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三章 山岸豊 33

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山岸は超能力は熱の調整ができるようになっていた。田川の時は勢い余って全身を燃やしてしまったが、現在は高熱を出した時に近い状態を出せるようになったのだ。
 西田にその能力を使い、病院に連れて行く(てい)を装い、車へと連れ込んだ。西田は今、手足を手錠で拘束され、後部座席に座っている。金属同士がぶつかり合い無機質な音を立てる。抵抗するが、外れない。
「あなたは一体、何者なんですか」誰か、助けてくれ、と西田が叫ぶが山岸はそれを止めることはしなかった。人気(ひとけ)の無い道を通り、山奥で車を停めていた。当然、助けは届かない。
「時間がないんだ。決断してくれ」山岸に今必要なのは秋菜の情報で、収集を西田に引き受けてもらうことだった。それさえ判明すれば計画は進み、夏生と対峙ができる。「秋菜の近況を調べてくれるか?」
 こくんこくんと西田が頷く。「調べるから。命だけは、助けてくれ」みっともなく懇願している。
「言ったな?ちなみに約束を破ったり、警察や周りに話したら……」山岸は右手の人差し指に炎を灯す。「学校や自宅を燃やすからな」免許証を確認したため、住所は割れていた。西田が涙や鼻水にまみれた表情で必死に頷いた。
 山岸は西田をファミレスで降ろした。たっぷり脅したのだから問題ないだろう。
 後日、情報を得た西田を呼び出した。秋菜の帰宅時間帯や塾の日程などを話してくれた。
 後部座席で淡々と話す西田の様子は明らかに怯えており、気味がよかった。助手席には黒い工具鞄が置いた。蓋を少し開けて、中身が少し見える状態にしている。千枚通しやペンチが顔を覗かせ、それだけでも無言の牽制になった。
 実際、工具鞄を目にした西田は青ざめた表情をしていた。体格の良い高校生を従わせることは山岸にとって過去の自分の救済と同様だった。
「よくやった」山岸は感謝を伝える。
「これで、これで、大丈夫ですか」西田は怯えを隠そうともしない。山岸は笑いが止まらなかった。守るものがあると人はこんなにも弱くなるのか、と。
 誘拐決行日、山岸は廃倉庫で一人佇んでいた。誘拐は男たちに任せていた。彼らは矢吹から派遣された男達で「必要になったらいつでも使え」と言われていた。修羅場を生き抜いた者たちだ。案の定、誘拐は難なく成功し、山岸は秋菜と対面した。
 翌日、情報を得た山岸は廃倉庫で夏生の到着を待っていた。背後には両手両足を拘束された秋菜がいる。その表情は恐怖で強張っていた。
 廃倉庫の入り口が爆風で吹き飛んだ。煙の中から、シルエットが浮かび上がる。髪を(なび)かせた少女の姿が。
「来たか……」山岸は笑みを浮かべ、椅子から立ち上がった。


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山岸は超能力は熱の調整ができるようになっていた。田川の時は勢い余って全身を燃やしてしまったが、現在は高熱を出した時に近い状態を出せるようになったのだ。
 西田にその能力を使い、病院に連れて行く|体《てい》を装い、車へと連れ込んだ。西田は今、手足を手錠で拘束され、後部座席に座っている。金属同士がぶつかり合い無機質な音を立てる。抵抗するが、外れない。
「あなたは一体、何者なんですか」誰か、助けてくれ、と西田が叫ぶが山岸はそれを止めることはしなかった。|人気《ひとけ》の無い道を通り、山奥で車を停めていた。当然、助けは届かない。
「時間がないんだ。決断してくれ」山岸に今必要なのは秋菜の情報で、収集を西田に引き受けてもらうことだった。それさえ判明すれば計画は進み、夏生と対峙ができる。「秋菜の近況を調べてくれるか?」
 こくんこくんと西田が頷く。「調べるから。命だけは、助けてくれ」みっともなく懇願している。
「言ったな?ちなみに約束を破ったり、警察や周りに話したら……」山岸は右手の人差し指に炎を灯す。「学校や自宅を燃やすからな」免許証を確認したため、住所は割れていた。西田が涙や鼻水にまみれた表情で必死に頷いた。
 山岸は西田をファミレスで降ろした。たっぷり脅したのだから問題ないだろう。
 後日、情報を得た西田を呼び出した。秋菜の帰宅時間帯や塾の日程などを話してくれた。
 後部座席で淡々と話す西田の様子は明らかに怯えており、気味がよかった。助手席には黒い工具鞄が置いた。蓋を少し開けて、中身が少し見える状態にしている。千枚通しやペンチが顔を覗かせ、それだけでも無言の牽制になった。
 実際、工具鞄を目にした西田は青ざめた表情をしていた。体格の良い高校生を従わせることは山岸にとって過去の自分の救済と同様だった。
「よくやった」山岸は感謝を伝える。
「これで、これで、大丈夫ですか」西田は怯えを隠そうともしない。山岸は笑いが止まらなかった。守るものがあると人はこんなにも弱くなるのか、と。
 誘拐決行日、山岸は廃倉庫で一人佇んでいた。誘拐は男たちに任せていた。彼らは矢吹から派遣された男達で「必要になったらいつでも使え」と言われていた。修羅場を生き抜いた者たちだ。案の定、誘拐は難なく成功し、山岸は秋菜と対面した。
 翌日、情報を得た山岸は廃倉庫で夏生の到着を待っていた。背後には両手両足を拘束された秋菜がいる。その表情は恐怖で強張っていた。
 廃倉庫の入り口が爆風で吹き飛んだ。煙の中から、シルエットが浮かび上がる。髪を靡《なび》かせた少女の姿が。
「来たか……」山岸は笑みを浮かべ、椅子から立ち上がった。