ホーム

前の話


目次

作者: 理乃碧王





最終話:Spicy! ワッショイ! これが感動の最終回やッ!!

7/7





 ラスボス――鬼弁慶京八!
 牛若丸空手塾の道場主である! 経営者である! 塾長である!

 つまりは長ッ!

 その実績……。

 日本人でありながら!

 中華人民共和国は擂台賽(らいたいさい)
 タイ国はムエタイ!
 アメリカは総合格闘技界!

 荒らしに荒らしまくった暴風!

 中国では『無双拳王』と!
 タイ国では『虎を倒す者』と!
 アメリカでは『KARATE SAMURAI』と!

 三国で名を成した超一流のグラップラー!

「ワシが牛若丸空手塾塾長! 鬼弁慶京八であるうううううッ!」

 虎之助は! オディオ武地也は!

 この巨大な山――。

 富
 士
 山
 を
 昇
 り
 切
 れ
 る
 の
 か
 !

「登るで武地也はん!」

「当たり前田のクラッカー!」

 登る気満々の漢が二人!

「「可愛いあの子を守るために!」」

「「商店街を守るために!」」

「「ギャル神輿を守るために!」」

「「や っ た る で え え え え え え え え い ッ !」」

 対する鬼弁慶は!?

「何を言っとるんじゃい!」

 どうやら!
 愛弟子である山田龍馬を倒されたことに憤っていた!

「ワシの一番弟子山田をボコったガキどもが!」

 鬼の目にも涙! 鬼弁慶の目にも涙!
 涙を振るいながら二人に打ちかかる!

「な、なんや……このおっさん……」

「な、泣いてやがる……」

 ここで無駄な回想シーンに入ろう!
 許せッ!
 この奇特なリレー小説を読む読者諸君!
 そして……。

 相棒の『REO=カジワラ』さんッ!

 祭・祭・祭・祭・祭

 ≪大阪・十三≫

 ここから一人称じゃい。
 ワシこそが牛若丸空手塾塾長、鬼弁慶京八である。
 ごっつい名前のワシはその名の通り、ガキの頃から腕っぷしには自信があった。
 喧嘩だって負けたことはないし、空手どころか、格闘技の試合でも負けたことがない。

 しかし、ワシには一つだけ足りんものがあった。
 それは『顔』じゃ。
 男前ではなかった、ハンサムではなかった、イケメンではなかったんじゃ。

 だから、ワシは自分の空手塾に『牛若丸』なんてつけた。
 牛若丸といえば御伽噺でもイケメンだし、他のサブカルでもイケメンのモチーフになっとる。

 足りない『イケメンさ』を補充するため、自分の流儀に『牛若丸』の名をつけたんじゃ。
 古流武術にも、判官流だの聖徳太子流だのつけてるから構わんじゃろう。

 そして、ここは大阪は十三。
 大阪府大阪市淀川区南西部に位置する街じゃ。
 パチンコ屋、キャバレー、ムフフなお店が密集する所謂、繁華街。
 それ故に治安が悪いところもあり、護身術としての空手、格闘技としての空手を学びたいと思っているヤツもいるはずじゃ。
 それにワシは海外での実績も十分じゃからな――でも甘かった。

「うおーん! 道場に誰も入門しません!」

 雑居ビルの一室に構えた道場には誰も一人入門しない。
 それもそのハズじゃ。
 ワシはその界隈で有名なだけで、一般人からすれば『むさい空手家のおっさん』じゃ。

 それとあれじゃ道場に冷暖房も完備されとらん。
 精神鍛錬でエアコンは不必要、と古風なことを考えておったからのう。

 それに世間では、ファッショナブルな護身術、キック、柔術、総合とたくさんある。
 強いが(自画自賛)、昭和の香りがプンプンなワシの空手を学ぼうとするやつなどおらん……。

 そう諦めかけていたときじゃ。

「おっさん、強いんだって?」

 頭は茶髪、耳にはピアス、革ジャンにジーパン。
 典型的なイキったケンカ自慢な若造が現れた。
 名前は山田龍馬、この十三では喧嘩無双で有名な男じゃ。
 ま、要するにワシの噂を聞きつけて道場破りに来たというわけじゃ。

