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一章 安藤夏生 3

ー/ー



その日は実験の授業で、夏生は水の入ったビーカーを落としてしまった。
 恐らく、肘が当たったのだろう。夏生が気づき、「あっ」と呟く頃には床に落ちる寸前だった。夏生は反射的に手を伸ばした。
 ビーカーは重力に抗い、静止する。注ぎ口は床を向いていたが無意識に水がこぼれないように超能力で抑え込んだ。まずい、と思い夏生は超能力を解除をした。落下の勢いを殺されたビーカーがコロコロと床を転がり、こぼれた水が広がっていく。
 そのまま落ちていれば落下速度と衝撃で間違いなく割れていた。「え」と同じ班員で、隣に居た西田が声を上げる。「安藤、何、今の?」
 落ちる瞬間を目撃された。夏生は全身に緊張が走る。どう誤魔化すべきか頭が真っ白になった。周りが実験の手を止めて西田を注目する。
「あ、ごめんね。ビーカー落としちゃった」夏生が何事もなかったように振る舞い、「先生、ごめんなさい」と頭を下げ「今すぐ掃除します」雑巾を掃除用具入れに取りに向かった。
「安藤、怪我はないか。大丈夫か?」と先生は心配そうに声をかけてくる。
「はい、大丈夫です」夏生はこぼれた水を雑巾で拭いた。西田の表情を見ることができなかった。
「いや、そうじゃなくて」西田が呟く。「今、ビーカーが浮いてたけど」と言った。
 西田と仲の良い友人達が笑う。「西田、お前何言ってんだよ」
「本当なんだって」 
「西田、ふざけたことを言うな」先生が嗜める。不幸中の幸いと言うべきか西田はお調子者でよく冗談を言う生徒だった。先生はまともにとりあわない。
「だって、水が入ってたのに割れなかったんですよ。それに落ちる時に水がこぼれてなかった」西田が不満げに言い返す。「安藤が手を伸ばしたら止まったんだ」
「不思議なこともあるもんだなあ」先生が話を合わせる。
 生徒達は成り行きを不思議そうに眺めている。「西田がまた変なこと言ってる」「授業止めるのやめてほしいよね」「何かあったのかな?」とざわめく。不穏な空気を察知したのだろう、秋菜が「何言ってるの。そんなことないじゃない」と加勢する。
「なんで……誰も信じてくれないんだよ」消え入るような声で、西田がそう呟いたのを夏生は聞いた。「本当なんだって」西田が頑なに主張する。
「気のせいだって」秋菜も引き下がらない。

 西田も頭に血が昇ったのか「何で安藤の肩を持つんだよ。いつも一緒にいるからお前も何か隠してんだろ」と激しく罵り始めた。
 お互いが引くに引けなくなったところで手を叩く音が実験室に響く。「はいはい」と先生が仲裁に入る。「話は後でゆっくり聞くから授業に戻りなさい」と面倒くさそうに言った。
 西田と秋菜が言い争っている間、夏生は雑巾を洗い、愛想笑いをして、頷くことしかできなかった。
 授業を終え、片付けをしていると西田が「安藤、お前いつも松原と一緒にいるよな」と夏生に声をかけてきた。「他の奴らとは話さないし、なんか気味悪いよ」と言う。
『奴ら』とクラスメイトを形容するところに、西田の傲慢さが垣間見える。そして夏生を見るその表情は、得体の知れない生き物を見るようだ。人として見ていない。「何なんだよ」と吐き捨てる。
 夏生は目を合わせられずに俯いていた。隣で様子を見ていた秋菜が「西田、最低」と言う。「お前は入ってくんな」と西田は言い「なんか言えよ。気持ち悪い」と立ち去っていく。
「何よあいつ、ほんと最低ね」と秋菜が西田の背中に吐き捨てた。夏生は西田から向けられた表情が頭の中から離れなかった。
 その後、腹いせに変な噂を流したのか、夏生と秋菜はクラスメイトから距離を置かれるようになった。
 間一髪だった。大ごとにならなかったのは西田のクラスでの立ち位置、先生の仲裁、秋菜のフォロー、さまざまな要因が重なったからだ。
 もう一人、目撃者がいたらどうなっていただろう。次も都合よく乗り切れるとは限らない。外で超能力を使わないことと、秋菜への負い目が、より一層、強くなったのだった。
 
「あれ?夏生、まだ帰ってなかったんだ?」と秋菜が背後から声をかけてきた。眉を落とし、どこか寂しそうな表情を浮かべている。
 いつの間にか時間が経っていたらしい。土手では試合が始まっていた。
「うん。野球を見てたら夢中になっちゃった」と誤魔化す。「日直の仕事、お疲れ様」
