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三章 山岸豊 29

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山岸は裏社会の人間と繋がりを持った。男は矢吹(やぶき)と名乗り、山岸に仕事を斡旋した。
 依頼された人間を恐喝し、情報を得ることや殺すことも当然あった。山岸の超能力は証拠を残さない殺人方法として重宝された。連れてきた人間を拷問し、情報を得られれば焼却する。気がつけば殺人が日常となっていた。命乞いをする人間を燃やすのに初めは抵抗があったが、次第に何も感じなくなっていた。
「山岸、あんたここに来る前に、人を殺しただろう?」仕事を終え、ビルの屋上で会話をしていた。矢吹はタバコを山岸に向ける。その頃には山岸は呼び捨てで呼ばれ、山岸は敬語を使うようになっていた。
「どうして分かるんですか?」山岸は指先に蝋燭程の火を灯し、タバコの先端に向けた。
 おう、サンキュー、と矢吹は呟き「目だよ。目を見ればわかる」火のついたタバコを咥えた。「目の奥が、笑っていないんだよ」 
「目、ですか」矢吹は笑う。
「目は口ほどに物を言う、って諺があるだろ?」矢吹は冗談めかす。「その力で殺したのか?」
「はい。この力で、殺しました」山岸は自分の右手に目を向ける。あの時、田川を燃やした感覚は未だに忘れられなかった。
「そいつはとは何か関係があったのか?」
「俺は、高校時代にいじめを受けていました。いや、いじめだなんて生易しいものじゃない。立派な暴行、恐喝でした」そのような人間だったのに、今は平気で人を殺している、と山岸は苦笑した。
 矢吹の前になると教会で懺悔するかのように話してしまう。それは矢吹のこれまでの経験からだろう。彼は裏社会の人間で数々の修羅場を乗り越えてきた。そのことから何を話しても大丈夫だろう、という信頼があった。
 現役の頃は確かな腕前として恐れられていた、と同僚がそう話していた。矢吹は現在、非合法な依頼を請け負う窓口の役割を担っている。「子供や主婦、果ては高齢者まで、金さえ積まれればどんな依頼も受ける」それが彼のモットーで口癖だった。「子供や主婦って、冗談でしょう」と矢吹に話したことがある。彼は「意外と多いものだ」と平然と答えていた。「愛情や金が絡んだ時、人の本性が浮き彫りになる」と。
「後悔しているか?」矢吹が聞いてくる。質問ばかりでまるで尋問みたいだな、と山岸は苦笑する。
「初めは、復讐が原動力とはいえ、妻子持ちの人間を殺したことに罪悪感を感じていました。けれど、今はわからなくなりました。殺しが、日常になり過ぎてしまいました」
「俺は、未だに殺した人間の夢を見る」矢吹が淡々と話す。その目は虚だった。
「夢、ですか」矢吹程の男でも悪夢を見るのか、と的外れなことを思った。山岸は夢に殺した人間が出てきたことはない。夢に出てくる頃には何人殺しているだろうか、とぼんやりと思った。
 背後でドアが開く音がする。振り向くとスーツを着た男達が拳銃を構えていた。どうやら報復のようだ。矢吹と目が合い、山岸は頷いた。手の平に火球を作り、男達に手の平を向けた。


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山岸は裏社会の人間と繋がりを持った。男は|矢吹《やぶき》と名乗り、山岸に仕事を斡旋した。
 依頼された人間を恐喝し、情報を得ることや殺すことも当然あった。山岸の超能力は証拠を残さない殺人方法として重宝された。連れてきた人間を拷問し、情報を得られれば焼却する。気がつけば殺人が日常となっていた。命乞いをする人間を燃やすのに初めは抵抗があったが、次第に何も感じなくなっていた。
「山岸、あんたここに来る前に、人を殺しただろう?」仕事を終え、ビルの屋上で会話をしていた。矢吹はタバコを山岸に向ける。その頃には山岸は呼び捨てで呼ばれ、山岸は敬語を使うようになっていた。
「どうして分かるんですか?」山岸は指先に蝋燭程の火を灯し、タバコの先端に向けた。
 おう、サンキュー、と矢吹は呟き「目だよ。目を見ればわかる」火のついたタバコを咥えた。「目の奥が、笑っていないんだよ」 
「目、ですか」矢吹は笑う。
「目は口ほどに物を言う、って諺があるだろ?」矢吹は冗談めかす。「その力で殺したのか?」
「はい。この力で、殺しました」山岸は自分の右手に目を向ける。あの時、田川を燃やした感覚は未だに忘れられなかった。
「そいつはとは何か関係があったのか?」
「俺は、高校時代にいじめを受けていました。いや、いじめだなんて生易しいものじゃない。立派な暴行、恐喝でした」そのような人間だったのに、今は平気で人を殺している、と山岸は苦笑した。
 矢吹の前になると教会で懺悔するかのように話してしまう。それは矢吹のこれまでの経験からだろう。彼は裏社会の人間で数々の修羅場を乗り越えてきた。そのことから何を話しても大丈夫だろう、という信頼があった。
 現役の頃は確かな腕前として恐れられていた、と同僚がそう話していた。矢吹は現在、非合法な依頼を請け負う窓口の役割を担っている。「子供や主婦、果ては高齢者まで、金さえ積まれればどんな依頼も受ける」それが彼のモットーで口癖だった。「子供や主婦って、冗談でしょう」と矢吹に話したことがある。彼は「意外と多いものだ」と平然と答えていた。「愛情や金が絡んだ時、人の本性が浮き彫りになる」と。
「後悔しているか?」矢吹が聞いてくる。質問ばかりでまるで尋問みたいだな、と山岸は苦笑する。
「初めは、復讐が原動力とはいえ、妻子持ちの人間を殺したことに罪悪感を感じていました。けれど、今はわからなくなりました。殺しが、日常になり過ぎてしまいました」
「俺は、未だに殺した人間の夢を見る」矢吹が淡々と話す。その目は虚だった。
「夢、ですか」矢吹程の男でも悪夢を見るのか、と的外れなことを思った。山岸は夢に殺した人間が出てきたことはない。夢に出てくる頃には何人殺しているだろうか、とぼんやりと思った。
 背後でドアが開く音がする。振り向くとスーツを着た男達が拳銃を構えていた。どうやら報復のようだ。矢吹と目が合い、山岸は頷いた。手の平に火球を作り、男達に手の平を向けた。