二章 松原秋菜 18
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二人はお揃いのカチューシャをつけて、アトラクションの列に並んでいた。ただ待つのも手持ち無沙汰なため、キャラクターの形を模したのアイスを食べていた。流石、大人気の遊園地。アトラクションだけでなく、グッズの購入、食事、果てはトイレなど、何をするにも並んでばかりだった。
夏生が「このままだと修行僧にでもなれそう」と嘆いていた。待ち時間も二人で話していればあっという間で秋菜は苦には感じなかった。夏生も同じだったのだろう。小言を言いながらもその表情は明るかった。
「ねえ、やっぱりやめない?」秋菜達の番が回ってくるまでもう僅かなところで夏生が臆病風を吹かせ始めた。「ジェットコースター苦手なの」
「嫌だ。せっかくここまで並んだんだから今更引き返せないよ」秋菜が却下すると「そんなあ」と夏生はがっくりと肩を落とした。
「大変お待たせ致しました。次の方、どうぞ」軽快な口調で女性の誘導員が待機列の柵を動かし、道を作る。
「ほら、夏生、行くよ」夏生の背中を押す。
「わかったから。行くから押さないで」懇願する夏生の姿が可笑しくて秋菜は噴き出してしまう。
座席に乗り、安全レバーを装着した夏生の表情は強張っていた。
帰りは出口への順路に沿って歩くことになる。秋菜は気分が高揚し「また乗りたいな」と呟き、軽い足取りだった。
夏生は「二度と乗るもんか」と吐き捨て、重い足取りだ。グッズ売り場の前で二人は足を止める。モニターには、乗車中に撮影された写真がスライドショー形式で表示されていた。二人の写真が表示されると秋菜は腹を抱えて笑った。
夏生は「嫌だー。もう」と顔を抑えている。ジェットコースターが上り坂を終え、猛烈な速度で降っていく瞬間の写真だった。秋菜は両手を離し、万歳の状態で満面の笑みを浮かべている。夏生は目を閉じ、身体を強張らせている。掴んだ安全バーを握り潰しそうだった。
「あー、笑いすぎて涙出る。お腹痛い。この写真、あまりに違いすぎるって」
「だから乗りたくなかったんだよ」
「この写真、買おう」秋菜が提案する。
「え、買うの?」
「買う買う。いい思い出になるよ」秋菜はレジへと向かっていく。「落ち込んだ時にはこの写真見れば元気がもらえると思うんだよね」
「それは秋菜だけでしょ。私は見る度に恥ずかしい気持ちになるよ」
「それも思い出ということで」と秋菜は締めくくり、金額を支払った。
二枚の写真を受け取り、そのうちの一枚を夏生に手渡す。
「ねえ、高校生になったらさ、バイトでもして二人でお金貯めようよ。そして卒業旅行で遊びに来よう。その時まで夏生はジェットコースターを克服しておくこと」秋菜は夏生に指を向ける。
夏生は顔を引き攣らせ「秋菜って意外と強引なとこあるよね。そう言われたことない?」と、たじろいだ。
「う、お母さんとかに時々言われます」秋菜は申し訳なさそうに頭を下げる。
「全く。人の気持ちを考えないんだから」夏生はため息をつくが、その表情は笑っていた。「うん、いいよ。卒業旅行で行こう。約束だよ」
「よし、そうと決まれば残りも楽しむぞ。次はお化け屋敷だ」秋菜は夏生の手を掴み、出口へと駆け出した。
「もっと優しい系のアトラクションに乗ろうよ」夏生が後ろで嘆いていた。
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夏生が「このままだと修行僧にでもなれそう」と嘆いていた。待ち時間も二人で話していればあっという間で秋菜は苦には感じなかった。夏生も同じだったのだろう。小言を言いながらもその表情は明るかった。
「ねえ、やっぱりやめない?」秋菜達の番が回ってくるまでもう僅かなところで夏生が臆病風を吹かせ始めた。「ジェットコースター苦手なの」
「嫌だ。せっかくここまで並んだんだから今更引き返せないよ」秋菜が却下すると「そんなあ」と夏生はがっくりと肩を落とした。
「大変お待たせ致しました。次の方、どうぞ」軽快な口調で女性の誘導員が待機列の柵を動かし、道を作る。
「ほら、夏生、行くよ」夏生の背中を押す。
「わかったから。行くから押さないで」懇願する夏生の姿が可笑しくて秋菜は噴き出してしまう。
座席に乗り、安全レバーを装着した夏生の表情は強張っていた。
帰りは出口への順路に沿って歩くことになる。秋菜は気分が高揚し「また乗りたいな」と呟き、軽い足取りだった。
夏生は「二度と乗るもんか」と吐き捨て、重い足取りだ。グッズ売り場の前で二人は足を止める。モニターには、乗車中に撮影された写真がスライドショー形式で表示されていた。二人の写真が表示されると秋菜は腹を抱えて笑った。
夏生は「嫌だー。もう」と顔を抑えている。ジェットコースターが上り坂を終え、猛烈な速度で降っていく瞬間の写真だった。秋菜は両手を離し、万歳の状態で満面の笑みを浮かべている。夏生は目を閉じ、身体を強張らせている。掴んだ安全バーを握り潰しそうだった。
「あー、笑いすぎて涙出る。お腹痛い。この写真、あまりに違いすぎるって」
「だから乗りたくなかったんだよ」
「この写真、買おう」秋菜が提案する。
「え、買うの?」
「買う買う。いい思い出になるよ」秋菜はレジへと向かっていく。「落ち込んだ時にはこの写真見れば元気がもらえると思うんだよね」
「それは秋菜だけでしょ。私は見る度に恥ずかしい気持ちになるよ」
「それも思い出ということで」と秋菜は締めくくり、金額を支払った。
二枚の写真を受け取り、そのうちの一枚を夏生に手渡す。
「ねえ、高校生になったらさ、バイトでもして二人でお金貯めようよ。そして卒業旅行で遊びに来よう。その時まで夏生はジェットコースターを克服しておくこと」秋菜は夏生に指を向ける。
夏生は顔を引き攣らせ「秋菜って意外と強引なとこあるよね。そう言われたことない?」と、たじろいだ。
「う、お母さんとかに時々言われます」秋菜は申し訳なさそうに頭を下げる。
「全く。人の気持ちを考えないんだから」夏生はため息をつくが、その表情は笑っていた。「うん、いいよ。卒業旅行で行こう。約束だよ」
「よし、そうと決まれば残りも楽しむぞ。次はお化け屋敷だ」秋菜は夏生の手を掴み、出口へと駆け出した。
「もっと優しい系のアトラクションに乗ろうよ」夏生が後ろで嘆いていた。