秋菜はいつも一緒にいてくれる。困った時には助けてくれる存在だ。
でもこのままでは秋菜の未来を奪ってしまう。夏生は「秋菜、あのさ」と切り出した。
「ん?どうしたの」夏生の隣に腰を下ろす。
「秋菜、いつも一緒にいてくれてありがとね」と前置きをし「もう高校生だし、超能力を制御できるようになったからさ、他の友達と遊んでもいいんだよ?」と切り出した。
 昼休みに『週末は塾がある』と春奈と真冬の誘いを断っていた秋菜。その日に塾があることは事実だが、スケジュールを調整してもらい、裏山での修行に付き合ってもらう日だった。
 しかし別な予定があればそちらを優先して良いと伝えている。それなのに自分のことは後回しで、夏生に合わせたことに申し訳なさを感じていた。
これまでと同じことになってはいけない。秋菜には普通の学生生活を送ってもらいたいのだ。
「別に、私は自分がしたいようにしているだけだよ。春奈達の誘いを断ったのも、夏生に合わせた訳じゃないし」と秋菜は返す。「それに、私だけじゃなくてさ、夏生も一緒に遊ぼうよ。せっかく誘われたんだからさ」
「私は、いいの」夏生は遠慮をする。春奈と真冬の会話の時も夏生は間に入らず、愛想笑いばかりをしていた。
夏生には距離を置く理由があっても秋菜にはない。能力のことを知っているとはいえ、それとこれは別問題だ。秋菜の学生生活を奪う権利は、夏生にはない。
「でも、夏生も高校生になってから誰とも遊んでないでしょ」心配そうな表情だ。「夏生がみんなのために敢えて関係性を作らないようにしているのは知ってるよ」
「うん」
「夏生が私のことを心配してくれる気持ちは嬉しいよ、ありがとう」秋菜は一息つく。「でもさ、私も同じように夏生にも楽しい学生生活を送ってもらいたいんだよ」
 秋菜の心配する気持ちが伝わってくる。しかし、それを受け取ることはできない。夏生は「うん、ありがとう」と返事をすることしかできなかった。
「本当に伝わってるのかなあ」秋菜はため息をついて立ち上がる。「まあ、すぐにとは言わないよ。ただ、もう少し歩み寄っても、私の気持ちをわかってくれてもいいんじゃないのかな。自分で気づいていないと思うけど、最近の夏生はなんだか寂しそうな顔ばかりしているよ」秋菜は言ってしまった後で気まずそうな表情を浮かべ、「先に行くね」と背を向けて歩き始めた。
「ちょっと秋菜」夏生が呼び止めるが返事はなく、振り返らない。無視だ。
夏生はため息をつく。秋菜は一度不機嫌になると口を効かなくなってしまうのだ。
 ボールを打つ快活な音がする。音の方に目を向けると、ボールは放物線を描き、夏生達のいる方向へ飛んできた。軌道を眺めているとボールは、先を進む秋菜の方へ落ちていく。
 秋菜は先を歩いているため気づかない。「秋菜!」夏生が慌てて声をかけるが当然、無視は続いている。「秋菜!ボール!」と必死に伝えたところでようやく「何?」秋菜は振り返った。
既にボールはぶつかる寸前だった。「ああ、もう」と夏生は周囲を見渡し、ボールに手を伸ばす。
 ボールは秋菜の目の前で見えない壁に当たったかのように不自然に軌道を反らし、歩道に落下した。何度か弾み、コロコロと転がっていく。
 秋菜は目を見開き、「夏生、今のって」と驚いている。
「状況が状況だったし、仕方ないよ」動きを止めたボールを夏生は拾う。超能力を使わなかったら頭に直撃していた。
「すみません、大丈夫ですか」少年が一人、緊張した面持ちで土手を上がってきた。手にはグローブを()めている。
「うん、大丈夫だよ」と夏生は拾ったボールを手渡した。
 少年は心配そうな表情で夏生と秋菜に目を向け「あれ?ボール当たりませんでした?」と首を傾げた。土手から見ていたのだろう。
 夏生は慌てて「当たりそうだったけど、ギリギリで避けたから大丈夫だよ。ね、秋菜」と伝える。秋菜も「うん、大丈夫」と頷いていた。
 少年は「申し訳ございませんでした」と頭を下げ土手を降りて行った。
 夏生が振り返ると秋菜が「ごめん。外で使わせちゃいけないのに」と、きまりの悪そうな表情を浮かべる。超能力はむやみやたらに使わない、と二人の間で決めていた。
「いいって。そんな。私も使う時に周りを見たけど誰もいなかったよ」実際、河川敷の歩行路の先に誰もいなかった。そう伝えると「ならいいんだけど」と秋菜は安堵した表情を浮かべる。
「こっちこそごめんね」夏生は謝った。
「ううん、私こそ意地張ってごめん」