「十三では喧嘩無双、最強、チートかもしれんが……まだまだじゃのう」

 開始数秒で倒した。
 まるで、なろう小説みたいなあっけない幕切れじゃ。
 床にふせる龍馬は泣きべそをかいとる。

「お、俺がそんな……ここまで最強だった俺が……」

「人生は、なろう小説みたいに上手くいかんぞい! ガハハハッ!」

「おっさん……教えてくれ……俺はどうすれば強くなる?」

「空手をやればいいと思うよ」

 こうして、ワシと龍馬だけの空手ライフが始まった。
 師一人、弟子一人のマンツーマン。
 そこには、ハーレムも、美少女も、巨乳もない。
 漢だけ、おっさんだけ、筋肉だけじゃ。

 ≪大阪・心斎橋アメリカ村≫

「ふっ! 小汚い空手家が……このフォーチュンスター格闘術の道場破りに来るなどと……」

「はよ、来いや! チャラ男のあんちゃん!」

「ならば参りましょう。私のスタープリズム・エクストリーム・キッ……」

「隙だらけやないかい!」

「うぼあー!」

 ワシと龍馬は大阪府内の格闘道場を荒らしに荒らしまくった。
 そして、龍馬も各種空手大会にも出場し優勝しまくり、食い放題。
 そうするうちに、徐々に牛若丸空手塾の名声は高まり、門下生も増えた。

「おっさん……牛若丸空手塾も生徒が増えたな」

「うむ、何れはワールドワイドにアメリカやイギリス、フランスにも道場を出したいもんじゃ」

「やれるで、おっさんなら……師匠なら武道界のエベレストに登頂できるで!」

「りょ、龍馬……」

 愛弟子、龍馬が……。
 龍馬がいたからこそ、今があるんじゃ!

 祭・祭・祭・祭・祭

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ!」

 連打だ!
 拳骨が!
 鉄脚が!
 二人を襲うッ!!

「ぐわっ!」

「うおっ!」

 虎之助は! オディオ武地也は!

「うぐ……あぁ……」

「つ、強い……」

 やられていた!
 フルボッコにされていたのだ!

「ワ、ワッショイ!」

 ここまで影の薄いヒロイン!
 プリヤ・シンはこの惨劇を見守るしかない!

「武地也はん……大丈夫でっか?」

「あ、ああ……大丈夫だ。俺が倒したザコのためにスマンな……」

「ええで、ええで、今はあのバケモノを倒さんといかんからな」

 傷つきながらも!
 虎之助は武地也を! 武地也は虎之助を!
 助け合いながら立ち上がった!

 古人は言う!
 人という字は人と人が支え合う意味があると!
 ああ、何と美しい光景か……。

「こ、これは……ジャ〇プ漫画の展開じゃあ!」

 天神橋筋商店街の会長、権田剛太郎は涙するッ!
 これぞ、今の日本に忘れかけている『友情・努力・勝利』のテンプレ!
 ……まだ勝利はしてないけど。

 しかし! 現実は非情であった!

「で、でも……」

「あ、あれは……」

「アカン……」

「負ける気するで地元やけど……」

 商店街の人々は『ダメ』だと思った。
 何故なら二人は闘った後、牛若丸空手塾の門下生達とも闘っている。
 更には、ラスボスである鬼弁慶京八の強烈な空手技の数々をその身に受けていた。

 然るに……。

「チェイストーッ!」

「うおっ……」

「ぐふっ……」

 鬼弁慶の強烈な正拳突き!
 二人は結局倒れてしまった!

「ワ、ワッショイ……」

 自身を愛する二人の男が倒れた。
 周囲は静寂に包まれ……悲しいBGMが脳内で流れる……。
 ああ、何という悲劇か。
 この物語はバッドエンドを迎えるのか?

「次は貴様らの番じゃい」

 鬼弁慶は神輿ギャルや商店街の人々を睨む。

「ど、どういうことじゃ……!?」

 尋ねる権田会長に鬼弁慶は修羅の如き表情で答える!

「龍馬がギャル神輿を見物に行かなかったら……こんなことにはならなかった……全てはギャル神輿を企画した貴様ら商店街と、それに参加した神輿ギャル、楽しむ愚民どもにその責任がある!」

 アクロバティックな解答!
 責任転化のクソ発言である!

「なんでそーなるのよ!」

「ふざけないでよ!」

 怒る神輿ギャル!

