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11話

ー/ー



「以上が俺のこれまでのお話さ」勇は昔話を締め括るかのように話し終え、僕たちを見渡していた。
 
 話を終えても僕達は何から話せば良いのか迷っていた。僕は一番気になっていたことを聞くことにした。

「その、いじめを受けていた生徒は今はどうしているんだい?」

 勇は悲しそうな表情を浮かべると「今も不登校だよ。離れてしまっているしお互い携帯電話も持っていないからね。自分なりの罪滅ぼしとして手紙を定期的に送っているよ。読まれているかは分からないけれど」と言った。

「さて、高橋と金谷に聞きたいことがあるんだけど、君たち二人はその先に何が起こるのか考えたことはあったかい?」

 二人は顔を見合わせると「ない」と答えた。勇はその返答に溜息をつく。
「結局その程度なんだよ。いじめて気分がスカッとする。受けている側の気持ちなんて考えていないんだ」と言い、「特に金谷、君は透に謝っていないだろ?なぜだ?」

 金谷はどこか不満げな表情で「俺は透がチームの足を引っ張っているから、それを伝えただけだ」と答え、高橋をちらりと見て「俺は暴力を振るった訳じゃないし」と呟いた。

「自分は安全地帯から攻撃し、いざとなれば言い逃れをして自分を正当化する。そういう人間が私は一番嫌いだ」勇ははっきりと口にし、「百歩譲って足を引っ張っていたとしても、人を傷つけていい理由にはならない」と腕を組む。

「人の心は繊細で脆い。怪我と違って修復するのに長い時間がかかるものなんだ。当人は人間不信になるし、家族や友人との関係性を変えてしまう。それでもまだ、いじめを続け、自分は関係がないと正当化するのか?」

 金谷は勇の圧に押され言葉に詰まっている。
「自分の過ちを認めることは難しい。でも認めなければ変わることはできないんだ。だからといって強要するつもりはない。本人がどう思うか、だからね」

「焦っていたんだ」と金谷は口を開く「クラスメイトからは下らない話ばかりで呆れているってことは薄々分かっていた。でもみんなに注目されたくて、つい話してしまうんだ」

「何が言いたい?」要領を得ない話に勇は苛立つ様子を浮かべる。

「分かるよ」僕は口を開き補足をする。「僕は小学生の頃から金谷の突拍子のない話を聞くのが好きだった。『人が爆発する』とか『人が溺れる』とか下らないし不謹慎なものばかりだけど、何より金谷のそのイキイキとした表情を見ると楽しさが伝わってきて元気をもらっていたんだ」と。
 しかし、精神が成長した生徒からは辟易とされ、呆れられてしまったのだろう。僕から見れば、金谷自身は気にしていないように見えていたが、内実は違っていたのだ。

「何度もいうけれど」と勇はため息をつき「だからといって傷つけていい理由にはならない」と呟いた。

「その通りだね」僕は頷いた。

 金谷は目を見開いて僕を見ている。「透がそんなふうに思っていたなんて知らなかった。今更だと思うけれど、本当にすまなかった」と頭を下げた。高橋もそれに倣い再び頭を下げている。

「で、透はこの二人を許すのかい?」勇が目を向けてくる。

「いや、許さないよ」と僕ははっきりと答えた。「その代わり、自分のいいところを伸ばして人を喜ばせること」と伝えた。僕が常日頃思っていたことだ。金谷は話すことが好きだし、高橋は体格が良くて、スポーツが得意だ。何か別なことにも生かせるのではないか、と。

 二人は顔を上げ、眉を潜めている。
「透は本当にお人好しだ」と勇は呆れ顔を浮かべている。

「だって、許さないだけじゃかわいそうじゃないか。それに人のためになることをした方が自分も相手も嬉しいはずだよ」僕はそう答える。

 勇も頷き、「そうだな。才能、と言うと大袈裟だけど、他人より優れている部分ってのは人を喜ばせるために与えられたものだと俺は思ってる。決して人を傷つけるためのものではない」