 家に帰るまでの間、秋菜との間には気まずい雰囲気が流れ、会話はあまり弾まなかった。


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その日は実験の授業で、夏生は水の入ったビーカーを落としてしまった。
 恐らく、肘が当たったのだろう。夏生が気づき、「あっ」と呟く頃には床に落ちる寸前だった。夏生は反射的に手を伸ばした。
 ビーカーは重力に抗い、静止する。注ぎ口は床を向いていたが無意識に水がこぼれないように超能力で抑え込んだ。まずい、と思い夏生は超能力を解除をした。落下の勢いを殺されたビーカーがコロコロと床を転がり、こぼれた水が広がっていく。
 そのまま落ちていれば落下速度と衝撃で間違いなく割れていた。「え」と同じ班員で、隣に居た西田が声を上げる。「安藤、何、今の?」
 落ちる瞬間を目撃された。夏生は全身に緊張が走る。どう誤魔化すべきか頭が真っ白になった。周りが実験の手を止めて西田を注目する。
「あ、ごめんね。ビーカー落としちゃった」夏生が何事もなかったように振る舞い、「先生、ごめんなさい」と頭を下げ「今すぐ掃除します」雑巾を掃除用具入れに取りに向かった。
「安藤、怪我はないか。大丈夫か?」と先生は心配そうに声をかけてくる。
「はい、大丈夫です」夏生はこぼれた水を雑巾で拭いた。西田の表情を見ることができなかった。
「いや、そうじゃなくて」西田が呟く。「今、ビーカーが浮いてたけど」と言った。
 西田と仲の良い友人達が笑う。「西田、お前何言ってんだよ」
「本当なんだって」 
「西田、ふざけたことを言うな」先生が嗜める。不幸中の幸いと言うべきか西田はお調子者でよく冗談を言う生徒だった。先生はまともにとりあわない。
「だって、水が入ってたのに割れなかったんですよ。それに落ちる時に水がこぼれてなかった」西田が不満げに言い返す。「安藤が手を伸ばしたら止まったんだ」
「不思議なこともあるもんだなあ」先生が話を合わせる。
 生徒達は成り行きを不思議そうに眺めている。「西田がまた変なこと言ってる」「授業止めるのやめてほしいよね」「何かあったのかな?」とざわめく。不穏な空気を察知したのだろう、秋菜が「何言ってるの。そんなことないじゃない」と加勢する。
「なんで……誰も信じてくれないんだよ」消え入るような声で、西田がそう呟いたのを夏生は聞いた。「本当なんだって」西田が頑なに主張する。
「気のせいだって」秋菜も引き下がらない。
 西田も頭に血が昇ったのか「何で安藤の肩を持つんだよ。いつも一緒にいるからお前も何か隠してんだろ」と激しく罵り始めた。
 お互いが引くに引けなくなったところで手を叩く音が実験室に響く。「はいはい」と先生が仲裁に入る。「話は後でゆっくり聞くから授業に戻りなさい」と面倒くさそうに言った。
 西田と秋菜が言い争っている間、夏生は雑巾を洗い、愛想笑いをして、頷くことしかできなかった。
 授業を終え、片付けをしていると西田が「安藤、お前いつも松原と一緒にいるよな」と夏生に声をかけてきた。「他の奴らとは話さないし、なんか気味悪いよ」と言う。
『奴ら』とクラスメイトを形容するところに、西田の傲慢さが垣間見える。そして夏生を見るその表情は、得体の知れない生き物を見るようだ。人として見ていない。「何なんだよ」と吐き捨てる。
 夏生は目を合わせられずに俯いていた。隣で様子を見ていた秋菜が「西田、最低」と言う。「お前は入ってくんな」と西田は言い「なんか言えよ。気持ち悪い」と立ち去っていく。
「何よあいつ、ほんと最低ね」と秋菜が西田の背中に吐き捨てた。夏生は西田から向けられた表情が頭の中から離れなかった。
 その後、腹いせに変な噂を流したのか、夏生と秋菜はクラスメイトから距離を置かれるようになった。
 間一髪だった。大ごとにならなかったのは西田のクラスでの立ち位置、先生の仲裁、秋菜のフォロー、さまざまな要因が重なったからだ。
 もう一人、目撃者がいたらどうなっていただろう。次も都合よく乗り切れるとは限らない。外で超能力を使わないことと、秋菜への負い目が、より一層、強くなったのだった。
「あれ?夏生、まだ帰ってなかったんだ?」と秋菜が背後から声をかけてきた。眉を落とし、どこか寂しそうな表情を浮かべている。
 いつの間にか時間が経っていたらしい。土手では試合が始まっていた。
「うん。野球を見てたら夢中になっちゃった」と誤魔化す。「日直の仕事、お疲れ様」
