さん(26歳)が海岸で遺体となって発見されました」
 そのニュースキャスターの声に、私は思わず息を呑んだ。画面には翔琉の写真。見覚えのある笑顔が映し出されている。そして次の瞬間、ブンッという電子音と共にテレビ画面全体が真っ赤になった。
 
「え……?」
 リモコンでチャンネルを切り替えようとしたが、画面は真っ赤なまま動かない。カチャカチャと画面に向かってリモコンを操作するも、反応しない。画面には赤い背景に黒い文字で文字が浮かび上がった。

「問題です。この先、美羽ちゃんはどうなるでしょう?」

 その文字を見た瞬間、私は叫び声を上げてテレビを消した。しかし、その叫び声も虚しく響くだけだった。
 背後から滴る水音。それもひとつではなく複数だ。そして振り返った瞬間、身体が凍りついた。
 そこにはびしょ濡れの翔琉だけではなく、無数の手や見覚えのない顔、視線は私に向けられているが、一切目が合わない不気味な表情でこちらを向いている。
 直後、命というものを感じられないその無数の人々は凄まじい速度で、一斉に私へ向けて手を伸ばして――

「本日未明、大学生・三浦美羽さん(21歳)が自宅で死亡しているところを発見されました。死因について警察は調査中ですが、不審な点も多く……」
 
 キャスターは淡々と事件を報じていた。しかしその途中、不意に画面全体がブラックアウトし、赤黒い背景へと切り替わる。
 そして、大きな文字で、
 
「問題です。この物語、本当に終わったと思いますか?」
 
 その後、画面はニュースへと切り替わる。キャスター自身の顔が、びしょ濡れで苦痛にぐにゃぐにゃと歪んだ表情に変わり、水溜りに浮かぶ油の様に、映像がぐにゃぐにゃと揺れ、ぴちゃぴちゃと水音が鳴っている。
 しばらく、その奇妙な画面を映し出した後、ブンッと機械音を鳴らしてモニターの電源が落ちた。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 その声は、間違いなく翔琉の声だ。しかし、それは以前聞いた明るく軽快な声ではなく、低く湿った、不気味な響きを持つ声だった。
「問題です。僕がここにいる理由はなんでしょう?」
 私は答えられなかった。ただ震えながら後ずさることしかできない。すると翔琉、いや、その影はさらに続けた。
「問題です。僕をこんな風にしたのは誰でしょう?」
 その問いには明確な答えがあった。しかし、私にはそれを口にすることができなかった。わかっているが、答えに出来ない。翔琉がこうなった原因には、自分自身にも責任があるからだ。
 翔琉との付き合い始めの日々、私には翔琉へ抱く複雑な感情があった。それは愛情だけではなく、どこか依存的で支配的な彼への嫌悪感があった。そしてその嫌悪感から、時折冷たい態度や無意識に傷つける言葉を投げかけてしまうこともあった。
 例えば、ある日の出来事――
「問題です。この服、美羽ちゃん的にはどう?」
 翔琉がお気に入りだと言って買った服について尋ねてきた時、私は疲れていたせいもあってこう答えてしまった。
「ダサいよ、それ」
 冗談半分だった。しかし、その時の翔琉の表情は一瞬だけ曇り、その後無理やり笑顔を作ったような顔になった。それが今でも記憶に焼き付いている。そしてその日から、翔琉が少しずつ変わっていったようにも思えた。
 彼のクイズ好きもエスカレートし、次第に執拗さや異常性を帯びていった。それでも私は「彼が変わった原因」を自分自身だとは認めたくなかった。そして別れ話を切り出すことで、その責任から逃れようとしていた。私自身は一時の感情をぶつけただけなのかもしれないが、翔琉からすると、大きく自分自身を否定され、蔑まされ、プライドをへし折られた気持ちなのかもしれない。
 その反動から、得意なクイズを私に繰り返し出題して、自分の存在を私よりも優位に立たせたかったのだ。