「ど、どないな、脳内しとんねん!」

「ワテらがギャル神輿を楽しんだらいかんのか!」

 動揺する商店街の人々や見物人達!

「ワッショイ!」

 そう、プリヤも叫ぶ!
 ワッショイ! ギャル神輿を終わらせないと!

「全員! 皆〇しじゃあああああッ!」

 そんな声は何のその!
 鬼弁慶速い! 殺人バファロー走法だ!
 復讐の牛鬼へと変貌している!

「こうなったら、ワイらが止めるしかないでーっ! スクラムウウウゥ!」

 まだ動ける元気な!
 Solispia組!
 学生プロレス同好会の同志達!
 『Socoイチバンや!』の常連達!
 プオタ達!

 肉壁になり! 牛鬼を止めようとするも――。

「ひ、ひでぶ!」

「うわらば!」

「あべし!」

「あわびゅ!」

 次々と吹き飛ばされ、蹂躙されていく!

「どひゃあ!」

 ついでに権田会長も!

「WRYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 神輿へと突進する牛鬼こと鬼弁慶京八!
 そこに既に人の姿はなかった!

「ワ、ワッショイ……」

 プリヤは目を瞑った。
 ああ、私はこの怪物に食われるのだと。
 気分は海獣ケートスの生贄と捧げられるアンドロメダ。
 プリヤも、神輿ギャルも、商店会の人々も、浪速の人々も――。

 も
 う
 ダ
 メ
 だ
 !

 そう思ったとき……。

 奇
 跡
 が
 起
 き
 た
 !

 ――諦めたらいかんぞ!

 どこからともなく!

「だ、誰?」

「男の人の声だけど……」

 不思議な声が聞こえ……。

「ワッショイ!?」

 神輿ギャルたちの目の前に!

「全員『わっしょい!』の声を上げてぶつかるのだ」

 ねじり鉢巻きにふんどし一丁の男が現れた!
 男は光の形を塊となす! 神々しい存在である!

「ワッショイ?」

 プリヤはいった。
 あんた誰? と!

「我が名は神輿の神なり」

 光の男は言った!
 自分は神輿の神であると!

「ワ、ワ、ワッショイ!?」

 か、か、神様ですか!?
 とプリヤは唖然呆然!
 この超展開に他の神輿ギャルも黙るしかなかった!

「この神輿を止めてはならん――」

 すると神輿の神は、

「どんな理由であれ神事を止めてはならんのだ!」

 『祭』と書かれた巨大団扇を召喚!

「わっしょい!」

 神輿の神が「わっしょい!」と音頭を取ると!

 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!

 笑顔良し!

 体力良し!

 集まれ元気女子!

 夏だわっしょい!

 祭だわっしょい!

 ギャル神輿だわっしょい!

 粋な乙女達の声が弾む!

 そう!

 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!

 笑顔良し!

 体力良し!

 集まれ元気女子!

 夏だわっしょい!

 祭だわっしょい!

 ギャル神輿だわっしょい!

 粋な乙女達の声が弾んだのだッ!

「ワッショイ!」

 プリヤも自然と「ワッショイ!」の声を出した!
 それは勇気! 夢! 希望を乗せた声!

「な、な……どういうことじゃあああ!?」

 鬼弁慶は目を疑った!
 目の前には!

 金
 色
 に
 輝
 く
 ギ
 ャ
 ル
 神
 輿
 が
 あ
 っ
 た
 の
 だ
 !

 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!

 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!

 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!
 わっしょい! わっしょい! わっしょい!

 そして、そのまま!

「ワッショイイイイイィィィ!」

 ギャル神輿は、神輿ギャルは、プリヤは――ゴールドダッシュを駆ける!

 それはまさに阪神電車、阪急電車、南海電車、京阪電車――。

 否
 !

 ひかりの超特急である!

「う、うわあ……うわあああ!?」

 鬼弁慶はドラゴン〇ールのような気功波を浴びた状態になる!
 白の背景に黒い線画のみの状態だ!
 そう! ラスボスが倒されるその瞬間! 最後である!

「ワ、ワシが牛若丸空手塾塾長……」


 鬼

 弁

 慶

 京

 八

 で

 あ

 る

 う

 う

 う

 う

 う

 う

 う

 う

 ッ

 !


