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商談86 常連客

ー/ー



「お客さん、そんなにがっついて大丈夫かいっ!?」
 店主の心配をよそに、俺は熱々のポットパイを頬張り続ける。スープが熱々ながら、それでも俺はスプーンを止められない。
 各々の具材が旨味をスープへ共有し、そのスープを纏った具材は相乗効果で旨味を増していく。これは具材達の連携プレー。もちろん、スープの要となるミルクとチーズのバックアップも申し分ない。
 縁に残しているパイ生地を箸休めにつまみ、俺はポットパイを食べ進めていく。俺はサクサクパイの方が好みだが、これに至ってはしっとりパイもなかなかに乙な味。どちらも甲乙つけがたい。
 そんなこんなで、ポットパイもスープを残すのみとなった。まだ熱気冷めやらぬスープだが、ここは一気に飲み干してしまおう。
「......!!」
 俺はスープの熱さに悶えつつも、クリーミーな優しさと具材の旨さに歓喜している。だがこの瞬間もフィナーレが近付いている。口内は既に焼け付いているが、この感動は脳裏に焼き付けねば!!
「ごちそうさまっ!」
 俺はその全てを飲み干した。具材達の織り成す連携プレーに思わず舌鼓を打った、ブラボー! ブラボー!! 後で口内炎も予想されるが、この感動を味わえたならば安いもんだ。
「すげぇ食いっぷりだなぁ!! いよっ、日本一!!」
 傍らの店主は思わず俺に喝采を送る。この場で歓喜を覚えたのは、どうやら俺だけはなかったようだ。
「ご主人、最高の一杯でした!」
 俺もまた、スタンディングオベーションで店主を称える。寒空の下、この一杯に出会えて良かった!! この感動、後でSNSに投稿しよう。
『カランカラン』
 そんな折、別の客がやってきたようだ。扉からはラブラドールと思しき大型犬が入店してきたが、まさか犬が来店してきたのか?
「この時期にお客さんとは珍しいね?」
 大型犬の後に続いてやって来たのは、小学生ほどの小柄な老婆。えらくリードを伸ばしているが、これではどちらが連れられているのか分からない。
「タマさん、今日も元気だなぁ!」
 店主の慣れた態度を見る限り、どうやら彼女は常連客らしい。最近はペット同伴可能な施設も増えてきていて、愛犬家としては冥利に尽きるだろう。
「ポチ、お前も元気で何よりだ!」
 店主は我が子を愛でるように大型犬を撫でる。ポチにタマ......今時のペットとしては聞かなくなった名前だなぁ。おっと、タマは人間だった。
「3分間待ってやる」
 太々(ふてぶて)しい言葉を吐きながら老婆は着席した。店主といい、やけに時間に縛られているのは何なのだろうか?



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「お客さん、そんなにがっついて大丈夫かいっ!?」 店主の心配をよそに、俺は熱々のポットパイを頬張り続ける。スープが熱々ながら、それでも俺はスプーンを止められない。
 各々の具材が旨味をスープへ共有し、そのスープを纏った具材は相乗効果で旨味を増していく。これは具材達の連携プレー。もちろん、スープの要となるミルクとチーズのバックアップも申し分ない。
 縁に残しているパイ生地を箸休めにつまみ、俺はポットパイを食べ進めていく。俺はサクサクパイの方が好みだが、これに至ってはしっとりパイもなかなかに乙な味。どちらも甲乙つけがたい。
 そんなこんなで、ポットパイもスープを残すのみとなった。まだ熱気冷めやらぬスープだが、ここは一気に飲み干してしまおう。
「......!!」
 俺はスープの熱さに悶えつつも、クリーミーな優しさと具材の旨さに歓喜している。だがこの瞬間もフィナーレが近付いている。口内は既に焼け付いているが、この感動は脳裏に焼き付けねば!!
「ごちそうさまっ!」
 俺はその全てを飲み干した。具材達の織り成す連携プレーに思わず舌鼓を打った、ブラボー! ブラボー!! 後で口内炎も予想されるが、この感動を味わえたならば安いもんだ。
「すげぇ食いっぷりだなぁ!! いよっ、日本一!!」
 傍らの店主は思わず俺に喝采を送る。この場で歓喜を覚えたのは、どうやら俺だけはなかったようだ。
「ご主人、最高の一杯でした!」
 俺もまた、スタンディングオベーションで店主を称える。寒空の下、この一杯に出会えて良かった!! この感動、後でSNSに投稿しよう。
『カランカラン』
 そんな折、別の客がやってきたようだ。扉からはラブラドールと思しき大型犬が入店してきたが、まさか犬が来店してきたのか?
「この時期にお客さんとは珍しいね?」
 大型犬の後に続いてやって来たのは、小学生ほどの小柄な老婆。えらくリードを伸ばしているが、これではどちらが連れられているのか分からない。
「タマさん、今日も元気だなぁ!」
 店主の慣れた態度を見る限り、どうやら彼女は常連客らしい。最近はペット同伴可能な施設も増えてきていて、愛犬家としては冥利に尽きるだろう。
「ポチ、お前も元気で何よりだ!」
 店主は我が子を愛でるように大型犬を撫でる。ポチにタマ......今時のペットとしては聞かなくなった名前だなぁ。おっと、タマは人間だった。
「3分間待ってやる」
 |太々《ふてぶて》しい言葉を吐きながら老婆は着席した。店主といい、やけに時間に縛られているのは何なのだろうか?