商談13 山鯨
ー/ー
俺の心は猪突猛進、完食に向けて待ったなし。
「源さん、えらく食いついてますねぇ?」
そんな様子を、凪さんは興味深く見つめている。彼女にとって、今の俺は獲物を貪る野獣のように映っているかもしれない。だが、それでも俺は箸を止めるわけにはいかない。食のマタドールはいつだって命懸けなんだ!
「......ふぅ、食った食った!」
一本うどん、見事に完食。強靭な弾力を持つうどんに苦戦、加えて歯ごたえのある猪肉という連戦。俺の顎は疲労困憊だ。あとで食事の様子をSNSへ投稿しよう。この戦いの記録を、後世へ伝えていかねばならない。
そんな矢先、店の扉が勢いよく開かれる。先程から姿が見えなかった凪さんのお父さんだったが、何やら血相を変えて店内へ入って来た。
「――凪、ついに山の主を仕留めたぞぉ!!」
山の主? 昨日、集落を騒がせた例のイノシシのことだろうか? それにしても大袈裟だ。
「あの大イノシシ!? 今行く!!」
それを聞いた凪さんも、大慌てで外へ向かう。とりあえず、食後の食器はシンクへ下げておこうか。
食器を下膳した俺も外へ向かう。すると、そこでは複数人が何かを囲っていた。
「こいつが山の主!? 大物じゃねぇか!」
猟師仲間がそいつをみて感嘆の声を上げる。いくら山の主といえど、所詮は豚と同種だろう? そんな俺の疑念は、そいつを見た瞬間に瓦解する。
「う、嘘だろう!?」
そいつは豚と同種とは思えない程に巨大で、どちらかというと牛に近い体長だ。これは山の主といっても過言ではない。
「全く、人騒がせなイノシシだ」
凪さんのお父さんは安堵した表情で話す。一方、両手足を縄で縛られたイノシシは憐れな目で俺を見つめている。きっと、自身の行く末を悟って恐怖しているのだろう。そんな目をされても、今の俺にお前を救うことは出来ない。せめて、来世でイノシシにならないことを願うばかりだ。
「これだけ大きければ、当分猪肉には困らないだろうな」
猟師仲間は嬉々としている。どういうわけか、俺も猪肉を分けてもらえることになった。海だけでなく、山の鯨の恩恵を享受できる俺は実に幸運。ここは、山の神に感謝の意を表したい。
麦はら屋を後にした俺は、バス停で待機することにした。偶然にも、次の便は数分待てばやって来るらしい。さて、待合席で一息つくとするか。
ここは鯨の町。大自然に囲まれ、気さくで心優しい町民が集う。その名は千葉県誕生町。
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「源さん、えらく食いついてますねぇ?」
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「......ふぅ、食った食った!」
一本うどん、見事に完食。強靭な弾力を持つうどんに苦戦、加えて歯ごたえのある猪肉という連戦。俺の顎は疲労困憊だ。あとで食事の様子をSNSへ投稿しよう。この戦いの記録を、後世へ伝えていかねばならない。
そんな矢先、店の扉が勢いよく開かれる。先程から姿が見えなかった凪さんのお父さんだったが、何やら血相を変えて店内へ入って来た。
「――凪、ついに山の主を仕留めたぞぉ!!」
山の主? 昨日、集落を騒がせた例のイノシシのことだろうか? それにしても大袈裟だ。
「あの大イノシシ!? 今行く!!」
それを聞いた凪さんも、大慌てで外へ向かう。とりあえず、食後の食器はシンクへ下げておこうか。
食器を下膳した俺も外へ向かう。すると、そこでは複数人が何かを囲っていた。
「こいつが山の主!? 大物じゃねぇか!」
猟師仲間がそいつをみて感嘆の声を上げる。いくら山の主といえど、所詮は豚と同種だろう? そんな俺の疑念は、そいつを見た瞬間に瓦解する。
「う、嘘だろう!?」
そいつは豚と同種とは思えない程に巨大で、どちらかというと牛に近い体長だ。これは山の主といっても過言ではない。
「全く、人騒がせなイノシシだ」
凪さんのお父さんは安堵した表情で話す。一方、両手足を縄で縛られたイノシシは憐れな目で俺を見つめている。きっと、自身の行く末を悟って恐怖しているのだろう。そんな目をされても、今の俺にお前を救うことは出来ない。せめて、来世でイノシシにならないことを願うばかりだ。
「これだけ大きければ、当分猪肉には困らないだろうな」
猟師仲間は嬉々としている。どういうわけか、俺も猪肉を分けてもらえることになった。海だけでなく、山の鯨の恩恵を享受できる俺は実に幸運。ここは、山の神に感謝の意を表したい。
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ここは鯨の町。大自然に囲まれ、気さくで心優しい町民が集う。その名は千葉県誕生町。