「なあ、茉季。もっと早く言っとけばよかったのかもしんないけど。……小日向先輩、同じクラスに好きな人いるらしいんだよ。ああいう人だからなかなか言えないみたいだけど」
「そっかあ。うん、でも今聞いたんでよかったかも」
ショックでもなく、すんなり言葉が零れた。
それがさっきの人が言ってた「向坂さん」なのかな。
上級生でも派手で目立つ人なら結構ピンとくるけど、その人のことは名前も全然知らない。小日向先輩が好きになるんだから、控えめなタイプなのかも。
好きな人がいるのに、たぶん優し過ぎるから告白もできないのに、「どうでもいい」あたしに迫られて絶対嫌だったよね。
途中で省吾に教えられても、「でもまだ『彼女』じゃないんでしょ!?」ってムキになっちゃった気がする。
あたしって本当にどうしようもないね。
「茉季、俺がいるよ。俺はお前が誰が好きでも、変わらずずっとお前のそばにいる」
突然の省吾の台詞は、どういうつもりで言ったのか正直わからない部分もある。
だけど、いつもあたしを静かに支えてくれたのはこの幼馴染みだった、って《《鈍い》》あたしもやっと気づいたんだ。
傍からしたらバカやってるとしか映らなかっただろうあたしを、ただ見守ってくれてた省吾。
あたしにとって本当に大事なのは何か、少しだけ心に届いた気がした。
「ねえ省吾。春になったらさ、家の方の駅向こうのカフェのテラス席でランチしない? ずっと行ってみたかったんだよ、あたし」
今はまだ、寒いから。
テラスも閉められてはいないけど、流石にこの真冬に屋根しかないテラスに座る物好きはまあいない。料理やコーヒーも一瞬で冷めそうだもん。
「おお、いいな! 地元だからあの店は何度も行ってるけど、俺テラスは使ったことねえ」
「あたしも同じ。だからあんたと一緒に行きたいのよ」
その言葉が意外過ぎたのかぽかんとしてる省吾を置き去りに、あたしは駅に向かって歩き出す。
少し間を置いて、我に返ったらしい彼がバタバタと足音立てて追いついて来た。
ゆっくりと振り返ったあたしの目に、幼馴染みの姿と重なる白い何か。
「省吾! 雪だよ!」
恋を失くした凍てつく冬を象徴するみたいに、舞い落ちて来た白い欠片。
「茉季、寒くないか? お前寒がりだもんな。つーかなんでマフラーしてねえんだよ。俺のでよかったら貸すぞ?」
自分の首に巻いたマフラーを外そうとする省吾を止めた。
「大丈夫、今はいい。ちゃんと持ってるし。……不思議とそこまで寒くないんだよね。なんでかな」
確かに凍り付いた気持ち、冷たい雪。
だけど、あたしのそばにはいつでも省吾がいる。
大切な幼馴染みで、──これからはたぶん、それだけじゃない存在が。
~END~