 目の前の翔琉――いや、それらしき存在は静かに私へ問い続ける。その声には怒りも悲しみも混じっているようだった。
「問題です。僕が絶望した理由はなんでしょう?」
 私はとうとう涙を流しながら叫んだ。
「私だよ! 私が悪いんでしょ? 私が冷たかったから……私があなたを振ったから……!」
 その言葉に影、翔琉は一瞬動きを止めた。そして低く笑うような声を上げながらこう言った。
「正解」
 その瞬間、部屋全体が真っ赤に染まった。壁や天井からぱちゃぱちゃと水滴が滴り落ち、床には黒い水溜まりが広がっていく。そしてその中から無数の赤黒い手が伸び、私へと迫ってきた。
 無数の赤黒い手から逃れようと必死にもがきながら叫んだ。しかし、私の脚を一本の腕が掴み、身体が固定される。バタバタと手が私の脚から、腹へ徐々に重なる様に覆い被さって、身体が床に広がる黒い水溜りへ引き摺り込む。
 声にならない声で必死に声を上げるが、その声も次第に水音へと飲み込まれていく。
 そして最後に聞こえた声――
「問題です。この先、美羽ちゃんはどこへ行くのでしょう?」
 水音に包まれながら、目の前の光景が現実なのか夢なのかすら分からなくなっていた。水上に見えるのは赤く染まった部屋、体の半分を覆う、底から伸びる無数の手。それらすべてが、私を引きずり込もうとしている。
「やめて……お願い……!」
 ガボガボと泡を吐き出しながら水中で必死に叫ぶが、その声は虚空に吸い込まれるように消えていく。そして再び、あの声が響いた。
「問題です。この先、美羽ちゃんはどこへ行くのでしょう?」
 翔琉。いや、翔琉だったものの声だ。その問いの答えはなんとなしにわかってはいたが、答えたくなかった。しかし、答えないことがさらに恐怖を呼び込むような気がして、葛藤する私は震える声で呟いた。
「……いや、いやだ……」
 その瞬間、部屋全体が揺れるように歪んだ。そして目の前の翔琉の影が、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「ヒント。自殺した僕が今から行くところ」
 その言葉とともに、私の身体は勢いよく引き摺り込まれて完全に飲み込まれた。視界が暗転し、耳には遠くから聞こえる波音だけが残った。
 次に目を覚ました時、自分がどこにいるのか分からなかった。見渡す限り真っ暗で、湿った空気が肌にまとわりついている。足元には冷たい水が広がり、どこか遠くで誰かのすすり泣きが聞こえるような気がした。
「ここ……は……?」
 呟いた声も、自分自身の耳には届かないような感覚だった。その時、不意に足元から何か硬いものを踏んだ感触がした。恐る恐る拾い上げると、それはスマホだった。画面にはメッセージが表示されている。
「問題です。この場所はどこでしょう?」
その問いに私は答えられなかった。ただ震えながらスマホを握りしめるしかできない。そして次の瞬間、画面が切り替わり、新たなメッセージが表示された。
「ヒント:ここは僕が堕ちた場所です」
そのメッセージを見た瞬間、全身に寒気を覚えた。「堕ちた場所」という言葉。やはり、そこは翔琉が自ら命を絶った事で行き着く場所を指しているのだろうか。
 震えながら指さきを唇にあてて考え込む私の耳に、不意にまたあの声が響いた。
「問題です。僕が堕ちた理由はなんでしょう?」
 振り返るとそこには、びしょ濡れで不気味な笑みを浮かべた彼が立っていた。その姿は以前よりもさらに異様だった。肌は青白く、水滴が滴り落ちる音だけでなく、その体から漂う腐臭まで感じられる。
「答えてよ、美羽ちゃん。」
 彼は一歩ずつゆっくりと近づいてくる。足を前に出すたびにびちゃりと音を立てながら。その声には以前のような軽快さも、優しさもない。ただ冷たい執念だけが滲んでいた。