「お、いいこと言うじゃん。それは今までの経験を踏まえた転校の」僕が続きを言う前に勇が「転校のプロだからな」と先回りした。

 僕は笑うが、高橋と金谷は不思議そうな表情を浮かべ顔を見合わせていた。


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「以上が俺のこれまでのお話さ」勇は昔話を締め括るかのように話し終え、僕たちを見渡していた。
 話を終えても僕達は何から話せば良いのか迷っていた。僕は一番気になっていたことを聞くことにした。
「その、いじめを受けていた生徒は今はどうしているんだい?」
 勇は悲しそうな表情を浮かべると「今も不登校だよ。離れてしまっているしお互い携帯電話も持っていないからね。自分なりの罪滅ぼしとして手紙を定期的に送っているよ。読まれているかは分からないけれど」と言った。
「さて、高橋と金谷に聞きたいことがあるんだけど、君たち二人はその先に何が起こるのか考えたことはあったかい?」
 二人は顔を見合わせると「ない」と答えた。勇はその返答に溜息をつく。
「結局その程度なんだよ。いじめて気分がスカッとする。受けている側の気持ちなんて考えていないんだ」と言い、「特に金谷、君は透に謝っていないだろ?なぜだ?」
 金谷はどこか不満げな表情で「俺は透がチームの足を引っ張っているから、それを伝えただけだ」と答え、高橋をちらりと見て「俺は暴力を振るった訳じゃないし」と呟いた。
「自分は安全地帯から攻撃し、いざとなれば言い逃れをして自分を正当化する。そういう人間が私は一番嫌いだ」勇ははっきりと口にし、「百歩譲って足を引っ張っていたとしても、人を傷つけていい理由にはならない」と腕を組む。
「人の心は繊細で脆い。怪我と違って修復するのに長い時間がかかるものなんだ。当人は人間不信になるし、家族や友人との関係性を変えてしまう。それでもまだ、いじめを続け、自分は関係がないと正当化するのか?」
 金谷は勇の圧に押され言葉に詰まっている。
「自分の過ちを認めることは難しい。でも認めなければ変わることはできないんだ。だからといって強要するつもりはない。本人がどう思うか、だからね」
「焦っていたんだ」と金谷は口を開く「クラスメイトからは下らない話ばかりで呆れているってことは薄々分かっていた。でもみんなに注目されたくて、つい話してしまうんだ」
「何が言いたい?」要領を得ない話に勇は苛立つ様子を浮かべる。
「分かるよ」僕は口を開き補足をする。「僕は小学生の頃から金谷の突拍子のない話を聞くのが好きだった。『人が爆発する』とか『人が溺れる』とか下らないし不謹慎なものばかりだけど、何より金谷のそのイキイキとした表情を見ると楽しさが伝わってきて元気をもらっていたんだ」と。
 しかし、精神が成長した生徒からは辟易とされ、呆れられてしまったのだろう。僕から見れば、金谷自身は気にしていないように見えていたが、内実は違っていたのだ。
「何度もいうけれど」と勇はため息をつき「だからといって傷つけていい理由にはならない」と呟いた。
「その通りだね」僕は頷いた。
 金谷は目を見開いて僕を見ている。「透がそんなふうに思っていたなんて知らなかった。今更だと思うけれど、本当にすまなかった」と頭を下げた。高橋もそれに倣い再び頭を下げている。
「で、透はこの二人を許すのかい?」勇が目を向けてくる。
「いや、許さないよ」と僕ははっきりと答えた。「その代わり、自分のいいところを伸ばして人を喜ばせること」と伝えた。僕が常日頃思っていたことだ。金谷は話すことが好きだし、高橋は体格が良くて、スポーツが得意だ。何か別なことにも生かせるのではないか、と。
 二人は顔を上げ、眉を潜めている。
「透は本当にお人好しだ」と勇は呆れ顔を浮かべている。
「だって、許さないだけじゃかわいそうじゃないか。それに人のためになることをした方が自分も相手も嬉しいはずだよ」僕はそう答える。
 勇も頷き、「そうだな。才能、と言うと大袈裟だけど、他人より優れている部分ってのは人を喜ばせるために与えられたものだと俺は思ってる。決して人を傷つけるためのものではない」
「お、いいこと言うじゃん。それは今までの経験を踏まえた転校の」僕が続きを言う前に勇が「転校のプロだからな」と先回りした。
 僕は笑うが、高橋と金谷は不思議そうな表情を浮かべ顔を見合わせていた。