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四章 友達 27

ー/ー



歩きながら奈々姉ちゃんと色んな話をした。今日のまさる君との話についてもだ。
「いじわるされているお友達を助けるなんて、望睦君は立派だねえ」
「なんで?」とぼくは首を傾げる。「友達じゃなくても、助けるよ」
 奈々姉ちゃんは目をぱちくりとさせ、不思議そうにぼくを見た。「偉い偉い」と頭を撫でてくる。壊れないようにそっと撫でてくるようで、優しかった。なぜか、泣きそうな気持ちになる。ぼくは目を逸らすと、猫が歩いているのが目に入った。
「あ、猫だ!」ぼくは指を差す。白と黒の模様が混ざった猫だった。
「シロクロの、ジュニアね」奈々姉ちゃんが得意げに呟く。ジュニアは警戒せずにのんびりと近づいてくる。
「ジュニア?」
「私が高校生の頃にね、この子の母猫がいたの」奈々姉ちゃんは話しながらジュニアの顎を掻く。気持ち良さそうに喉を鳴らしている。「見て、目元がどちらも白いでしょ。母猫は片目に黒色の模様がついていたの」
「そうなんだ」ぼくはジュニアのお腹を撫でる。いつの間にかゴロンと転がり、お腹を広げていた。「かわいいね」
「親子揃って、警戒心ゼロなんだから」奈々姉ちゃんはいつの間にか後ろに下がり、カメラを構えていた。「撮るよー」
 ぼくはピースサインをカメラに向ける。光らずにカシャっと音が鳴った。「いい写真ね。楽しそう」と奈々姉ちゃんは嬉しそうな表情だ。
 出てきた写真を見せてもらうと、お腹を広げて転がっているジュニアと、撫でながら反対の手はピースサインのぼくが写っていた。
「本当だ。楽しそう」帰ったらお母さんに見せようと思ったが慌てて首を振る。もう、知らないんだった。
「さて、お菓子でも買いに行こうか」
「お菓子!うん!行く!」ぼくは嬉しくて勢いよく立ち上がる。あ、と気づく頃にはジュニアがびっくりして走り去っていた。奈々姉ちゃんは「あーあ」とお腹を抱えて笑っていた。
 
 商店街は、ぼくが幼稚園の頃より人が増えて、開いているお店も増えたような気がする。奈々姉ちゃんは島の有名人だ。すれ違う人達に「奈々ちゃん、写真見たよお」と声をかけられたり、優しい笑顔を向けられたりしている。
「いらっしゃい」駄菓子屋に行くと男の店員さんが声をかけてきた。「奈々ちゃん、今日は可愛いお客さんを連れてきたねえ」
「そうなのよ」奈々姉ちゃんは微笑み、ぼくの頭に手を置いた。「弟と、喧嘩したみたいで」
「ぼくは悪くないもん」
「好きなお菓子、選んできていいわよ」と奈々姉ちゃんから言われたので、ぼくは棚の前で並べられたお菓子を眺めていた。幸登はポッキーなら喜ぶかな、と考えている自分に気づき、また首を振る。もう、知らないんだ。
 その間に二人は話し込んでいる。耳を傾けると、「この一年で少しずつ人が増えてきたんです。奈々ちゃんのお陰だよ」「いえ、私は写真を撮っただけなので。りょうすけさんが宣伝してくれたからです」などの会話が聞こえてきた。
 ガムや、グミ、十円チョコなどの小さいお菓子を組み合わせようと思ったが、ポテトチップスを選んだ。普通のより大きいけれど、これは一人で食べるつもりだ。まあ、お腹いっぱいになったら少しぐらい分けてもいいけど、とぼくは誰に言うでもなく言い訳をする。
 レジ向かい、奈々姉ちゃんに会計をしてもらう。男の店員さんが「弟君と仲良くね」と言ってきたのでぼくはこくり、と頷く。まだうん、と返事をしたくはなかったのだ。奈々姉ちゃんは困ったような顔で笑っていた。
 