 鬼弁慶京八は……。
 そのまま光の中に消えた……。

祭・祭・祭・祭・祭

≪大阪天満宮≫

 全ては終わった。
 神輿は無事に大阪天満宮へと奉納された。
 つまり、ギャル神輿は終わったのである。

「ワッショイ」

 様々なトラブルに遭遇するもプリヤは安堵する。
 ギャル神輿という一大イベントを完遂させたからだ。

「ワッショイ……」

 だけども、悲しい気持ちにもなる。
 何故ならば、それは日本での思い出が一つ終わることを意味する。
 プリヤは来年には大学を卒業し、母国インドへと帰らねばならないからだ。
 そして……それは愛しの虎之助や日本の人々との別れを意味するのだ。

「神輿ギャル達よ……大儀であった」

 プリヤ達、神輿ギャルに声をかけるのはボロボロの和装姿の老人。
 天神橋筋商店街の会長、権田剛太郎である。

「皆、明日には日常生活へと戻る」

 そう、明日から日常生活へと戻るのだ。
 ある者は大学生だし、ある者は会社員だし、ある者は家事手伝いだ。
 それぞれの生活が待っている。

「これから様々な困難が待ち構えようとも……このギャル神輿で得た経験が人生で活きるじゃろう」

 権田会長がいい感じにまとめた。
 このギャル神輿で得た経験は、プリヤだけでなく他の神輿ギャルにも糧となろう。
 情熱、不屈、不動の精神――。
 その全てが詰められた「わっしょい!」の一言さえあれば、明日も頑張れるのだ。

「ワッショイ!」

 今のプリヤに悲しみはない。
 この日本で――ギャル神輿の得たものはインドに帰った後にも役立つだろう。

「ワッショイ?」

 しかし、一つ疑問が残る。
 あの『神輿の神』と名乗る不思議な出来事だ。
 皆、あの時のことをほとんど覚えていない。僅かに残る記憶の断片だけだ。
 あれは夢なのだろうか? 幻なのだろうか? それとも――。

「プリヤ……」

 プリヤの隣には縦縞の法被を着る男がいた。
 そう――。

「ワッショイ!」

 藤村虎之助である。
 そして、

「プリヤ、お前の愛は掴めなかったが……これでいいんだ……」

 オディオ……。
 いや、憎しみは既にない『洋 武地也』である。

「好きなものが好きなものと結ばれる……それが自然なことだぜ!」

「ワッショイ!?」

 武地也の言うことを理解出来ないプリヤ。
 それはどういう意味だろうか?
 虎之助はこう続ける。

「プリヤ……ワイは来年の春に……」

 アイヤ~♪ アイヤイヤ~♪(インド・ボリウッドの音楽が流れる)

「プリヤの住むインドに! ソコイチの店を開店するで! 本場のカレーにどこまで通用するか挑戦や!」

「ワ、ワ、ワ……」

「来年、ワイもインドへ行きまっせ!」

「ワッショイ!」

 アイヤ~♪ アイヤイヤ~♪(見つめ合う二人)

 ラ
 ス
 ト
 ッ
 !

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 踊る!
 神輿ギャルは踊る!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 踊る!
 Solispia組も!
 学生プロレス同好会の同志達も!
 『Socoイチバンや!』の常連達も!
 プオタ達も!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 踊る!
 権田会長は踊る!
 天神橋筋商店街の人々も踊る!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 踊る!
 鬼弁慶京八は踊る!
 山田龍馬は踊る!
 牛若丸空手塾の門下生達も踊る!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 踊る!
 浪速のにいちゃん、ねえちゃん、おっちゃん、おばちゃん、じいちゃん、ばあちゃん、キッズ達も!

 キレキレのダンスを!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 プリヤ・シンも!
 藤村虎之助も!

 全員、この大阪天満宮に集まって!

 ダダン! ダッ! ダダンッ! ダッ!

 何故か! 敵味方関係なく踊る!
 踊るギャル神輿! 踊るスパイシーカレーだ!

 最後に、プリヤと虎之助は極める!


「「Spicy! ワッショイ!」」


 ワッショイ! ギャル神輿だわっしょい! (完)





コメントを書く

レビューを書く


最新話です

新着コメント


コメントはありません。投稿してみようっ!