秋菜はいつも一緒にいてくれる。困った時には助けてくれる存在だ。
でもこのままでは秋菜の未来を奪ってしまう。夏生は「秋菜、あのさ」と切り出した。
「ん?どうしたの」夏生の隣に腰を下ろす。
「秋菜、いつも一緒にいてくれてありがとね」と前置きをし「もう高校生だし、超能力を制御できるようになったからさ、他の友達と遊んでもいいんだよ?」と切り出した。
 昼休みに『週末は塾がある』と春奈と真冬の誘いを断っていた秋菜。その日に塾があることは事実だが、スケジュールを調整してもらい、裏山での修行に付き合ってもらう日だった。
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これまでと同じことになってはいけない。秋菜には普通の学生生活を送ってもらいたいのだ。
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「私は、いいの」夏生は遠慮をする。春奈と真冬の会話の時も夏生は間に入らず、愛想笑いばかりをしていた。
夏生には距離を置く理由があっても秋菜にはない。能力のことを知っているとはいえ、それとこれは別問題だ。秋菜の学生生活を奪う権利は、夏生にはない。
「でも、夏生も高校生になってから誰とも遊んでないでしょ」心配そうな表情だ。「夏生がみんなのために敢えて関係性を作らないようにしているのは知ってるよ」
「うん」
「夏生が私のことを心配してくれる気持ちは嬉しいよ、ありがとう」秋菜は一息つく。「でもさ、私も同じように夏生にも楽しい学生生活を送ってもらいたいんだよ」
 秋菜の心配する気持ちが伝わってくる。しかし、それを受け取ることはできない。夏生は「うん、ありがとう」と返事をすることしかできなかった。
「本当に伝わってるのかなあ」秋菜はため息をついて立ち上がる。「まあ、すぐにとは言わないよ。ただ、もう少し歩み寄っても、私の気持ちをわかってくれてもいいんじゃないのかな。自分で気づいていないと思うけど、最近の夏生はなんだか寂しそうな顔ばかりしているよ」秋菜は言ってしまった後で気まずそうな表情を浮かべ、「先に行くね」と背を向けて歩き始めた。
「ちょっと秋菜」夏生が呼び止めるが返事はなく、振り返らない。無視だ。
夏生はため息をつく。秋菜は一度不機嫌になると口を効かなくなってしまうのだ。
 ボールを打つ快活な音がする。音の方に目を向けると、ボールは放物線を描き、夏生達のいる方向へ飛んできた。軌道を眺めているとボールは、先を進む秋菜の方へ落ちていく。
 秋菜は先を歩いているため気づかない。「秋菜!」夏生が慌てて声をかけるが当然、無視は続いている。「秋菜!ボール!」と必死に伝えたところでようやく「何?」秋菜は振り返った。
既にボールはぶつかる寸前だった。「ああ、もう」と夏生は周囲を見渡し、ボールに手を伸ばす。
 ボールは秋菜の目の前で見えない壁に当たったかのように不自然に軌道を反らし、歩道に落下した。何度か弾み、コロコロと転がっていく。
 秋菜は目を見開き、「夏生、今のって」と驚いている。
「状況が状況だったし、仕方ないよ」動きを止めたボールを夏生は拾う。超能力を使わなかったら頭に直撃していた。
「すみません、大丈夫ですか」少年が一人、緊張した面持ちで土手を上がってきた。手にはグローブを嵌《は》めている。
「うん、大丈夫だよ」と夏生は拾ったボールを手渡した。
 少年は心配そうな表情で夏生と秋菜に目を向け「あれ?ボール当たりませんでした?」と首を傾げた。土手から見ていたのだろう。
 夏生は慌てて「当たりそうだったけど、ギリギリで避けたから大丈夫だよ。ね、秋菜」と伝える。秋菜も「うん、大丈夫」と頷いていた。
 少年は「申し訳ございませんでした」と頭を下げ土手を降りて行った。
 夏生が振り返ると秋菜が「ごめん。外で使わせちゃいけないのに」と、きまりの悪そうな表情を浮かべる。超能力はむやみやたらに使わない、と二人の間で決めていた。
「いいって。そんな。私も使う時に周りを見たけど誰もいなかったよ」実際、河川敷の歩行路の先に誰もいなかった。そう伝えると「ならいいんだけど」と秋菜は安堵した表情を浮かべる。
「こっちこそごめんね」夏生は謝った。
「ううん、私こそ意地張ってごめん」
 家に帰るまでの間、秋菜との間には気まずい雰囲気が流れ、会話はあまり弾まなかった。