「答えられないなら、一緒に考えようか?」
 そう言いながら翔琉はふやけている様なぶよぶよの手を伸ばした。その手には何か黒い液体がまとわりついているように見える。それが私へ触れる寸前のこと。
 私の頭の中に過去の日々がフラッシュバックするように浮かび上がった。翔琉との出会い、楽しかった日々、そして次第に歪んでいった関係性。その中で、私自身も気づいてしまったこと――
 私もまた翔琉を利用していたという事実だった。最初はただ頼れる存在として付き合っていた。しかし次第に翔琉への愛情よりも、「自分を好いてくれる人」という安心感だけを求めてしまっていた。そしてその結果として、翔琉を傷つける言葉や態度を繰り返してしまったこと。それこそが彼を追い詰めた原因だという答えに辿り着いた。
「私……私が悪かった……」
  私は涙ながらに呟いた。その言葉に翔琉は静かに微笑んだ。
「正解。」
 その時、周囲から水音とともに無数の手が伸びてきた。それらは更に地中深くへと、私の身体を引きずり込もうとするようだった。しかし、その中で一際大きな手だけが肩に触れた。それは冷たいけれど、不思議と優しさも感じられる手だった。
 再び、いつの間にか手に持っていたスマホから通知音が鳴る。画面にはメッセージが表示されている。
「問題です。この物語の結末はどうなるでしょう?」
 私はその問いに答えられなかった。ただ涙を流しながらスマホを握りしめていた。そして次第に視界全体が真っ暗になっていく中で、声が聞こえた。
「また会おうね、美羽ちゃん」
 それだけを心に残して、私は意識を失った。
 翌朝、二日酔いにも似た重たさを感じながら目覚めた。昨夜の出来事は夢か、それとも現実だったのか、わからないまま頭はぼんやりとしていて、自分でも何が本当なのか分からなくなっていた。
 沙織はキッチンで朝食を作っているようだった。その香ばしい匂いに少しだけ安堵しながら、私はテレビをつけた。
「速報です。昨夜未明、生田翔琉さん(26歳)が海岸で遺体となって発見されました」
 そのニュースキャスターの声に、私は思わず息を呑んだ。画面には翔琉の写真。見覚えのある笑顔が映し出されている。そして次の瞬間、ブンッという電子音と共にテレビ画面全体が真っ赤になった。
「え……?」
 リモコンでチャンネルを切り替えようとしたが、画面は真っ赤なまま動かない。カチャカチャと画面に向かってリモコンを操作するも、反応しない。画面には赤い背景に黒い文字で文字が浮かび上がった。
「問題です。この先、美羽ちゃんはどうなるでしょう?」
 その文字を見た瞬間、私は叫び声を上げてテレビを消した。しかし、その叫び声も虚しく響くだけだった。
 背後から滴る水音。それもひとつではなく複数だ。そして振り返った瞬間、身体が凍りついた。
 そこにはびしょ濡れの翔琉だけではなく、無数の手や見覚えのない顔、視線は私に向けられているが、一切目が合わない不気味な表情でこちらを向いている。
 直後、命というものを感じられないその無数の人々は凄まじい速度で、一斉に私へ向けて手を伸ばして――
「本日未明、大学生・三浦美羽さん(21歳)が自宅で死亡しているところを発見されました。死因について警察は調査中ですが、不審な点も多く……」
 キャスターは淡々と事件を報じていた。しかしその途中、不意に画面全体がブラックアウトし、赤黒い背景へと切り替わる。
 そして、大きな文字で、
「問題です。この物語、本当に終わったと思いますか?」
 その後、画面はニュースへと切り替わる。キャスター自身の顔が、びしょ濡れで苦痛にぐにゃぐにゃと歪んだ表情に変わり、水溜りに浮かぶ油の様に、映像がぐにゃぐにゃと揺れ、ぴちゃぴちゃと水音が鳴っている。
 しばらく、その奇妙な画面を映し出した後、ブンッと機械音を鳴らしてモニターの電源が落ちた。