「あれ?珍しい組み合わせ。何してるの?」駄菓子屋を出て、歩いていると声をかけられた。大人のようにがっしりとした体格で、高校のカバンを肩にかけている。ぼくは嬉しくて声を上げた。「ハルト兄ちゃん!」
「おう、望睦」ハルト兄ちゃんは笑い、白い歯を見せる。かっこ良くて爽やかで、ぼくの憧れだった。「奈々(ねえ)と散歩してたのか?」
 ハルト兄ちゃんは奈々姉ちゃんの事を『奈々姉』と呼ぶ。ぼくはそれを真似して『奈々姉ちゃん』と呼ぶようになったのだ。「そうだよ。お散歩してたんだー」
「いいなあ、楽しそうで」ハルト兄ちゃんが頭をがしがしと撫でてくる。身長が高く、大きな手で撫でられるのは、ちょっと怖い。それに奈々姉ちゃんと違って、力が強かった。でもそれが仲良しの感じがして、ぼくは嬉しくなる。
「ハルト君は家に帰るところ?」奈々姉ちゃんが聞く。
「いや、これからカフェに寄って、発表の原稿作りをする予定」
「ああ、もう少しだもんね」と奈々姉ちゃんは納得するように頷いている。「じゃあ、私たちも行っていいかな?」
「いいよ。行こうか」
 商店街を出て、しばらく歩いた先にカフェがあった。この辺りは人が住んでいないお家が沢山ある。ぼくが生まれるよりずっと前に『海が見渡せる島』として沢山お家を建てたが、住む人があまり集まらなかったらしい。そのことを前にお母さんが話していた。
 その中で一つのお家を改装して、カフェを開いたのだ。『海が見えるカフェ』として根強い人気のお店なのだ、とこれまたお母さんが話していた。友達と何度か行っているらしい。
 コーヒー代とおやつのマフィン代は、奈々姉ちゃんが払ってくれた。それなのにハルト兄ちゃんは店員さんに百円を渡している。お金はもう払ったのに、と思っていると奈々姉ちゃんが説明をしてくれた。
「このカフェはね。学生さんの勉強部屋として使うこともできるのよ」
「そうなんだ。ぼくも宿題、持ってくればよかった」
「望睦も中学、高校くらいになったらさ、いっぱい勉強しにくるといいよ」ハルト兄ちゃんがぼくの頭に手を置いて、笑いかける。
「うん、ぼくもハルト兄ちゃんみたいにいっぱい勉強するよ!」
「ここ一年で、変わったんでしたっけ?」ハルト兄ちゃんが店員さんに質問する。
「そうなんですよ。宣伝と提案をしてくれた奈々さん達のお陰です」
 奈々姉ちゃんはどこに行っても褒められている。でも、まさる君みたいにいばったりはしない。「いえ、友達が言っていたのを提案しただけです。この島で自分の部屋がある人は少ないじゃないですか」
「そこが盲点だったんですよ。お客さんが増えて、助かってます」店員さんは頭を下げた。「では、ごゆっくり」
 ぼくには何の話かわからなかったけれど、奈々姉ちゃんはすごいらしい。ぼくも褒められたような気持ちになった


