指先(ひとごろし)の愛と、割れた湯呑み

指先(ひとごろし)の愛と、割れた湯呑み

「お母さんは、信じているから」―その一言で、国が一つ、死んだ


一瞬で、すべてを失った。
捏造された罪、消えた証拠、逃げ出した父。
十七歳の僕に残されたのは、落書きだらけの家と、震えながらレジを打つ母だけだった。

地元の有力者・郷田の手によって、僕は「性犯罪者」というレッテルを貼られた。
世間の悪意が、平凡な家族の息の根を止める。
住む場所さえ追われ、辿り着いた最底辺のボロ宿。
絶望の淵で、僕は終わりを選ぼうとした。

けれど、母は泣かなかった。

「掃除が必要になったわね」

母が古いトランクから取り出したのは、見たこともない衛星電話。
静かに微笑む母の背後に、世界を指先一つで設計してきた「支配者」の影が揺れる。

母の愛は、世界を滅ぼすほどに、深く、静かだった。







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