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歩きながら奈々姉ちゃんと色んな話をした。今日のまさる君との話についてもだ。
「いじわるされているお友達を助けるなんて、望睦君は立派だねえ」
「なんで?」とぼくは首を傾げる。「友達じゃなくても、助けるよ」
 奈々姉ちゃんは目をぱちくりとさせ、不思議そうにぼくを見た。「偉い偉い」と頭を撫でてくる。壊れないようにそっと撫でてくるようで、優しかった。なぜか、泣きそうな気持ちになる。ぼくは目を逸らすと、猫が歩いているのが目に入った。
「あ、猫だ!」ぼくは指を差す。白と黒の模様が混ざった猫だった。
「シロクロの、ジュニアね」奈々姉ちゃんが得意げに呟く。ジュニアは警戒せずにのんびりと近づいてくる。
「ジュニア?」
「私が高校生の頃にね、この子の母猫がいたの」奈々姉ちゃんは話しながらジュニアの顎を掻く。気持ち良さそうに喉を鳴らしている。「見て、目元がどちらも白いでしょ。母猫は片目に黒色の模様がついていたの」
「そうなんだ」ぼくはジュニアのお腹を撫でる。いつの間にかゴロンと転がり、お腹を広げていた。「かわいいね」
「親子揃って、警戒心ゼロなんだから」奈々姉ちゃんはいつの間にか後ろに下がり、カメラを構えていた。「撮るよー」
 ぼくはピースサインをカメラに向ける。光らずにカシャっと音が鳴った。「いい写真ね。楽しそう」と奈々姉ちゃんは嬉しそうな表情だ。
 出てきた写真を見せてもらうと、お腹を広げて転がっているジュニアと、撫でながら反対の手はピースサインのぼくが写っていた。
「本当だ。楽しそう」帰ったらお母さんに見せようと思ったが慌てて首を振る。もう、知らないんだった。
「さて、お菓子でも買いに行こうか」
「お菓子!うん!行く!」ぼくは嬉しくて勢いよく立ち上がる。あ、と気づく頃にはジュニアがびっくりして走り去っていた。奈々姉ちゃんは「あーあ」とお腹を抱えて笑っていた。
 商店街は、ぼくが幼稚園の頃より人が増えて、開いているお店も増えたような気がする。奈々姉ちゃんは島の有名人だ。すれ違う人達に「奈々ちゃん、写真見たよお」と声をかけられたり、優しい笑顔を向けられたりしている。
「いらっしゃい」駄菓子屋に行くと男の店員さんが声をかけてきた。「奈々ちゃん、今日は可愛いお客さんを連れてきたねえ」
「そうなのよ」奈々姉ちゃんは微笑み、ぼくの頭に手を置いた。「弟と、喧嘩したみたいで」
「ぼくは悪くないもん」
「好きなお菓子、選んできていいわよ」と奈々姉ちゃんから言われたので、ぼくは棚の前で並べられたお菓子を眺めていた。幸登はポッキーなら喜ぶかな、と考えている自分に気づき、また首を振る。もう、知らないんだ。
 その間に二人は話し込んでいる。耳を傾けると、「この一年で少しずつ人が増えてきたんです。奈々ちゃんのお陰だよ」「いえ、私は写真を撮っただけなので。りょうすけさんが宣伝してくれたからです」などの会話が聞こえてきた。
 ガムや、グミ、十円チョコなどの小さいお菓子を組み合わせようと思ったが、ポテトチップスを選んだ。普通のより大きいけれど、これは一人で食べるつもりだ。まあ、お腹いっぱいになったら少しぐらい分けてもいいけど、とぼくは誰に言うでもなく言い訳をする。
 レジ向かい、奈々姉ちゃんに会計をしてもらう。男の店員さんが「弟君と仲良くね」と言ってきたのでぼくはこくり、と頷く。まだうん、と返事をしたくはなかったのだ。奈々姉ちゃんは困ったような顔で笑っていた。
「あれ?珍しい組み合わせ。何してるの?」駄菓子屋を出て、歩いていると声をかけられた。大人のようにがっしりとした体格で、高校のカバンを肩にかけている。ぼくは嬉しくて声を上げた。「ハルト兄ちゃん!」
「おう、望睦」ハルト兄ちゃんは笑い、白い歯を見せる。かっこ良くて爽やかで、ぼくの憧れだった。「奈々|姉《ねえ》と散歩してたのか?」
 ハルト兄ちゃんは奈々姉ちゃんの事を『奈々姉』と呼ぶ。ぼくはそれを真似して『奈々姉ちゃん』と呼ぶようになったのだ。「そうだよ。お散歩してたんだー」
「いいなあ、楽しそうで」ハルト兄ちゃんが頭をがしがしと撫でてくる。身長が高く、大きな手で撫でられるのは、ちょっと怖い。それに奈々姉ちゃんと違って、力が強かった。でもそれが仲良しの感じがして、ぼくは嬉しくなる。
「ハルト君は家に帰るところ?」奈々姉ちゃんが聞く。
「いや、これからカフェに寄って、発表の原稿作りをする予定」
「ああ、もう少しだもんね」と奈々姉ちゃんは納得するように頷いている。「じゃあ、私たちも行っていいかな?」
「いいよ。行こうか」
 商店街を出て、しばらく歩いた先にカフェがあった。この辺りは人が住んでいないお家が沢山ある。ぼくが生まれるよりずっと前に『海が見渡せる島』として沢山お家を建てたが、住む人があまり集まらなかったらしい。そのことを前にお母さんが話していた。
 その中で一つのお家を改装して、カフェを開いたのだ。『海が見えるカフェ』として根強い人気のお店なのだ、とこれまたお母さんが話していた。友達と何度か行っているらしい。
 コーヒー代とおやつのマフィン代は、奈々姉ちゃんが払ってくれた。それなのにハルト兄ちゃんは店員さんに百円を渡している。お金はもう払ったのに、と思っていると奈々姉ちゃんが説明をしてくれた。
「このカフェはね。学生さんの勉強部屋として使うこともできるのよ」
「そうなんだ。ぼくも宿題、持ってくればよかった」
「望睦も中学、高校くらいになったらさ、いっぱい勉強しにくるといいよ」ハルト兄ちゃんがぼくの頭に手を置いて、笑いかける。
「うん、ぼくもハルト兄ちゃんみたいにいっぱい勉強するよ!」
「ここ一年で、変わったんでしたっけ?」ハルト兄ちゃんが店員さんに質問する。
「そうなんですよ。宣伝と提案をしてくれた奈々さん達のお陰です」
 奈々姉ちゃんはどこに行っても褒められている。でも、まさる君みたいにいばったりはしない。「いえ、友達が言っていたのを提案しただけです。この島で自分の部屋がある人は少ないじゃないですか」
「そこが盲点だったんですよ。お客さんが増えて、助かってます」店員さんは頭を下げた。「では、ごゆっくり」
 ぼくには何の話かわからなかったけれど、奈々姉ちゃんはすごいらしい。ぼくも褒められたような気持ちになった